GAMECHANGER AUDIO未来のスタンダードを書き換える革新と狂気のインテリジェンス GAMECHANGER AUDIO未来のスタンダードを書き換える革新と狂気のインテリジェンス

GAMECHANGER AUDIO
未来のスタンダードを書き換える革新と狂気のインテリジェンス

INTERVIEW
イリヤ・クルメンス(Ilja Krumins)/創設者

私たちの製品は、どんな音楽スタイルに対しても新たな表現の機会を与えてくれると信じています

ここではGamechanger Audioを創設した中心人物の1人であるイリヤ・クルメンスのインタビューをお届けしよう。プレイヤーの心を躍らせる、革新性の高いペダルはどのように生み出されるのだろうか? ブランドが大切にしているこだわりを始め、貴重な話を聞くことができた。

ぶっ飛んだ仕様かつ、実用的なバランスも大切に。

Gamechanger Audioにおけるあなたの仕事内容や役職など、自己紹介をお願いします。

 私はイリヤ・クルメンス。製造を担当するエンジニアのクリスタプス・カルヴァ、開発をまとめるマルティンス・メルキス、そして経理や販売を担当するディジス・デュボヴスキスとともにGamechanger Audioを創設した4人の中の1人です。

 私たちの多くはミュージシャンとして活動していた経験があるため、そこから生まれるクリエイティブなアイディアを高度なエンジニアリング技術と組み合わせて製品にする仕事をしています。それぞれ担当分野ごとに3 〜4人の従業員を抱えていて、私はマーケティング、メディア・プロダクション、デザイン、ペダルの設計やその製作などをしています。

ユニークな仕様のペダルが多くラインナップされていますが、製品の開発・生産に関して重要視していることは?

 ブランドを立ち上げた当初から決めていたのは、“ハンドメイドで生産しない”ということでした。実際に自分たちの手でハンダ付けなどを行なって製作すると、どうしても少数しか生産できないからです。加えて電気製品に関しては、人間の手で作業をする工程を可能な限り省くべきだと考えています。完成に至る作業を簡略化するだけでなく、ヒューマン・エラーを排除できるといったメリットもありますからね。

 私たちの製品は技術的にもかなり複雑なため、初期段階からPCBボードの製作やハンダ付け、アッセンブリー作業についてはプロフェッショナルな工場に外注してきました。というのも、私たちの拠点であるラトビアのリガは、30年前に崩壊したソビエト連邦の時代から電気製品製造の中心的な拠点であり、マイクロチップやコンピューター、ラジオといった分野の製品を作ってソビエト全土に供給していたんです。

 そういった背景もあり、多くのエンジニアたちは高い技術力を有しているのです。“食品とビールは人間の手で作られるべきだが、電気製品はドイツ製のロボットで作られるべきだ”という言葉がモットーですね。

ブランドを代表するPLASMAPedalが発表された時は、大きな話題になりました。このエフェクターを開発した経緯を教えて下さい。

 ブランドの最初の製品であるPLUS Pedalを作り終えた直後から、私たちの製品の人気が徐々に高まっているのを感じました。しかし、その次のアイディアが思い浮かばず、頭を抱えて悩んでいたんです。

 そこで私たちは“何かバカバカしくてクレイジーなもの”というテーマで議論を交わしていく中、NAMM Showのためにアメリカに行った時のことを思い出したんです。ケンタッキー州を訪れた時は、とても蒸し暑くて、虫がいたるところに飛んでいました。それが殺虫ソーラーライトに飛び込んで、火花が散るように死んでいくのを目にしたんですが、その光景がPLASMA Pedalのアイディアと結びついたんです。

 まず私たちは土産用に販売されている電気式のプラズマボールからトランスとコイルを取り出し、それに可変させたオーディオ・シグナルを通してみました。その結果、大きな磁場ができてしまい、部屋中の電気製品が故障する羽目になりました(笑)。その失敗を踏まえ、今度は電磁放射や電磁干渉をきっちりと設計し直して、約半年後のNAMM Show にはPLASMAPedalのプロトタイプを持って行くことができたんです。

 PLASMA関連の製品であるPLASMA COILとPLASMA RACKは同じ技術を応用した異なる機能の製品です。殺虫ソーラーライト、新製品、ゲームチェンジャーといった要素がすべてつながってユニークな製品が生まれたんですよ。

なるほど。今、話に出たPLASMACOILはジャック・ホワイトとのコラボレーション・モデルですね。

 ある日、ジャックの関係者から“ジャックがPLASMA Pedalを相当気に入っている。数ヵ月後にリガにライブをしに行くから、そこで話ができないか?”というメールが届いたんです。当日、私たちはショウが始まる前の会場でジャック本人から“PLASMA Pedalにいくつか改造を行ない、黄色にカラーリングにしたモデルをサード・マン・レコードからリリースしたい”と言われました。とにかく興奮してハッピーな気分になりましたね。

 私自身、彼の作る音楽を聴いて育ちましたし、彼のスタイルやアプローチ、クリエイティブな考え方にも大きな影響を受けましたから……これ以上ないほど素晴らしいコラボレーションになったと思います。そもそも初めてPLASMAPedalを作った時、“これはジャック・ホワイトのサウンドにピッタリだ!”と思っていたので、それが証明されたような気持ちでしたよ。

スプリング・リバーブを内蔵したLIGHT PEDALも独特な仕様を持ったエフェクターですね。どのようなアイディアで開発したのですか?

 このペダルは、従業員の1人であるテオドア・ケリモフスが生み出した発明品ですね。大学の1年目を終えた彼が“夏の間のインターンシップを募集していないか?”と私たちのもとを訪ねてきました。彼は熱意を持った才能溢れる人物だったので、私たちは彼の申し出を受け入れ、一緒に仕事をするようになったんです。

 その時に考えたアイディアのひとつに、振動するスプリングの中に赤外線を通し、振動したバネが光のセンサーを遮ってオーディオ信号をコントロールする構造を作り出しました。これによって光学式のリバーブが誕生したのです。そこからスプリングの位置を変えることで効果を変えたり、4つのセンサーを搭載してモジュレーション効果を加えるなど、アナログながら何百種類ものテクスチャーのリバーブを得ることができるようになりました。

今後リリース予定のBIGSBY Pedalは、ギター・プレイヤーの心をつかむようなルックスですね。

 とてもスペシャルでクールなペダルが完成しました。以前の私はロカビリー・バンドをやっていて、昔からずっとビグスビー・アームのファンだったんです。

 クリスタプスとマルティンスと一緒に仕事をするようになってからも“どうやったらBIGSBY Pedal が作れるのだろう?”と長い間、話し合っていました。ビグスビーは歴史のある大きなブランドですからね。

 そこで私たちはNAMMShowでビグスビーを傘下にしているフェンダーのブースへ行き、“ビグスビーの責任者に話ができないか?”と直接アプローチしたんです。その場で製品のプレゼンテーションを行ない、“OK !”という返事をもらいました。製品として完成するまでに2年かかりましたが、彼らとのコラボレーションは非常にスムーズで、ポジティブに物事が進みましたね。

気になる仕様について詳しく教えて下さい。

 機械的なデザインにこだわりつつ、私たちがベストだと考えたポリフォニック・ピッチ・シフティングのアルゴリズムを作ることに多くの時間をかけました。リアルタイムに操作できる美しいポリフォニック・ピッチシフター・サウンドを作るために、数学の天才とも呼ぶべき才能豊かなプログラマーを雇い、彼と音楽的な議論を重ねたんです。

 BIGSBYPedalは、現実のビグスビー・アームと遜色ないサウンドを実現しているため、聴いただけでは両者の違いがわからないことでしょう。また、このペダルを使えば今まで不可能だった新たな奏法を実現できるのも大きな魅力です。例えば……フィンガーピッキングをしながら音程を可変させたり、きっちりと1オクターブ・ジャストで音程をダウンさせることもできるようになります。

 私の夢はデレク・トラックスのようなプレイヤーがこのペダルを使ってくれることですね。これから先、ハイレベルなプレイヤーたちが、このペダルを駆使してどのような革新的なプレイを編み出してくれるかが非常に楽しみです。

あなたたちが新製品を開発する際、どんなことを重要視していますか?

 私たちが製品を作る際に基準にしていることは3つあります。

 1つ目はクレイジーでサプライズな製品であること。世界初のような誰も見たことがないアイテムで、ユーザーに驚きを与えなくてはなりません。

 2つ目は、汎用性があり、それでいて刺激を求めているギタリストの不満を解決するクレイジーな要素があること。あまりにも飛び抜け過ぎていて、普通のギター・プレイヤーが使いこなせないようでは意味がありませんからね。革新性があり、多くのプレイヤーにとって使えるアイテムであるという点において、ぶっ飛んだ仕様かつ実用的であるというバランスを大切にしています。

 そして3つ目は、私たちが自分たちの製品のことを芸術作品だと考えていること。新しくて興味深い製品を作り続けたいと思っていますが、これから5年後に振り返ってみたとしても素晴らしい芸術作品として、私たちの進化の歴史を楽しめる製品にしたいと思っています。

 やはり、どのペダルもテストと仕様変更を何度もくり返す過程で、発生したさまざまなトラブルと常に向き合ってきました。楽しいことばかりとは言い難かったですね。やはり大きなチャレンジには大きな苦難が必ず付きまとうもので、“こんなものが使い物になるわけがない!”と思う場面が必ず出てきます。しかし、それでもチャレンジを続けて完成に漕ぎ着けてきましたから。

最後にGamechanger Audioの製品は、どんなギタリストにオススメですか?

 例えば、カントリー・ギタリストにPLASMA Pedalを薦めることはないと思われそうですが、それは誤解です。このペダルにはブレンド機能や素晴らしいイコライザー、プリアンプの機能があるので、最高のブースターとして使えることでしょう。

 とはいえ、万人受けする製品ではないことも理解しています。なのでペダルに対して興味を失ってしまった人が私たちのペダルを見て、目から鱗が落ちるような瞬間を作りたいと考えています。

 新製品と言いつつ、毎年同じような製品ばかりが出てくる現状にウンザリしてしまった人に、瞬間的に燃え上がるような興味を巻き起こせたらと願ってやみません。

 エフェクト・ペダルに対して批判的な目を持つ人を振り向かせられたらうれしい限りですね。世の中のプレイヤーたちから“どうして誰もこんなことをしてこなかったんだ!?”という手応えが得られた時、私は最高の気分になりますから。

 私たちの製品は、どんな音楽スタイルに対しても新たな表現の機会を与えてくれるものだと信じています。ぜひトライしてもらいたいですね。