Interview|ReN新たな可能性を模索した最新アルバム Interview|ReN新たな可能性を模索した最新アルバム

Interview|ReN
新たな可能性を模索した最新アルバム

己のギターと歌声を武器に、世界を相手に音楽を鳴り響かせている気鋭のシンガー/ソングライター、ReN。彼が前作『LIFE SAVER』から4年ぶりとなる新作アルバム『ReNBRANDT』を完成させた。作品には、メイジー・ピーターズやTaka(ONE OK ROCK)とコラボレートした楽曲や、エレキ・ギターのサウンドを導入したナンバーなど、新たな挑戦によって生まれた表情豊かな楽曲が収録されている。“振り切ったものにトライしたいという気持ちを優先したかった”という言葉が示すように、ReNの新たな魅力が表出したニュー・アルバムについて、じっくりと話を聞いた。

インタビュー/文=尾藤雅哉(SOW SWEET PUBLISHING)

いろいろな曲の中で鳴る自分の声を聴いてみたいと思った

約4年振りとなる新作アルバムですね。今回は要所でエレキが鳴っていたのも印象的でした。機材環境に変化はありましたか?

 いつも使っている自作したLoop Stationのトラック数を増やしたのと、エフェクターやMPCみたいなパッド系のサンプラーを足下&足上に追加しました。あとエレキ・ギターを新たに2本導入して、レコーディングやライブで使ったりしています。

エレキは何を手に入れたんですか?

 1本は、1965年製のKAY Vanguardですね。僕、あまりテクニカルなプレイをしないので“アコギの置き換え”のイメージで手に入れました。“スライド・ギターで使っても合うだろうな”っていう感じのふくよかな音がします。あと、すごく軽いんですよ。ライブだといつもLittle Martinを使っているから、普通のソリッド・ボディのエレキを持つとかなり重く感じるんです。そういう意味ではVanguardはアコギと同じくらい……は言い過ぎですけど、かなり軽いので気に入っています。しかもネックはアコギのような握り心地で弾きやすいから、持ち替えた時にも違和感がなくて。見た目がカッコ良いのも気に入っていますね。

ではもう1本のエレキは何を?

 フェンダーのストラトキャスターです。レコーディングで使うために、真っ黒いカラーの現行モデルを買いました。

メインとなるアコギは何を使いましたか?

 シングル・オーのMartinを使っています。オリジナルのカスタム・モデルなんですけど、ほとんどそれでレコーディングしています。でもライブは今のところ、Little Martinでいきたいな……いろいろ探してるんですけど、なかなかビビッとくるのがなくて。エレキと、それからLittle Martin……あと、もしかしたら曲によってはそのシングル・オーを使うかもしれません。弾き語りの曲とかで。

Photo by RUI HASHIMOTO

それではアルバムについてうかがっていきます。今回のアルバムは“ギターと歌”というスタイルにとらわれず、ギターは楽曲のアンサンブルを構成する1つの要素として位置付けているように感じました。

 ギターを持って、歌を歌う。そこはこれまでと変わらないんですけど、いろいろな曲の中で鳴る自分の声を聴いてみたいという気持ちが出てきたんです。27歳の今の自分にしかできない……って言うと大袈裟ですけど、今だからこそ、振り切ったものにトライしたいという気持ちを優先したかった。シティ・ポップみたいな「City Lights」からもわかるとおり、音楽性を広げていきたいって思いもありました。やっていて純粋に楽しかったですし、ギター1本でやればいつでもアコースティック・バージョンでできますから。

今回のアルバム制作はどのような流れでしたか?

 2019年にCD+DVDで『Fallin’』を出して、必然的に“次はアルバムを出そう”と意識していました。でも方針は決めていなくて、まずは曲をいっぱい作って、その中から決めていこう、と。作り始めの頃はまだコロナ前だったので、セッションしながら作った曲もあります。そうしてデモをたくさん作っていって並べたら、アルバムの全体像がなんとなく見えてきて。そこから“ああいう曲が欲しい”っていうのも見えてきて、その都度方向修正をして作り上げていった感じですね。

制作期間中にコロナ禍となっていくわけですが、影響はありましたか?

 ライブができない中で、レコーディングですべてを満たそうと思った時、気付きはたくさんありました。例えば、“僕の作る曲ってこういう感じ”みたいなイメージって、ライブを通して、自分で勝手に作り上げていたものだったんだな、とか。だから今回は、新しいトライが多かったんです。制作の中でめちゃくちゃ遊んでみたりして、今までなかったメンタリティで曲の中に飛び込めた。今までだったら、リリース後にライブがあることがわかっていると、その時にできること、手に届く範囲のことをやっていこうとすることが多かったですから。

エレキ・ギターの導入も、今までにないという点ではトライのひとつだと言えそうですが、ほかにチャレンジした部分は具体的にどんなところですか?

 これまでは、デモの世界観を崩さないよう、デモに忠実に曲を完成させていたんです。でも今回は、曲の持つメッセージはそのままに、アレンジやサウンド・デザインなどを色々と試していきました。アコギをあえてエレキに差し替えてみたり、コードを変えてみたりして。あとはコラボ曲を2曲やっているんですけど、すごく学ぶことが多かったですね。ほかのアーティストと一緒に作るのが初めての作業だったので、自分の良いところにも、足りないところにも気付けました。

他のアーティストと共作すること自体がチャレンジだったわけですね。

 「Don’t Let Go」の作り方もトライでしたね。「HURRICANE」や『Fallin’』でレコーディングに立ち会ってくれているSoma Genda君が組んだループをもとに作ったんですけど、彼の作ったループって、自分だったら絶対に作らないコード進行で。それに対して、どういう歌やメロディを乗せて世界を決めて、説得力を持たせるか……そういうことを考えながら作ったので、苦しい思いをして作った曲でした。セッションというか、バンドっぽい作り方ですよね。

その「Don’t Let Go」もそうですが、今作は以前にも増して全体的に大きな会場で観客を巻き込むような楽曲が多い印象があります。

 狙ったわけではないんですけど、僕、本質的に“壮大な世界”が好きで。だから最終的にそういう方向の仕上がりになったんだと思います。特に「One Last Try(feat. Maisie Peters)」なんかはスタジアム・ロックのような世界感ですし。