テキサス・ブルース初心者が聴くべき必聴ギター名盤、この10枚! テキサス・ブルース初心者が聴くべき必聴ギター名盤、この10枚!

テキサス・ブルース初心者が聴くべき
必聴ギター名盤、この10枚!

テキサス・ブルース沼への入り口として、必聴名盤を10枚ご紹介しましょう! “テキサス・ブルース・ギタリスト5人衆”の名作と、その系譜を引き継ぐブルースマンたちをピックアップしました。

選盤/解説=小出斉


1/エレキ・ブルースの巨人を味わう

『モダン・ブルース・ギターの父』(1963/ユニバーサル)
T-Bone Walker

T-ボーンが告げた
エレキ・ギター時代の幕開け

邦題は45年も前につけられたものだが、まさにそうとしかいいようのないTボーンの42~47年のキャピトル/コメット/ブラック&ホワイト時代のベスト盤。エレキ・ギターによるソロ・プレイをふんだんに入れ、センセーションを巻き起こした42年録音の「ミーン・オールド・ワールド」、「ガット・ア・ブレイク・ベイビー」始め、「コール・イット・ストーミー・マンデイ」(通称ストーミー・マンデイ・ブルース)」や「Tボーン・シャッフル」など、名演ぞろい。洒脱なボーカルやギターとバンド・アンサンブルなど、ジャジィな味わいも聴きどころだ。

2/多作なライトニンを俯瞰して

『His Blues』(2010/Ace)
Lightnin’ Hopkins

カントリー・ブルースが苦手な方
騙されたと思って聴いてみて!

テキサス・カントリー・ブルースの代表格、ライトニン・ホプキンスは長いキャリアを持ち、46~55年はシングルを、白人ファンを獲得した59年以降はアルバム単位での録音を重ね、アルバムの多さはブルース界でも1、2を争う。というわけで、キャリアを包括的にとらえた2枚組を。アコースティック弾き語りから、エレキでリズム隊を従えたものまで楽しめ、スティーヴィー・レイ・ヴォーンも真っ青なギター・ブギ「ライトニン・スカイ・ホップ」(55年)なんて、驚くこと必至。“カントリー・ブルース、渋いんでしょ?”なんて敬遠しないで!

3/ゲイトマウスのギターを味わうなら初期!

『Boogie Uproar : The Complete Aladdin/Peacock Singles As & Bs』(2017/Jasmine)
Clarence Gatemouth Brown

代表インスト曲
「オーキー・ドーキー・ストンプ」収録

ゲイトマウス・ブラウンのキャリアは、60年代までと70年代以降に大きく分けられる。70年代以降は、フィドルもよく弾き、ブルースに留まらず、ジャズ、ケイジャン、カントリーなど多彩な音楽を聴かせ、『アメリカン・ミュージック・テキサス・スタイル』というアルバムも出しているほど。ギターに関しては、トリッキーさは後年のほうが勝るが、スピード感、パワー感はやはり若い頃に軍配か。本作は47~61年の全シングル集で、代表的インスト「オーキー・ドーキー・ストンプ」始め、“ブルース・ギタリスト”としての凄さが完璧にとらえられている。

4/圧倒的グルーヴのライブ名盤

『Live From Austin Texas』(2008/New West Records)
Albert Collins

映像をじっくり見て
コリンズの秘密を探れ!

本人はいたってジェントルマンだったが、そのギター・プレイから“凶悪”という枕詞がついて回ったアルバート・コリンズ。60年代初頭の、ヒューストンのマイナー・レーベルへのシングルを集めた『Truckin With Albert Collins』(ほぼインスト)もおすすめだが、ここはブルースマンとして大成し、より凶悪(笑)になった後年の姿を。91年TVライヴ番組“オースティン・シティ・リミッツ”出演時のCD+DVDの2枚組。ソロの第一音にかける、気合もろとものプレイぶり、そのピッキングやカポタスト使用法など、コリンズの秘密は映像でたっぷり。

5/避けて通れぬ、テキサスの洪水

『Texas Flood – 30th Anniversary Edition』(1983/Epic)
Stevie Ray Vaughan And Double Trouble

センス、テクニック、カリスマ性
どれをとっても一級品

当時ほぼ壊滅状態だったブルース・ロックを復権させた、83年、スティーヴィー・レイ・ヴォーン衝撃のデビュー作。そのストレートな弾きっぷりは痛快そのもの。テキサスと結び付けるなら、そのタフさ、ワイルドさに尽きる。軽快なテキサス・シャッフルに乗った「プライド・アンド・ジョイ」は、ソロ・デビュー前にトリプル・スレット・レヴューで一緒に活動していた黒人ブルースマン、W.C.クラークの曲。アルバム・タイトルは58年にデュークから発表されたラリー・デイヴィスの曲から。30周年記念盤は、83年のライブとの2枚組だ。

6/テキサス産ソングスター

『Texas Sharecropper & Songster』(1960/Pヴァイン)
Mance Lipscomb

テキサスの特産品
“モノトニック・ベース奏法”

アコースティックの生粋のカントリー・ブルースも。マンス・リプスコムは、1895年テキサス州ナヴァソタ生まれ。小作人として働きながら、地元の仲間のために演奏してきたが、1960年に、南部を回っていたブルース研究家によって見出され、遅咲きデビュー。本作はその初録音をベースにしたもの。レパートリーはブルースに留まらず、バラッド、スピリチュアルズ、ダンス・ソングなど広範に渡る。闊達なフィンガー・ピッキングを聴かせるが、コード・チェンジにかかわらず、同じベース音を刻む、テキサス特産モノトニック・ベース奏法もたっぷり。

7/ファンク・ブルース前夜のJGW

『The Original Gangster 1953-1959』(2011/Jasmine)
Johnny Guitar Watson

後のファンキーさに繋がる(?)
テキサス源流ペンペン・ギター

1935年テキサス州ヒューストン生まれ。11歳からギターを弾き始め、50年にLAに移住し活動開始。60~70年代にはジャズやソウルも取り入れ、さらにファンク・ブルースの代名詞ともなるが、その根本はテキサス・ブルース。カポタストをつけ、開放弦も取り入れた奏法はゲイトマウス・ブラウン流だ。本作は、その初期、53~59年の録音をまとめたもので、そのギターの凄さに“髪の毛が逆立つ”といわれた「スリー・アワーズ・パスト・ミッドナイト」や、ぶっ飛んだインスト「スペース・ギター」などで、テキサス源流ペンペン・ギターを堪能。

8/Tボーン仕込みのテキサス・スタイル

『Texas Blues Jumping In Los Angels』(2014/Ace)
Pee Wee Crayton

ジャジィな風味が
Tボーンじるし!

1914年テキサス州ロックデイル生まれで、35年にカリフォルニアに移住。ギターを弾き始めたのは移住してからで、通常は西海岸のブルースマンとくくられるが、Tボーンから直接手ほどきを受け、その土台はテキサス(アルバム・タイトルに納得)。本CDは48年~51年録音のモダン音源集で、ほとんどが未発表音源だが、中身は濃く、「ブルース・アフターアワーズ」、「テキサス・ホップ」、「アイ・ラヴ・ユー・ソー」の3大ヒットも、別テイクながら収録。ジャジィな味、大胆にコード・ワークを駆使したソロ、多重録音によるひとり掛け合いなど、聴きどころ多数。

9/SRVに影響を与えた、兄・ジミー

『Out There』(1998/Epic)
Jimmie Vaughan

カポタスト&指弾きの
正調テキサス・スタイル

1951年、テキサス州ダラス生まれ、生前のスティーヴィ・レイ・ヴォーンが、最も影響を受けたとリスペクトしていた実兄ジミー。80年代にファビュラス・サンダーバーズで成功した後ソロ転向、98年に発表したソロ2作目だ。カポタストを使い、指で弾くスタイルで、フレーズ的にもSRVよりも正調テキサス・スタイル。てらいのないプレイから、やるせなさが溢れる。ジャケットのギターを担いだポーズもジョニー・ギター・ワトスン譲りだ。ちなみに、現在は入手しにくいが、2001年の『Do You Get The Blues』はトラディショナル・ブルース部門でグラミー賞獲得。

10/テキサスに流れるブルースの血脈

『テキサス・ゲットー・ブルースの饗宴~ダイアルトーン・オール・スター・ライヴ!』(2008/Pヴァイン)
V.A.

オースティンのレーベルによる
“テキサス・ブルース”の祭典

ダイアルトーンは、90年代末にスタートしたオースティンのインディー・レーベル。黒人街の奥深くで演奏を続けてきた、知られざるブルースマンを探し出してきてはレコーディング。テキサス・ブルースのタフさを発信し続けてくれた稀有なレーベル。本盤は、2008年にオースティンのSBSWに同レーベルのブルースマンが大挙出演して、5時間にわたりくり広げたショーからの抜粋。攻撃的、かつ自由奔放なリトル・ジョー・ワシントン始め、レイ・リード、リトル・ジョー・デューセットなど、鋭角的で骨太なテキサス・ブルースの嵐が吹き荒れる。