さて、テキサス・ブルース流のフレーズとは、いったいどのようなプレイなのだろうか? 今回の『テキサス・ブルース超入門』特集で主役を担う5人のリックをもとに、その真髄に迫っていこう。
譜例作成/文=安東滋 浄書=Seventh Photo by Luciano Viti/Getty Images
T-ボーン・ウォーカーStyle
近代ブルース・マナーの礎となった“単弦奏法”
6弦トニック型のホーム・ポジションを軸に、その限定されたエリア内でペンタトニックを素材にした多彩なフレーズ群を弾き出す……この近代ブルース・ギターの基本マナーを編み出したレジェンド奏者。都会的で小粋なブルース・フィールを発色させる、そのモダンな“単弦奏法”にプレイ・スタイル面での真骨頂がくっきりと浮かび上がります。
愛用のフルアコ系ギターから発音される“パキパキ”とした硬質なトーンも看板。また、それらのソロ・フレーズと対になる、9thコードを柱にしたジャジィ&スマートなコード・ワークもT-ボーン・スタイルの必須アイテムです。そして、“肩がけストラップ”でギターの表面を上に(天井に)向けて構える……この特徴的な演奏フォームもトレードマーク。
「T-Bone Shuffle」風
スウィンギーに踊る基本モチーフ
参考楽曲
「Blues for Marili」風
スピーディに切り込むスロー・ブルース
参考楽曲
ライトニン・ホプキンスStyle
ダーティでイナセな弾き語りブルース
テキサスの“稲妻オヤジ”ことライトニン・ホプキンスは、とびきりダーティでローダウンな弾き語りスタイルが大看板。それを大別すると、軽快でダンサブルな“ブギ”と重々しく響く“スロー・ブルース”の2形態にザックリと分けられます。そして、そのどれにも粋でイナセな(?)プレイ・フィールが漂っているのがライトニンたる所以。
また、それらの曲がkey=Eで演奏される頻度が高いのもプレイ面での大きな特徴のひとつでしょう(もちろん他のkeyもありますが……)。楽曲よってはチューニング自体が高かったり低かったりとピッチがずれているものもありますが、基本は「漢のkey=E」です(笑)。ピッキングはサム・ピックを付けた親指と(生指の)人差指の2フィンガー奏法、チューニングはレギュラーが基本。
「Lightnin’s Boogie」風
ブギ・トラックでの常用リック
参考楽曲
クラレンス・ゲイトマウス・ブラウンStyle
縦横無尽にスウィングさせる痛快なパフォーマンス
生指のフィンガーピッキング、カポタストでkeyを移動させ、それをテキサス・マナーのパキパキ音でスピード感満点に弾き倒す! 使用チューニングはレギュラー……これがゲイトマウスの基本スタイル。テクニカルな高速パッセージも楽々とこなす超絶スキル、抜群のリズム感、止めどもなく湧き出る豊富なフレーズ・ボキャブラリー、ジャジィ&スウィンギーな素早いコード・ワークなど、どれを取ってもブルース界きっての破格のパフォーマーと言えるでしょう。
急速グリスをかます“ホイッスル奏法”、6弦と1弦を組み合わせる“2オクターブ奏法”、パーカッシヴに叩く“タッピング奏法”などのトリッキー技も縦横無尽に織り交ぜつつ、軽快にドライブ&スウィングさせていくパフォーマンスは痛快!
「Okie Dokie Stomp」風
軽快にスウィングする特徴的なプレイ・スタイル
参考楽曲
アルバート・コリンズStyle
アグレッシヴ に弾き倒す“オープンFm”
“オープンFm”の変則チューニング(6弦から順に「F、C、F、A♭、C、F」の各音に調弦)を用い、keyの移動/設定にはカポタストを使用、それを人差指&親指の(生指の)強力なフィンガーピッキングでバキバキと弾き倒す。そのアタックの効いたワイルド&アグレッシヴな出音は、まさに“凶悪ギター”のイメージ(笑)。
ちなみに、T-ボーンの項でも紹介した“肩がけストラップ”はテキサス系の黒人ギタリスト達の必須マナー(?)。このアルバート・コリンズも、前項のゲイトマウス・ブラウンも、フレディ・キング、ジョニー・ギター・ワトソンも皆このスタイルなんです。そしてT-ボーン以外の上記のギタリストは、“指弾きスタイル”という点でも共通していますね。テキサス気分に浸りたい読者は、まずはここからTRY!(笑)。
「Honey Hush!」風
気迫満点に迫るソロ・パッセージ
参考楽曲
スティーヴィー・レイ・ヴォーンStyle
破格の豪腕ストロング・スタイル
現代ブルースの興隆をぐいぐいと牽引した破格のギター・スリンガー。豪快なブルースを山盛りのソウル&パッションで弾き倒す気合満点のプレイ・フィール、弦も切れよとばかりに発音される力感溢れるフレージング……そのとびきりタフなギター・スタイルを形容するなら、まさに“豪腕”。
そして、極太ゲージを全弦半音下げにチューニングした、愛器ストラトから絞り出される極上のトーンもまた大看板。ダイナミックなソロ・フレーズやグルーヴ満載のリズム・ワークなど、そのどれもが最高のストラト・サウンドによって輝きと魅力を倍加させていました……この点も特筆すべき大きなポイントでしょう。複数台のアンプを同時に鳴らす“レイヤー・セッティング”もその音作りに関わる見逃せない要素。