岡田拓郎をナビゲーターに迎え、カテゴライズ不可能な個性派ギタリストたちの作品を紹介する連載、“Radical Guitarist”。第14回はノルウェーのギタリスト、テリエ・リピダルのECM作品=『After The Rain』をご紹介しましょう! ECMらしい美しさとテリエならではのエモーショナルなプレイの調和をご堪能あれ。
文=岡田拓郎 デザイン=山本蛸
今回紹介する作品は……
『After The Rain』
テリエ・リピダル
ECM Records/ECM-1083/1976年リリース
―Track List―
01. Autumn Breeze
02. Air
03. Now And Then
04. Wind
05. After The Rain
06. Kjare Maren
07. Little Bell
08. Vintage Year
09. Multer
10. Like A Child, Like A Song
ロックなプレイも美しく昇華する1人多重録音作品
サイケ・バンド出身、ECMを代表する異色の特殊ギタリスト、テリエ・リピダル(Terje Rypdal)。ストラトキャスターやリッケンバッカーを手にし、ジミ・ヘンドリックスから大きな影響を受けたというそのギター・プレイは、エモーショナルなベンドや浮遊感溢れるロングトーンを多用し、同時代のジョン・マクラフリンやラリー・コリエルらにもましてロック的なプレイだと感じる。
5作目のリーダー作である本作は、妻でシンガーのインガー・リセ・リピダルのボイスもところどころで混じるが、ギターのみならず、ピアノやシンセサイザー、フルート、ソプラノサックスもテリエ自身が演奏した1人多重録音作品。
「Autumn Breeze」はいつもよりも弾きすぎないプレイがアンビエント的に聴こえる、静謐なフローティング・ソング。ボリューム・ペダル+ディストーションにエモーショナルなビブラートを多用した「After The Rain」は、これぞテリエ! こうしたロック的なスタイルのイメージが強いが、アコースティック・ギターを爪弾く「Now And Then」も美しい。
著者プロフィール
岡田拓郎
おかだ・たくろう◎1991年生まれ、東京都出身。2012年に“森は生きている”のギタリストとして活動を開始。2015年にバンドを解散したのち、2017年に『ノスタルジア』でソロ活動を始動させた。現在はソロのほか、プロデューサーとしても多方面で活躍中。