昨年リリースされたエリック・クラプトンの最新作『LADY IN THE BALCONY: LOCKDOWN SESSIONS』で“アコースティック・クラプトン”に注目が集まる今、30周年を迎えた『Unplugged』に改めて注目してみたい。今回はその中でも、クラプトンがブルース・カバーとどう向き合っていたのかを、原曲と並べてみながら考えてみる。まずは「Before You Accuse Me」から。
文=青山陽一
オリジナルは歩くようなテンポで
「Before You Accuse Me」の作者名にある“エラス・マクダニエル”とは、もちろんあのボ・ディドリーの本名だ。ボ・ディドリーといえばニューオーリンズのグルーヴに端を発した強烈なジャングル・ビートが連想されるが、1958年に「Say!(Boss Man)」のB面として発表されたこの曲はジミー・リードあたりを彷彿とさせる歩くようなテンポ感のスタンダードな12小節ブルース。
ヒット曲というわけでもなくエリック・クラプトン以前の有名どころのカバーといえば、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルが70年のアルバム『Cosmos Factory』に収録したバージョンがあるくらい。実質エリックが有名にした曲だと言って差し支えないだろう。
『Journeyman』版とは異なるギター・デュオ・スタイル
『MTV Unplugged』でのエリックはこれをアンディ・フェアウェザー・ロウとのギター・デュオで演奏。
ギターはこのライブ・ショウの象徴ともいえる39年製マーティン000-42だ。アンディも000スタイルのマーティンを弾いているが、これはよく見ると70年代のエリックが弾いていた000-28を45スタイルに改造した有名なギターと酷似している。アンディがこの時弾いた楽器はすべてエリックからの借り物だったそうなので、まさしくそのものだった可能性は高い。
エリックは独特のフォームによるフィンガーピッキングでべースラインとカウンター・メロディを鳴らしながら淡々と歌う。あくまでリズムに徹するアンディのバッキングも堅実だ。
作品データ
『Unplugged』
エリック・クラプトン
リプリーズ/1992年8月18日リリース
―Track List―
01. 「Signe」
02. 「Before You Accuse Me」
03. 「Hey Hey」
04. 「Tears in Heaven」
05. 「Lonely Stranger」
06. 「Nobody Knows You When You’re Down and Out」
07. 「Layla」
08. 「Running on Faith」
09. 「Walkin’ Blues」
10. 「Alberta」
11. 「San Francisco Bay Blues」
12. 「Malted Milk」
13. 「Old Love」
14. 「Rollin’ and Tumblin’」
―Guitarists―
エリック・クラプトン、アンディ・フェアウェザー・ロウ