新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。
デザイン=MdN
底から出る湧水のように、
歌を力強く支えてくれる。
少し小ぶりなギターを弾くのも好きですが、大きめのロング・スケールのギターを弾くのも好きです。私の持っているエレキ・ギターのうち、オベーションのエレキであるヴァイパーというモデルはフレットの幅が広く、故にネックが長いので、見た目の印象よりも実際手に持つと大きく感じます(いわゆるバリトン・ギターほどのロング・スケールではありませんが)。そういうところも魅力的に感じていて、いわゆるテクニシャン向けな仕様でもなく、メイプル指板というのも相まってなんだかコードが大きく気持ちよく鳴ってくれる感じがして好きです。
またダンエレクトロのU-1というギターは、個人的にトリッキーなフレーズが弾きやすく、さらに、そのフレーズが小ぶり目なギター全体に鳴ってくれる感じが好きです。ネックの長さ+ギターの大きさが与える印象は、弾き手の演奏方法に多大な影響を与えると私は思います。
先ほど話題にちらっと挙げましたが、実はバリトン・ギターに興味が湧いてきていまして、というのも知人がおすすめしてくれて弾いたこと+くるりの岸田繁さんがライブで弾いている映像を観たことに影響を受けています。たびたび話題にのぼりますが、僕の大好きなダンエレクトロがバリトン・ギターを出していたので存在自体は知ってはいたのです。そこで実際に弾いてみたところ、Bというキーの澄んだ低音を湛えたロー・コードの鳴りが面白い。底から出る湧水のように歌を力強く支えてくれるようでした。
エンジェル・オルセンという方の『Whole New Mess』(2020年)というアルバムがあります。統一感のあるギターの弾き語りが続く中で、ギター本体や録り方やミックスの感じが違うのが面白くて好きなのですが、私がそういった作品を作るなら、使うギターのうちの1本としてバリトン・ギターを用意して弾きたいな、なんて考えています。
と言いながら、バンド内でも弾きたい! 岸田繁さんのバンド・サウンドの中で鳴る歪んだバリトン・ギターのロー・コード感、YouTubeにアップされている 「ハム食べたい」の演奏がカッコ良すぎて堪りません。おすすめです。ルーパーなんかで遊んでも面白そうですし、Fender Bass VIともまた違った感じは、まだまだ可能性を大いに秘めていそうです。
アフリカのリズムにも興味があるので、例えばそういった打楽器+バリトン・ギターで音楽を作るのも面白そうです。スクワイアから出ていたParanormal Baritone Cabronita Telecasterが比較的安価で、かつこないだ試奏した感じでは素晴らしく、とても気になっています。やー、バリトン・ギター、今1番欲しい楽器かもしれません。書いていたらもっともっと欲しくなってしまいました。魅力的なギターが多くて困ってしまいますね。
話は急に変わりますが、つい最近SGのサドルを変えました。僕が持っているのは1973年製のSGスペシャルなのですが、ブリッジのサドルがバラバラっとはずれるタイプで、リハーサル中、気付かぬうちに6弦のサドルがはずれていて、そのまま失くしてしまいました。ショックです。ということで楽器屋さんでモントルーのものに交換していただきました。これでもう心配することはありませんね……! もともと付いていたオリジナル・パーツは、もしも売る時などに楽器の価値が変わってしまうから、というアドバイスと共に優しく返却して下さいました(たぶん売りませんが、有難い助言でした)。少しパーツが変わるだけでも、なんだか新鮮な気分です。これからまた新しい気持ちでまたこの素晴らしいSGスペシャルと向き合っていきたいです。
著者プロフィール
崎山蒼志
さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。現在19歳。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。