Reiの“地味練”&スペシャル・インタビュー Reiの“地味練”&スペシャル・インタビュー

Reiの“地味練”
&スペシャル・インタビュー

普段プロ・ギタリストが欠かさずルーティンとして組み込んでいる練習メニューを“これでもか!”とばかりに編集部が深堀りした企画、題して“地味練”。今回レクチャーしてくれるのは、エレキ・ギター、アコースティック・ギター、ナイロン弦ギターを巧みに操り、弾き語りも華麗にこなすシンガー・ソングライター/ギタリスト、Rei。ジャンルを超えて独自の音楽を奏でる彼女に、日頃の練習メニューや“練習観”について聞いてみた。

取材:村上孝之 採譜・浄書:Seventh デザイン:山本蛸
※本記事はギター・マガジン2022年4月号から抜粋/再編集したものです。

地味練を教えてくれるのは……

Rei

れい◎卓越したギターとボーカルで大きな注目を集めているシンガー・ソングライター。幼少期をニューヨークで過ごし、4歳からクラシック・ギターを始める。2015年に『BLU』でデビュー。今年4月には様々な音楽仲間たちとコラボした『QUILT』がリリースされる。

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Ex-1:右手の各指を均等に鍛えるアルペジオ練習

Rei アルペジオの練習は毎日やりますね。これは右手の各指を様々な順番と組み合わせで弾くアルペジオ練習で、その最も基本的なパターンです。私はクラシック・ギター出身なので、人差指が使えないのはもったいないなと思いサムピックを使うようになりました。コードは譜面と同じでなくても大丈夫です。自分の好きなコードを、メトロノームに合わせてBPM=80から140くらいまで少しずつ上げていきましょう。テンポのグリッドに合わせて、音を等間隔に配置しながら弾くことで、リズム感のトレーニングになると思っています。

Ex-2:ピッキング音とスラーの音量を揃える筋トレ

Rei スラー(ハンマリング)の練習です。各フレットに指を配置して、まずは人差指と中指をスラー、次は人差指と薬指をスラー、今度は中指と薬指をスラーといった感じで弾いていきます。弦を引っ張るプリングと比べて、弦を叩きつけるスラーは音が埋もれがちというか、フレーズの中で音が立ちづらいんです。なのでプリングよりスラーの音量が小さくならないようにしましょう。そういう意味でもこういったトレーニングをしておくと、フレーズの中でしっかりとそれぞれの音の粒が立ち、アンサンブルの中でも音が埋もれないようになってくると思います。

Ex-1:スケールを使った左手と右手のトレーニング

Rei スケール練習は欠かさないメニューの1つです。普段よくやるのは4~6弦ルート始まりのスケール練習ですね。これは4弦ルート始まりのマイナー・スケールで、各弦に3音ずつ配置したパターン。4弦のルートからスタートして、1弦まで行って帰ってくる動きを何度かくり返したら、1フレットずつポジションを上げていきます。これもメトロノームを使って、遅いテンポから徐々にスピードを上げていきます。それが終わったら5、6弦ルートという具合で弾いていますね。左手と右手に無駄な動きがないか、いつも撮って確認するようにしています。

Interview|Rei
練習している人としてない人とでは、
現場で積んでいるエンジンが違う。

練習は絶対に裏切らないし、
表現をより自由にしてくれる。

Reiさんは普段どれくらい練習しますか?

 どちらかというと、たくさんするタイプだとは思います。ただ、一定レベルまで上手くなるためには、継続的に時間をかけて練習する必要がありますけど、大切なのは時間ではなくて“濃度”だと思うんです。何も考えずに指を動かしているだけでは意味がないので、きちんと目的意識を持つようにしています。例えば、最近の自分のライブ映像を見返して、ピッキングにムラがあるなとか、この手のフレーズでミスタッチが多いなとか、そうしたことを客観視しながら練習しています。

ギターを持たない練習もあるということですね。

 そうですね。とは言え、毎日必ずやっている基礎練習もあります。今回紹介したフレーズはその一部ですね。私は末端冷え性で、特に緊張すると指が冷えたりするので、基礎練習は必ずやりますし、それで指が温まらなかったら、さらにやるという感じですね。

Reiさんはエレキだけでなくアコギも弾きますが、それらは別々に練習するという感じですか?

 だいたい3種類やるようにしています。ナイロン弦ギター、スティール弦のアコギ、エレキ・ギター。ナイロン弦ギターはネックが幅広なので、単純に左手の良いストレッチになるんです。アコースティック・ギターはカッティングの練習をすることが多いですね。エレキ・ギターはベンド(チョーキング)やスラー、カッティングなど、色んなテクニックがあるじゃないですか。なので私はテクニック別に練習を分けていて、それぞれのメニューをメトロノームのテンポを速めながらやります。そうしたことをやり終わってから曲を弾きますね。家でエレキはアンプにつないで練習しています。

なるほど。

 あと、この機会にギターを練習する方にはお伝えしておきたいんですけど、普段から指の痛みとか違和感には敏感になってほしいですね。ギターを長く楽しく弾くためにも、手を痛めない方法を探りつつ、願わくばギターに対して学のある人にアドバイスをもらいながら練習すると良いと思います。

日頃、演奏コンディションを維持するために、心がけていることはありますか?

 決まった時間に起き、決まった時間に寝るようにしています。仕事柄できないことも多いんですけど、生活リズムは体内時計にも影響してくるので、そういうことができていない時は演奏力も低く感じます。あとは観察力ですかね。これは宮崎駿さんの受け売りなんですけど、良いアニメーターはよく見てるって。人がズッコけた時に頭からズッコけるのか、ひざから崩れ落ちるのか、みたいな。同じベンドでも1つ1つニュアンスが違いますし、それをどれくらいの精度、解像度で観察できるかが、自分の表現力にも直結すると思うんです。私も素晴らしいギタリストの方々とセッションさせていただく機会に恵まれると、至近距離で指が観察できるわけですよね。そういう時はいかに技を盗んで帰るかを心がけています(笑)。

Reiさんにとってズバリ“練習”とは?

 感情の赴くままに羽ばたくために必要なのは、その翼をはためかせるための筋力で、その筋力をつけるのが練習なんだと思っています。みんな同じだけ豊かな心を持っていますけど、それを表現するためには技術が必要。練習は絶対に裏切らないし、自分の表現をより自由にしてくれるものだと思います。面倒でもやった分だけ必ず自分に返ってくるものだし、ちゃんとやっている人とそうでない人では、現場に出て行った時の積んでいるエンジンが違うというか。

ギター・マガジン2022年4月号
『歪祭 -2022-』

本記事はギター・マガジン2022年4月号にも掲載されています。本誌の特集は、注目の歪みペダル62機種をギタリストAssHが試奏する、“歪祭(ひずみまつり)”!