OKAMOTO’Sのギタリストとして活躍するオカモトコウキが、2年ぶり2作目となるソロ・アルバム『時のぬけがら』を完成させた。演奏からプロデュースまで、すべて1人で作り上げた前作『GIRL』から一転、およそ半数の曲を大林亮三(SANABAGUN./Ryozo Band)と共作。ほかにも様々なゲスト・ミュージシャンを迎えて完成させたアルバムの制作を振り返ってもらった。
インタビュー=尾藤雅哉(ソウ・スウィート・パブリッシング) 写真=YOUNGMYUNG”SONG”、Phil.H.
ギタリストだからこその歌心で
自分の想いを世に問いたい
ソロ・アルバムとしては2019年の『GIRL』以来、およそ2年ぶりです。前作は、文字どおりのソロ・ワークでしたが、今作は仲間たちと一緒に作り上げた作品ですね。
音楽的な出発点としては、『GIRL』を作り終えたあとに、SANABAGUN.のベーシストである大林亮三さんと知り合ったことが大きくて。
亮三さんとは対バンなどで面識はありましたけど、そこまで深い仲ではなかったんです。でも、たまたま亮三さんと会った時に『GIRL』を渡したら“凄く良い”と言ってくれて。彼の音楽的なバックボーンから見て、あまり気に入ってもらえるイメージが湧かなかったので、ちょっと意外だったんですよ。一方で、亮三さんがやっているRyozo Bandの音源を聴かせてもらったら凄く好きになっちゃって。お互いに“じっくり話してみようか”みたいな感じで交流を深めていくうちに、共作する流れになりました。
ちょうどコロナ禍で、お互いのバンド活動が止まっていた時期だったこともあり、じっくりと1年くらいかけて、曲や音源のデータを送り合いながら作品を仕上げていったという感じでしたね。
OKAMOTO’Sのアルバム『KNO WHERE』(2021年9月)は、コウキさんとオカモトショウさんの共作のようなスタイルで作られた作品でした。ソロ作品のパートナーとして、亮三さんを選んだ理由は?
今作には、亮三さんと作った曲が半分くらいあるんですけど、リズム面をテコ入れをしたいと思ったのが一番の理由です。OKAMOTO’Sのアルバムの多くは、ブリティッシュ・ロック感のある作品でしたけど、ソロ活動では、これまでやってこなかったリズム&ブルースや、シティポップと呼ばれているものをやりたいと思っていたんです。そんなタイミングで、ブラックなフィーリングを補ってくれる存在でもある亮三さんとの出会いがあって。
亮三さんにアレンジャーとしての意見を聞きつつ制作していった感じでしょうか。
ホーンやリズムのアレンジは、ほとんど亮三さんと一緒にやっていたので、亮三さんにはアレンジャーとしての役割もありました。これまでの楽曲にはなかったような変わったフィーリングやリズム、そして曲の展開が出せたというのは、亮三さんの存在が大きかったです。やっぱりソロのほうが、アレンジで冒険できる面はありますからね。OKAMOTO’Sでは、ファンからの“こういうものを聴きたい”っていう声は気にかけていますし、その期待を裏切りたくないという気持ちも強いですから。
とは言うものの、OKAMOTO’Sの『KNO WHERE』は、かなり振り切った内容の作品でしたよね(笑)。
いや、まあ、確かに矛盾しているかもしれないですけど(笑)。でも、例えば「90’S TOKYO BOYS」や「BROTHER」が好きな人には、その進化系でもある「Young Japanese」を聴いてもらいたいなとか、ファンの皆さんに向けたコンポーザーとしての視点は、自分の中にずっと持ち続けているんです。
だけどソロ活動においては、そういった制限は何もない。だから、音楽的に楽しいか、楽しくないかという単純なことを重視して作っていった曲が大半で。最初はアルバムを出そうとかもあまり考えていなかったんですよ。
では、何をもって“オカモトコウキらしさ”であると思いました?
きっと、自分のコアをどのようにとらえているかということですよね……僕はアルバムを作るうえで、 歌モノにしようっていうことを常に考えています。例えば、マーシー(真島昌利)のソロ・アルバムみたいに、ギタリストだからこそ持ち合わせている歌心やソングライティングを通じて、“自分の気持ちを世の中に問いたい”という想いは変わらずに持ち続けていたい。今作もそうですけどね。
実は、ギタリストでもある自分が“ソロ・アルバムを出そうかな”と思った時に、どうしてもギターをフィーチャーしたアルバムを出すイメージが湧かなくて。ギタリストとしては、OKAMOTO’Sでの活動が自分の中では一番大きい。だけどソロ活動では、楽曲を全体から見るフロントマンやコンポーザーといった役割を担うことも多いので、その辺りの違いは感じます。トータルでサウンドを作っていた今作では、あまりギターも弾いていませんし。わざわざギター・マガジンで言うのは変かもしれないですけど、今までで一番弾いていないアルバムなんじゃないかなって(笑)。
明るさの中にある物悲しさを
特に意識した作品に仕上がった
OKAMOTO’Sの時にも、ギタリストというよりもコンポーザーの視点で楽曲のことを考えていることが多い、と話していましたね。
コンポーザー寄りの立ち位置もだんだん変わりつつあるんですけど、それがだんだん極まってきて。「君は幻」では、僕はとうとうビブラフォンしか演奏していないっていう(笑)。
SuchmosのTAIKINGさんがギターを弾いている曲ですね。
そうそう。もしビブラフォンを弾かなかったら、“俺、歌だけなんです”って言えたから、“弾かなきゃよかったかな”とも思ったりもするんですけど(笑)。
「Time」は、ラテンな空気感を持ったグルーヴィなナンバーです。ボーカルとしてはメロディを歌い上げるのではなく、淡々と喋りかけるような歌い方をしていますが、この曲はどのように作っていきましたか?
これが1曲目にくると、聴いた時にインパクトがありますね。“おお、こっちに行ったんだ”みたいな(笑)。僕はブラジルの音楽が凄く好きなので、これまでのようなロックからはちょっと離れて、8ビートじゃない世界観を表現したいという気持ちがあったんです。亮三さんと一緒に曲作りを進めていく中で、その思いが徐々に形になって生まれた楽曲なんですよ。
僕と亮三さんが共通して好きな、アジムスというブラジルのバンドがいるんです。ブラジルを代表するシンガー/ソングライターでもあるマルコス・ヴァーリのバック・バンドをやっていて、ラテンやブラジルっぽいフィーリングを混ぜ合わせたフュージョン・バンドのような音を奏でているんですけど。「Time」を作り始めた時から、“アジムスの雰囲気を出したいよね”と2人で話していて。長い時間をかけてグルーヴ感を詰めたあと、一気に録ったっていう感じでしたね。
この曲のような“裏でハネるリズム・パターン”は、絶対にロック・バンドでは表現できない。だからこそ、リズム面でのテコ入れという意味でも活きてくる楽曲だなと感じています。
続く「君は幻」は、TAIKINGさんのギターやホーンとストリングの絡みによって、幸せな雰囲気のナンバーに仕上がりました。“心地のよいフィリーソウル感“もありますよね。
そうですね。OKAMOTO’Sでも、フィリーソウル的なナンバーを発表してきましたけど、これまでは、何となく見よう見まねでやっていたところがあったんです。これも亮三さんと“どういう風にホーン・アレンジを展開していったらいいだろう?”みたいな話をしながら、なるべく本物っぽい音に近づけていきました。レア・グルーヴの名盤と言われているアルバムを作ったアリス・クラークみたいなゴージャスな雰囲気にしたいな、とか言いながら作業を進めましたね。
こういうアレンジの曲は、明るい中にちょっとした物悲しさもありますよね。
そうそう。明るい風景を見ているのに、“でも、いつかこの風景って終わっちゃうんだろうな”みたいな切なさが同居している感じはありますよね。ザ・ビートルズ・ライクな「いつかの絵」とかも、どこかに一抹の刹那感がある。アルバム全体を通して切なさはありますけど、「君は幻」では“明るい曲の中にある切ない感じ”を特に意識していて。
歌詞を見ると、ところどころに強めの言葉や、辛辣な表現が含まれていますよね。
コロナ禍中に、色々な音楽をじっくりと聴く機会があったんです。中学の時に好きだったけど、それ以来ほとんど聴いてなかったようなレコードとかを改めて聴き返していたりすると、ちょっと不思議な気持ちになることがあるんですよ。
レコードの曲を演奏している人たちの中には、まだ生きている人も、亡くなってしまった人もいて、年代や人種も違う。だけど、ターンテーブルの上で彼らが演奏するレコードは同じように再生されている。その様子を見ていると、時間を超えて音が聴かれている凄さや、生命が消えていっちゃうような切なさを感じさせられて。
今は楽しいけど、もうすぐ終わっちゃうかもみたいな。
そう。家に帰ったら終わっちゃうし、永遠には続かないっていう感覚を、30歳を超えた頃から徐々に感じるようになってきて……そういう“20代とは違う切なさ”の感覚を、作品にして伝えられないかな?というのが、今作のテーマですね。
OKAMOTO’Sの時と同様に、“今鳴らすべき音”を正直に表現しているところは、変わらないポイントなのかもしれませんね。
そうかもしれないですね。『OPERA』(2015年9月発売の6thアルバム)の頃から、“今鳴らすべきことは何だろう?”みたいなことをずっと考えていて。“これを今言わなければ”とか“こういう風に表現しなければ”みたいな思いが年々強くなりすぎて、もう行くとこまで行っちゃった感じがするんですよ。だから次の作品では原始に戻って、凄く簡単なスリー・コードを弾きながら“うんこ!”とか言いたいですね(笑)。
グルーブと洗練されていないギターで
純粋な音楽への思いを表現しました
トレンドを追い続けていると、どこかで追い付けなくなる時がありますよね。色々なことが日々変わりますし、まさかここまでコロナ禍が長引いたり、戦争が始まるなんてことも、まったく想像できなかったですし。
いや、本当にそうですよ。頼りになるものが、何もなくなっていく感じがして、疲れちゃいますよね。社会の状況はもちろんですけど、個人的に親しくしていたミュージシャンが亡くなってしまったりもして、ここ数年は、変化を感じる機会が多かったんです。
“見てきたものしか歌えない あったことや言われたことしか それをわざわざ書いているのは 少しずつ消えてしまうから”と「蜃気楼」の歌詞に書いているのも、まさに同じことで。“レコード”って言い得て妙で、やっぱり“今を記録しないと後悔するだろうな”という気持ちはずっとありますね。
それは“今の記録をアルバムとしてリリースして、みんなに聴いてもらわなきゃ”という打算的なことではなく、“何になるかはわからないけど、とりあえず歌詞を書いて曲にしておかないと……”みたいな純粋な思いからくるもので。中学の時にロックを聴いて、“今すぐデカい音でマーシャルを鳴らしたい”という衝動に駆られた時のような、音楽に対する純粋な喜びや思いに通ずる曲作りでしたね。
「惑わせて」は、ベース・ラインからスライ&ザ・ファミリー・ストーンの「Family Affair」のような印象を受けました。この曲のギターは、右手のリズムの引っ張り方が特徴的ですよね。
これはもう、極限まで右手を脱力する感じを狙っていて。実は、僕は洗練されたファンクがあまり得意じゃないんですよ。どちらかというと“アーシーな曲”のほうが好きで。逆アングルのピッキングで思い切り刻んだりしているのを見ると、“ああ、ダメだ……”みたいに思っちゃう(笑)。「君は幻」のギターを弾いてくれたTAIKINGも、時折デイヴィッド・T・ウォーカーみたいなオブリとかを入れてくれるんですよ。でも“もうちょっと無骨でいいかも”ってお願いしたりして。
で、「惑わせて」は、“俺が思うファンクのギターはこれだ”みたいな気持ちで弾いたと思います。だから、フェイザーもかかっているし、分離のいい感じでもない。けっこうリズムのパターンも変わっているけど、それでも全体としてはノれる。そういう価値観を、僕は一番重視しているかもしれませんね。
この曲は、ギターの自由度が高そうですよね。
そうそう(笑)。だから楽しかったですよ。でも、1テイクくらいしか弾いてないです。
「蜃気楼」は全体的に淡々としていますが、ギターだけが有機的な響き方をしていますね。
そうですね。やっぱり基本的には自分で作るので、帯域がきちんと整理できている感覚はあるんですよ。“本当はこうやりたいけど……”っていう意見のぶつかり合いもないですから。
OKAMOTO’Sだと、やっぱりぶつかる?
ぶつかることもありますが、それは必ずしも悪いことではないと思っています。その“いびつさ”がかえって良かったりすることもありますから。
爽やかな曲調の「WORLD SONG」は、ロックなアプローチのギター・ソロを聴くことができますね。
亮三さんから“ロック的なアプローチを入れてほしい”みたいなことは言われましたね。実はこの「WORLD SONG」は、亮三さんと作業を始めて最初にできた曲なんですよ。自分たちの要素がうまく混ざり合っている手応えがあったので、その後に「Time」や「プール」といったディープなところへ進んでいきました(笑)。
「プール」の落ち着かない雰囲気のメロディからサビに行くパートは、どういう風に作っていきましたか?
転調している部分ですね。鍵盤でメロディやコード進行を色々と試してみたあと、最終的にあの形に落ち着きました。「蜃気楼」でも、ゆっくりしたペースの曲が、途中で倍速のアフロ・ビートみたいに変わるところがあるんです。“こんな音は聴いたことないけど、もしあったらヤバいよね”みたいなことを言いながら、楽しくサイケデリックな音を作り込んでいきました。
音楽的な意味での前向きな挑戦という感じですかね。
うんうん。料理で言うと“このメロンに生ハム乗せたらヤバくない?”みたいな(笑)。最初は、“それはおかしいでしょ”と感じるんだけど、食べてみると“これはこれでアリだね”みたいな(笑)。
「幽霊気分」は、打ち込みのビートがフィーチャーされている楽曲です。2Aが来ないまま熱を帯びていき、そのまま終わりを迎える構成ですね。
avengers in sci-fiの木幡太郎さんに“好きなようにやっちゃって下さい”と伝えて、作ってもらった曲です(注:木幡太郎と稲見喜彦によるThe Departmentがトラックメイクを担当)。
2年半くらい前に太郎さんが、家の近くに引っ越してきてから、僕の自宅にあるスタジオで一緒に配信したり、濃密な時間を過ごさせてもらっているんですね。太郎さんは、打ち込みとロックが融合したジャンルの音を極めていった方でもあるし、ギター・テクニックだけではなく、歌心やメロディ・センスも持ち合わせているんです。
日に日に一緒に何かやりたいなという気持ちが芽生える中で、“マクドナルドのことを書いたOKAMOTO’Sの「M」に勝つような曲を作りたいです”と太郎さんにお願いして、素晴らしい曲に仕上げてもらいました。
今の自分にとって、ビートが一番重要だという自覚がある
最近はビートに対するこだわりはありますか?
ビートは重要ですけど、僕はビートのパターンを考えたりするのが凄く苦手で。だから、そこは人の力を借りたいなと思っていたりもするんです。一方では、自分にとってビートが今一番重要なものなんだろうなという自覚もあって。
また8ビートに戻ってくるのかどうかはさておき、先ほどの倍速のアフロ・ビートのようなものとか、自分の中にたくさんの引き出しを持っていると、アレンジも変わってきそうですよね。
そうですね。ソロ活動だけではなく、OKAMOTO’Sも含めて言えることですが、ビートに関しては、今が一番面白いんじゃないですか。一般的な8ビートが続くパターンの曲はないですし、曲のパターンも全部違いますから。
逆に「folk」のようなビートのないアコギとエレキの楽曲や、アコギとピアノだけのシンプルな楽曲も収録されています。しかも「folk」のメイン・ギターは藤原ヒロシさんが弾いていますね。一緒にやってみて、どんな刺激がありました?
藤原ヒロシさんは、やっぱりこだわるところは、めちゃくちゃこだわる……その中で、特に強くこだわったのはリズムかもしれませんね。でも、リズムや構成に対してこだわりを見せる一方で、歌詞やコード進行に対しては、凄くストレートなところもあったりするんです。“もうそんなに難しくしないで、これでいいんじゃない?”とか。
僕は、長年バンドをやってきたので、“商品的にはこうしないと、リスナーが退屈しちゃうんじゃないか”とか、“もう少し展開をつけたほうがいいんじゃないか”と思ってそちらに寄せていった時に、“いや、それよりももっと大事なことあるじゃん”とか、“わざわざそんなことしなくていいよ”みたいなふうに立ち返らせてくれるのが、凄く新鮮でしたね。
素材の良さを一番活かすということですか?
そうです。藤原ヒロシさんの、曲の核をとらえて、それを単に増幅させていく感じは凄かったです。凄く面白い方ですし、できた曲も凄く気に入っているので、参加していただけて本当に良かったなと思っています。
歌詞では、情景を交えながら喪失感を書いていますが、重い内容ではありませんよね。
そうそう。ドライじゃないですか。ウェットな雰囲気がない。ウェットな歌詞にすると、どうしても歌謡曲っぽくなってしまいますから。
シンプルでストレートなことを
もう一度やってみたくなった
レコーディングで使用した機材を教えて下さい。
使用したギターは、1974年製のテレキャスターと、77年製のレス・ポール。あとは『GIRL』のジャケット写真に写っているSilvertone(1457)です。Silvertoneは「Time」のAメロに入っている、ちょっとアフロっぽいフレーズに使ったくらいですけどね。
レス・ポールを使うのは久しぶりですか?
そうです。使ったところも明確に思い出せて、「いつかの絵」のサビと、「SMOKE」のオブリで入っています。それ以外は全部テレキャスターですね。
アコギは何を使っていますか?
Guildですね。このGuildに関しては、ちょっと面白い話があって。10年くらい使っていたD-25っていうオール・マホガニーのギターがあるんですけど、調子が悪くなったタイミングで、一度修理に出したんですよ。そうしたら“ネックが偽物ですね。本物のネック付けますか?”って言われて(笑)。その時に、たまたま同じくらいの年代のGuildがリペアに出されていて、ちょうどネックだけ余っていたんです。なので、修理をお願いして、全部替えてもらいました(笑)。
音は変わりました?
別物になっちゃいました(笑)。でも、凄く良い音になりましたよ。以前はちょっとしっとりとした音色のアコギだったんですけど、一転してカラッとしたいい音になって、ビックリするくらい鳴るようになりました。だから、今作では、ほとんどこのアコギを使っていますね。
活躍した機材はありますか?
RolandのBlues Cubeというトランジスタのアンプですね。今回のレコーディングは、それ1台しか使ってないんですよ。トーン・カプセルというパーツを取り替えることで、何パターンかある音の傾向を選べるんです。僕はエリック・ジョンソンのモデリングだったかな。すでについていたものをそのまま使いました。
どんなところが魅力でしょうか?
OKAMOTO’Sでは合わないかもしれないけど、凄く軽くて、安定感がある。無骨で何も色づけがない感じとか、トランジスタなのに音に温かみがあるところとか、“俺、全部これにしてもいいんじゃないかな”って思えるくらい気に入っています。あと、もう1つ気になっているのが、マーシャルのコンボのBluesBreakerです。欲しいな、と。この間、店でたまたま見つけたんですけど、迷っていたらすぐに売れちゃったんですよね。よくある話ですけど。
ほかに最近買った機材はありますか?
最近はシンセサイザーばっかり買っています。この間手に入れたSEQUENTIALのProphet-6は、このアルバムでもけっこう使いました。「プール」とか、「Time」の曲の最後のシンセもProphet-6で作った音ですし、アルバムのほぼすべての曲に入っているんじゃないかな。
2ndアルバムを作り終えて見えたものはありますか?
音楽的な冒険ができたこのアルバムを作り終えたからこそ、これからは本当にプリミティブなことをやりたいと思っているんですよ。10年以上前にTHE ROOSTERSをカバーしていた頃のように、シンプルでストレートなことをもう一度やりたいなと。
ただ僕のソロに関しては、“これで最後じゃないか?”くらいの気持ちで今回のアルバムを作ったので、次のことは言えないんですけどね。前作に続いてマスタリングをやってくれたUNICORNのABEDONさんが、“前回よりもかなり良くなったし、もっと聴いてみたい”と言ってくれたりもしたんです。僕にとって、その言葉はとても大きかったので、リリースしたあとに、また新たな可能性が出てくるのかなと今は思っています。
それは楽しみです。最後に今後の展望を聞かせて下さい。
これからソロ名義のライブを何本かやるんです。6月5日には、WWW Xでおとぎ話とオカモトコウキのツーマン・ライブが実現しまして。もうね、これは本当に嬉しくて。僕、おとぎ話がめちゃくちゃ好きなんですよ。有馬(和樹/vo)さんとは連絡を取り合っていたりします。牛尾(健太/g)さんは同じギタリストとして憧れの存在なんですけど、緊張しちゃってそんなに話したことがないんですよ。バンドのほうでは、なかなか対バンする機会に恵まれなかったので、今から本当に楽しみですね。そのあとには、東京と大阪でTAIKINGとのツーマン・ライブも決まっているので、ライブでも面白いことができたらいいなと思っています。
作品データ
『時のぬけがら』
オカモトコウキ
ソニー/SLRL-10087/2022年4月27日リリース
―Track List―
Time
君は幻
惑わせて
WORLD SONG
SMOKE
幽霊気分
プール
蜃気楼
folk
Thousand Nights
いつかの絵
―Guitarists―
オカモトコウキ、藤原ヒロシ、TAIKING、澤竜次