ペダル市場に一石を投じ、すでにエフェクター製作技術でも高い評価を得たフェンダー社から、新シリーズが登場した。Hammertone(ハンマートーン)なるこのライン、一体どんな特徴を持ったペダルなのか? ここでは、そのコンセプトと今回リリースされた全9製品の簡単な紹介をお届けしよう。実機のサウンドが気になった方はぜひ楽器店へ行って試奏を!
文=辻昌志 デザイン=ジャスティスマサキ
*本記事はギター・マガジン2022年7月号の特集『Hammertone フェンダーが放つ渾身のニュー・スタンダード・ペダル!』を再編集したものです。
“ビギナー”をメイン層に見据えた
本格派のペダル・シリーズ。
フェンダーがエフェクター市場に本格参入してから早4年。“FENDER EFFECTS PEDALS”シリーズと題し、おもに中〜上級者向けのペダルを次々と世に送り込んできたが、今年6月、同ブランドから新ラインが誕生した。その名はHammertone(ハンマートーン)。その名のとおり、筐体にハンマーの打痕模様を加工したクールなルックスのペダルである。
“初心者の1台目”をメイン・ターゲットに想定しており、価格帯は各8,800〜11,000円。開発には以前のシリーズに引き続き、エリック・クラプトンのシグネチャー・アンプなどを手がけてきたスタン・コーティが音頭を取った。それだけでも製品のクオリティは折り紙付きであるが、すでに初心者向けかつ手頃なプライスの定番ペダルが数多くあるこの商戦の渦中に新たなラインを放つというのだから、ニュー・スタンダードを生み出す気概と本気度がうかがえる。
ラインナップは計9種類。オーバードライブやファズなどアナログ回路の歪み系ペダルが4種と、リバーブやコーラスなど、デジタル回路の空間系・モジュレーション系ペダルが5種となり、定番のエフェクトを取り揃えた。
9機種すべてがトゥルー・バイパス仕様で、サイズは62(W)×111.8(H)×55.9(D)mmとコンパクトなサイズに統一。さらに60年代のフェンダー・アンプにインスパイアされて設計したというコントロール・ノブの洒落心も胸をくすぐるポイントだ。また、内部にはトリム・ポットを備えており、より細かいサウンドメイクも追求可能。
多彩なジャンルに対応できるため、初心者のみならず、すべてのギタリストに太鼓判を押したいペダルとなっているのだ。気になる各ペダルの詳細は次項からチェックされたし!
Hammertone Overdrive
ハンマートーン・オーバードライブ
ミドル音域のブースト機能がキモ!
フェンダー・オリジナルのアナログ回路で設計され、温かく粒立ちの良いサウンドを実現したオーバードライブ。
LEVEL、GAIN、TONEという基本的なコントロールを備えているが、特筆すべきはプリゲインのミッドを調節できる“PRE MID BOOST”ツマミ。中音域をブーストすることで、エッジの効いた音を創出可能となる。また、内部に装備されたトリム・ポットではプレゼンスの音域をコントロールできるため、さらに細かくトーンを追求できるだろう。
1台で歪みサウンドの多様さを味わえる汎用性が高い本機は、初級者に最初の1台としてオススメしたい。
Fender
Hammertone Overdrive
【スペック】
コントロール:TONE、PRE MID BOOST、LEVEL、GAIN
入出力端子:インプット、アウトプット
電源:DC9V電池、ACアダプター
外形寸法:62(W)× 111.8(H)×55.9(D)mm
重量:250g
【希望小売価格】
8,800円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp
Hammertone Distortion
ハンマートーン・ディストーション
表情豊かな歪みサウンドを追求可能
ライトなドライブ・サウンドからヘヴィな歪みまで対応する万能型のディストーション。Hammertone Overdrive同様、アナログ回路で設計されている。
パワフルなサウンドかつノイズも抑制した本機はLEVEL、GAINのツマミに加え、TREBLEとBASSの2バンドEQコントロールを搭載。最大15dBのブーストあるいはカットが可能で、さらにトリム・ポットではミドルとプレゼンスの音域もコントロールできるため、表情豊かな歪みサウンドを作り込める。
トーンを微調整でき、バッキングからソロまで幅広く対応できる万能な本機は、足下に1台置いておいて損はまったくないだろう。
Fender
Hammertone Distortion
【スペック】
コントロール:TREBLE、BASS、LEVEL、GAIN
入出力端子:インプット、アウトプット
電源:DC9V電池、ACアダプター
外形寸法:62(W)× 111.8(H)×55.9(D)mm
重量:250g
【希望小売価格】
8,800円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp
Hammertone Metal
ハンマートーン・メタル
強烈な激歪みサウンドを求めるならコレ!
“オーバードライブやディストーションの歪みでは物足りない!”という強者たちにオススメなのが、Hammertone Metalだ。“メタル”を冠したその名に違わず、よりハイゲインな歪みを爆発させることができる。
Hammertone Distortion同様、高音&低音域の2バンドEQコントロール(HIGH/LOWツマミ)を備え、最大15dBのブーストまたはカットが可能。同じくトリム・ポットではミドルとプレゼンスの音域をコントロールできるため、タフで激重なサウンドかつセンシティブなトーンも確約されている。
メタラーに限らず、多くのプレイヤーへと開かれたペダルだ。
Fender
Hammertone Metal
【スペック】
コントロール:HIGH、LOW、LEVEL、GAIN
入出力端子:インプット、アウトプット
電源:DC9V電池、ACアダプター
外形寸法:62(W)× 111.8(H)×55.9(D)mm
重量:250g
【希望小売価格】
8,800円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp
Hammertone Fuzz
ハンマートーン・ファズ
“あの頃”のクラシックなトーンを再現
60年代的サイケなデザインがイカすファズ・ペダル。2つのシリコン・ダイオードを使用した本機は、なめらかな歪みの質感を持ち、伝統的なロック・トーンを創出する。
LEVEL、TONE、FUZZのツマミに加え、オクターブ・ファズのオン/オフ・スイッチを搭載。これをオンにするとオクターブ上の音が加わり、まさに“あの頃”のようなクラシカルで攻撃的なサウンドが手に入れられるのだ。また、本機のトリム・ポットはプレゼンス音域の調整機能となるため、耳に痛くないファズ・サウンドもお手のもの。
この価格帯におけるフェンダー・オリジナルのファズ、ぜひ一度お試しあれ。
Fender
Hammertone Fuzz
【スペック】
コントロール:TONE、FUZZ、LEVEL、OCTAVEスイッチ
入出力端子:インプット、アウトプット
電源:DC9V電池、ACアダプター
外形寸法:62(W)× 111.8(H)×55.9(D)mm
重量:250g
【希望小売価格】
8,800円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp
Hammertone Reverb
ハンマートーン・リバーブ
フェンダーのお家芸=リバーブを足下に
“リバーブはフェンダーのお家芸”と言っても過言ではない。そんな同社の伝統的な技術を詰め込んで開発された本機は、HALL/ROOM/PLATEという3つのスタンダードなタイプが用意されており、TYPEスイッチで選択が可能。基本的なリバーブが欲しいならコレ1台で十二分に事足りるだろう。
もう1つの TONEスイッチではリバーブの高域を減衰させることができ、より自然なミックスを作れるというわけだ。
コントロールはTIME、DAMP、LEVELを備え、他機種と同様にトゥルー・バイパス仕様となっている。
フェンダー製リバーブが足下にある、というだけでも値段以上の価値アリだ。
Fender
Hammertone Reverb
【スペック】
コントロール:TIME、DAMP、LEVEL、TYPEスイッチ、TONEスイッチ
入出力端子:インプット、アウトプット
電源:DC9V電池、ACアダプター
外形寸法:62(W)× 111.8(H)×55.9(D)mm
重量:230g
【希望小売価格】
11,000円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp
Hammertone Delay
ハンマートーン・ディレイ
シンプルな機能性は初めてのディレイに◎
最大950msのディレイ・タイムを有するデジタル・ディレイ。3wayのTYPEスイッチによりデジタル/アナログ・タイプ/テープ・エコーを選択できる。
MODスイッチをオンにすれば、コーラス効果のあるモジュレーション・サウンドを加えられ、さらにモジュレーションのRATEとDEPTHは内部のトリム・ポットで調節が可能。また、ドライ音をデジタル変換しないAnalog Dry-Through機能を持つため、オンの状態でも自然なトーンを維持できるのは特筆すべきポイントだろう。
ツマミはTIME、FEEDBACK、LEVELというシンプルな機能性なので、1台目のディレイとしてもイチ推し!
Fender
Hammertone Delay
【スペック】
コントロール:TIME、FEEDBACK、LEVEL、TYPEスイッチ、MODスイッチ
入出力端子:インプット、アウトプット
電源:DC9V電池、ACアダプター
外形寸法:62(W)× 111.8(H)×55.9(D)mm
重量:230g
【希望小売価格】
11,000円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp
Hammertone Space Delay
ハンマートーン・スペース・ディレイ
幻想的な音世界を作り出す“宇宙的”ディレイ
“スペース”というモデル名からも、よりアンビエントな志向を持つギタリストにオススメしたい1台。テープ・エコーのような優しく柔らかなサウンドが特徴で、使い方によっては独自の音世界を作り出せるだろう。
スイッチは2つ装備しており、PATTERNスイッチではリピートを3つのリズム・パターンから選択できる。MODスイッチはHammertone Delayと同様のモジュレーション効果を備えており、Analog Dry-Through機能も搭載。
ヘヴィな歪みペダルや、サイケデリックなモジュレーション・ペダルなどと組み合わせ、多種多彩なサウンドメイクを実験してみても良いだろう。
Fender
Hammertone Space Delay
【スペック】
コントロール:TIME、FEEDBACK、LEVEL、PATTERNスイッチ、MODスイッチ
入出力端子:インプット、アウトプット
電源:DC9V電池、ACアダプター
外形寸法:62(W)× 111.8(H)×55.9(D)mm
重量:230g
【希望小売価格】
11,000円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp
Hammertone Chorus
ハンマートーン・コーラス
TYPEスイッチ切り替えで多彩なコーラス・サウンドを
温かさとみずみずしさを兼ね備えたサウンドのHammertone Chorus。
コントロールはDEPTH、RATE、LEVELの3つで、シンプルかつ直感的な操作により理想的なコーラス・サウンドに早くたどり着けるだろう。
TYPEスイッチでは2/3/5声と3つのタイプを選べ、目的に合わせて多層的な音を求めることも可能だ。TONEスイッチの切り替えではマイルドな音色も選択でき、バンド・サウンドに溶け込むようなウェットな音に様変わり。
この実用性は高く、導入したその日から即戦力となってくれるはず。コーラス選びに悩んでいるギタリストはすぐさまチェックを!
Fender
Hammertone Chorus
【スペック】
コントロール:DEPTH、RATE、LEVEL、TYPEスイッチ、TONEスイッチ
入出力端子:インプット、アウトプット
電源:DC9V電池、ACアダプター
外形寸法:62(W)× 111.8(H)×55.9(D)mm
重量:230g
【希望小売価格】
11,000円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp
Hammertone Flanger
ハンマートーン・フランジャー
ギタリストの腕が試されるフランジャー
高音質かつ基本の機能を詰め込んだHammertone Flanger。
TYPEスイッチではサウンドのうねりの強弱を選択でき、RESスイッチは3段階のレゾナンス(≒効果の癖の強さ)を使い分けることができる。
コントロールは、エフェクト音の高低を調整するMANUALに加え、RATEとDEPTHを合わせた計3つ。設定次第では豪快に渦巻くジェット・サウンドを作り出すこともでき、そのサウンド・バリエーションは実に多彩。
飛び道具的な存在のエフェクトではあるが、現代の音楽シーンにおいて、フランジャーを“モダン”に使いこなせるギタリストを目指してみても面白いだろう。
Fender
Hammertone Flanger
【スペック】
コントロール:MANUAL、RATE、DEPTH、RESスイッチ、TYPEスイッチ
入出力端子:インプット、アウトプット
電源:DC9V電池、ACアダプター
外形寸法:62(W)× 111.8(H)×55.9(D)mm
重量:230g
【希望小売価格】
11,000円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp
Hammertoneシリーズ特設サイト
https://www.fender.com/ja-JP/hammertone.html
ギター・マガジン2022年7月号
『名手が明かす、最高のストラト・サウンドの鳴らし方!』
本記事はギター・マガジン2022年7月号にも掲載されています。表紙特集はストラトキャスター!! 国内の名手たちがストラトの魅力や実践的な使い方などを語ってくれています。歴史的名器を追った「伝説に残る10本のストラトキャスター」も必読!!