Special Talk Session春芽(ザアザア)×太嘉志(THE MADNA) Special Talk Session春芽(ザアザア)×太嘉志(THE MADNA)

Special Talk Session
春芽(ザアザア)×太嘉志(THE MADNA)

中毒性のあるダークネスな世界観を武器に表現する4人組バンド、ザアザア。2021年末の活動開始後すぐに、インパクト抜群なヴィジュアルと完成度の高い楽曲で支持を集めているTHE MADNA。それぞれの最新シングルがヴィジュアル・シーンで話題を呼んでいる2バンドのギタリスト、春芽と太嘉志の対談がここに実現! レーベル・メイトであり旧知の仲もある2人のギター談義をお届けしよう。

取材・文=伊藤雅景

ザアザア
左から、零夜(b)亞ん(d)一葵(vo)春芽(g)。

THE MADNA
左から、朋(b)涼太(vo)理緒(d)太嘉志(g)。

太嘉志さんは“繊細”って言葉が一番似合うギタリストだなと思う。──春芽

ギタマガ初登場ですので、まずはギタリストとしてのルーツから教えて下さい。

春芽 僕はX JAPANのhideさんがきっかけでギターを始めました。CDをめちゃくちゃ聴きあさって、“ギターって歪んだ音以外にも色々な面白い音を出せる楽器なんだ”と知って感動した記憶がありますね。

太嘉志 僕はTHE BLUE HEARTSの真島昌利さんがきっかけなんです。レス・ポールを背負ってバンダナを巻いて弾きまくるスタイルがカッコ良すぎて……。そこからバンドとギターに興味を持ち始めた感じですね。

THE BLUE HEARTSがルーツなのは意外です! そこからどのようにビジュアルのシーンに入っていったのでしょうか。

太嘉志 僕は、ザアザアの亞んちゃん(読み:あん/d)と小学校からの同級生で、お互いに楽器を始めてたんです。早い時期から一緒にバンドをやっていて、亞んちゃんにビジュアル系を教えてもらったんですよ。で、その当時は凄くキラキラしているイメージだったので敬遠してたんですが、ビジュアル系の中にも自分の好みに合う音楽性がたくさんあることにだんだんと気がついていったんです。それで“これだったら自分でもできるかもな”と思って、ハマっていったって感じですね。

ザアザアとはレーベル・メイトという以外にも同級生という接点があるんですね。春芽さんは今のような音楽はどのように始めたんですか?

春芽 僕は香川県出身なんですけど、地元でバンドを組んでいました。雑誌の最後のページにあるメンバー募集のページでメンバーを探して、最初はコピーをするところから始めましたね。で、そこから上京してビジュアル系のシーンに入っていきました。

2人はレーベル・メイトになる以前から親交があったそうですが、お互いのギタリストとしての第一印象はどうでしたか?

春芽 太嘉志さんは知識もあってプレイも繊細で、自分の周りのビジュアル系ギタリストの中で一番“完璧に近い人”みたいな印象がありましたね。

太嘉志 嬉しいな(笑)。僕のお春(春芽)の第一印象は、“ビジュアル系のバンドにはいないタイプのギタリスト”でしたね。良い意味でぶっ飛んでるんですよ。ギターを折ったりもしてたし(笑)。

 でも、そういったアグレッシブなライブ・パフォーマンスをしながらも、繊細なプレイが上手いんです。パフォーマンスとプレイの両方に特化してるギタリストだよね。

春芽 自分も太嘉志さんに対して同じようなことを感じますよ。まさにさっき言ってくれた“繊細”って言葉が一番似合うギタリストだなと思っていて。プレイは繊細で、かつパフォーマンスもアグレッシブ。

 それに、繊細で緻密なサウンド・メイクをする人で、“ギターが大好きなんだろうな”っていうのがライブを見ていてガンガン伝わってくるんですよ。その気持ちがお客さんの耳にも届いてるって感じますし、そこが凄く素敵だなと思います。

ギターについてプライベートで話すことはあるんですか?

春芽 ありますね。太嘉志さんのそういったギターの知識やプレイだったり教えてもらったりもしました。

ちなみにどんなことを教えてもらったんですか?

春芽 僕らは4人組バンドなんですが、ライブの時に別のギターを同期で流すっていうことは極力しないようにしているんです。でも、そうすると自分の音にもっと厚みや深みが欲しくて、太嘉志さんにそれを相談したら、“EP Boosterをかけるだけで音の膨らみが全然違う”って教えてくれて。それを今でも使ったりしていますね。

太嘉志さんも同じやり方をやっていたんですか?

 そうですね。でも、僕は機材が好きで常に最新のものが欲しくなってしまうので、今は使っていなくて。今はQuad Cortexだけで完結するようにしています。

お春のギターを聴いて、初めてシングルコイルの音をカッコ良いと感じたんですよ。──太嘉志

それではそれぞれのギター・アレンジの手法について聞かせて下さい。まず、ザアザアはスタジオ・セッションで作曲しているんですよね?

春芽 はい。まずはどういう曲にしようかっていうのをメンバーと大雑把に決めて、そこからギターのニュアンスをその場のノリで考えていくんです。そこで良いものが生まれ次第、セッション形式で構成を決めていくという流れですね。逆にDTMでは1回も作ったことがなくて。

THE MADNAはどうですか?

太嘉志 THE MADNAでは基本的に自分が曲を書いているので、すべてDTM上で作っていますね。なので、ザアザアのようにメンバーと顔を合わせてって作曲をするっていう機会はなくて……。

春芽さんとは対照的な作り方ですね。

太嘉志 そうですね。ギターも、音色やフレーズというよりは曲全体の構想を最初に考えてから決めていきます。また、ビジュアル系のライブではお客さんの“フリ”というがあるので、そこを意識して作っていくことが多いですね。

 例えば頭を振らせたい時は4つ打ちのビート、拳を上げてほしい時は8ビート……みたいな。そういった骨子となるビートやリズムを決めて、そこにどう自分らしいギターを入れていくか、みたいな感じの作り方が多いですね。

春芽
春芽

サウンド・メイクについても聞かせて下さい。春芽さんは音色の使い分けが豊かで、フレーズと音色の両方で曲を展開させていくタイプのギタリストなのかなと感じました。

春芽 hideさんのような多彩な音色のギターをいつも聴いていたっていうのもあって、技術を披露するような”俺のフレーズを聴け!“って感じのプレイよりは、サウンドの面白さみたいなものが自分の個性になれば良いなと思っているんですよ。

 あと、ビジュアル系の中でどういった立ち位置のギタリストになりたいかなっていうことも常に考えていて。このジャンルだと、ハムバッカーでメインのリフをゴリゴリに弾くようなプレイがわりと多いじゃないですか。それも凄くカッコ良いし大好きなんですけど、僕には自分の個性をその中で見出せる自信がなくて。それなら自分が得意なシングルコイルのサウンドで勝負していったほうがこの界隈で勝負していけるんじゃないかなと思って。

そのバランス感覚が素晴らしいです。例えば新作『カクレンボッチ』収録の「カゴメヤカゴメ」では、イントロからワウとオクターバーを組み合わせたサウンドがとても個性的だと感じました。

春芽 僕の中で“哀愁”系の曲のギター・サウンドって、ワウが掛かっているような印象があって(笑)。この曲は作る前の段階からそのアプローチで攻めようという構想がありましたね。

太嘉志さんのサウンド・メイクは、前作『Ugly heaven』(2022年)までは楽曲ごとに雰囲気をガラッと変えていましたが、今作『GiANT KiLLiNG』はより一貫した音だと感じました。何か意識の変化があったり?

太嘉志 今作はリリースが夏なので、下手に細かいことはせず爽快に聴けるようなギターにしようと意識しましたね。感覚でやってるんで細かい話ができないんですけど(笑)。

確かに、爽快かつ勢いのあるギター・ワークですね。一方、シンセサイザーがリード・パートを務める場面も多いような印象でした。

太嘉志 そうですね! そこは意識していました。ギターは凄くシンプルにしていて、ライブでも勢いで弾けるようなフレーズにしています。THE MADNAではギターがリードの曲も多くあるので、バランスを維持するために今作はシンセをガッツリ出していますね。今作はギターはあくまでアンサンブルを支えて持ち上げるような役割になっています。

音色の面で意識した部分はありますか?

太嘉志 普段の自分は“メタル脳筋”みたいなところがあるので、ハムバッカーかEMGのどちらかで攻めたくなる傾向があって(笑)。でも、THE MADNAはボーカルが“ガッ”とパンチを出して歌うタイプではないので、そことの兼ね合いでコイル・タップを使ったシングルコイルっぽいアプローチを試したりもしました。THE MADNAになってからはそういったスタイルが増えましたね。

太嘉志
太嘉志

お互いにサウンドをギター・フレーズ以上に意識しているといった共通点がありますね。

春芽 太嘉志さんは1個の音に対する熱量というか、追及するレベルが高いなっていうイメージがあって。だからこそしっかり耳に届くサウンドになっていると思うんです。誰か真似している人がいるのか、根気強く1人で研究しているのかなとか……。そこが聞きたいというか、気になります。

太嘉志 どうなんだろう(笑)。自分はめちゃくちゃ感覚派のギタリストなので、単純に自分が好きでテンションが上がる音を作ってるんですよ。その結果今があるみたいな感じだからなあ……。ちょっと参考にはならないかもしれない(笑)。

春芽 (笑)。でもその感覚を信じて太嘉志さんの緻密なサウンドを作れるのは凄いですよ。ギターが好きだからこそじゃないですか。そういうところは真似していきたいですね。

太嘉志 僕はザアザアでお春のギターを聴いて、シングルコイルのサウンドを“あれ、カッコ良いぞ”と初めて感じたんですよ。突き刺さるようなコード感やアルペジオのニュアンスに感動して。僕はハードなジャンルでシングルコイルをメインで使うことを邪道だと思っていたところがあって、お春のおかげで自分のプレイの幅が広がったので感謝してます。

これからも常に型にハマらないギタリストとして、ギター・ライフを楽しんでいきたいなと思います。──太嘉志

使用機材についても聞かせて下さい。

春芽 僕はギブソンの黒いES-335がメイン・ギターです。でも、レコーディングではテレキャスターもよく使いますね。アンプはHughes&KettnerのSWITCHBLADE 100です。足下はBOSSのGT-1000くらいで、ライブだとGT-1000で作った音をラインに送って、PA側でSWITCHBLADEのサウンドとミックスしてもらっています。

太嘉志さんは?

太嘉志 僕のメインはESPのEVERTUNEが載っているEC-7です。レコーディングではESPのSH-7も使いますね。で、アンプはもともとPEAVYの5150をずっと使ってたんですけど、今はNeural DSPのQuadCortexで音作りを完結させています。ライブで鳴らしている音はすべてQuadCortexの中のサウンドですね。

今回の対談にあたり、改めてお互いに聞きたいことなどはありますか?

太嘉志 お春、アンプを修理に持ってきすぎじゃない?(笑)。会うたびに“ちょっとアンプ修理してくるわ”みたいなのを聞く気がするんですよ。ちょっと壊しすぎだし、そんなに修理する?(笑)。

春芽 自分はガサツなので(笑)。機材の扱いやライブのパフォーマンスでも色々ガサツなところがありまして……。というか今(2022年6月)も全治1ヶ月の足の怪我をしたり……。ライブでアンプの上から甲本ヒロトさんばりのジャンプをして、着地した時に足をグネっちゃって(笑)。

太嘉志 うわ……。痛そう。明日ライブだよね?

春芽 そうなんですけど、頑張ります(笑)。

それは……アンプも頻繁に壊れそうですね……(笑)。では、春芽さんから聞きたいことは?

春芽 お互い4人編成の中のシングル・ギターという点で一緒なので、そこで意識してることってあるのかなって。どうしてもツイン・ギターよりも寂しくなっちゃったり、音圧が薄れちゃうじゃないですか。

太嘉志 なんだろう……僕は5人とか4人とかで比べたことがないかもしれない。意識しているとしたら、CD音源でも“ライブで再現しきれないことはやらない”とかかな。ライブで完全再現できるっていうところを意識して音源を作っているかもしれない。

では最後に、それぞれのギタリストとしての展望を教えて下さい。

春芽 僕はさっき話したとおり、個性を大事にしたいと思っています。今はビジュアル系のイベントに出演させていただくことが多いんですが、ほかのジャンルのバンドと対バンをするような時に、そこでも戦えるような個性のある音作りやパフォーマンスを武器にできるギタリストを目指したいですね。

太嘉志 ギタリストってこだわりやプライドを持った人たちが多いじゃないですか。自分もその中の1人だと思っていて、“ここは常識的にこうだろう”とか、それこそ“ここは絶対EMGだろう”みたいな固定概念があるんです。でも、お春のおかげでシングルコイルの良さに気づけたように、視野を広げて柔軟にいきたいんですよね。その心は意識していないと意外と忘れちゃう部分だと思うので、これからも常に型にハマらないギタリストとして、ギター・ライフを楽しんでいきたいなと思います。

作品データ

「カクレンボッチ」
ザアザア

little HEARTS/LHMH-1024(Type A:写真)、LHMH-1025(Type B)/2022年6月29日リリース

―Track List―

01.カクレンボッチ
02.アタマガオカシイ(Type A収録)
03.カゴメヤカゴメ(Type B収録)

―Guitarist―

春芽

作品データ

「GiANT KiLLiNG」
THE MADNA

little HEARTS/LHMH-1027(Type A:写真)、LHMH-1028(Type B)/2022年7月13日リリース

―Track List―

01.GiANT KiLLiNG
02.君だけがいない世界で
03.ノイズ(Type Bのみ収録)

※Type Aは「GiANT KiLLiNG」収録のDVD付き。

―Guitarist―

太嘉志