個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。今週はヘフナーの176ギャラクシー・ソリッド・デラックスです! このパリっとしたサウンドが、トロピカルな雰囲気を醸すのにバッチリで、事実スカ/ロックステディ/レゲエの名手が愛した1本なんです。
文=編集部 撮影=小原啓樹 ギター提供=リンテ・伊藤
スカ、ロックステディ、レゲエの名手が愛した1本です。
トーン・プリセットが意外と使える
ジャマイカ、そしてその周辺のカリブ諸国は、ビザール使いの宝庫である。
中でも、リン・テイトはその筆頭だろう。60年代、レゲエの前身にあたる“ロック・ステディ”の形成に深く関わった、ジャマイカ音楽史における最重要ギタリストである(未聴の人はぜひ聴いてみてほしい)。そんな彼のトレード・マークが、次のアルバム・ジャケットで抱えている真っ赤なビザール・ギター。
細部が見切れてはっきりと断定できないが、“トリプル・バー”と呼ばれる特徴的なポジション・マークから察するに、へフナー製のソリッド・モデルであることは間違いなさそうだ(おそらくV2 スーパー・ソリッド)。
ポール・マッカートニーが手にしたバイオリン・ベースで市民権を得たへフナーは、ソリッド・モデルも世に送り出す。オルガン・エフェクト付きの177、6つのトーン・フィルター・ボタン搭載の178など、なかなか奇抜なものをラインナップしていた。
この176 Galaxie Solid Deluxeもビザール度の高い1本。リン・テイトがこれを手にしていたという目撃例もあり、ひょっとしたらその諸作にも本器のサウンドが記録されているかもしれない。
鮮やかな赤のほか、金、銀、黒などのビニール・カバーをまとったフィニッシュが特徴である。丸い金具のペグ裏もかわいらしいし、ここまで登場してきたアメリカ系とは異なり、あからさまに“打倒フェンダー!”というノリとは違いそうだ。
写真ではストラトそっくりに見えるが、構えてみるとそうでもなく、ボディ・サイズも微妙に異なる。コントロールについては次へ。
ヘフナー176 ギャラクシー・ソリッド・デラックス/1960年代製
本記事はギター・マガジン2016年9月号『弾きたいビザール』に掲載された記事を再編集したものです。本誌では、哀愁たっぷりのシェイプを持つ愛しいギターをこれでもかと紹介。好事家のプロ・ギタリストたちが持つビザール・ギターも掲載しています。