ブルースが好きなギタリストならば必ず聞いたことのある“なんとかブギー”という曲名。特に、自身の名を冠したブギーをレパートリーとして持っているギタリスト、カッコ良いと思いませんか? ギタリストに生まれたならば、一度は持ちたい“俺の”ブギー! それぞれの個性を詰め込んだ名刺がわりの1曲、集めてみました!
文/選曲=福崎敬太 Photo by Jeremy Fletcher/Redferns/Getty Images
“自分の名前+Boogie”、どんなプレイをしますか?
ブギーということで、やはりピアニストやギタリストに多いのだが、“なんとかブギー”という曲名はある種の定型でもある。ライブでのブギー・スタイルの即興演奏に、作品化の都合上そういう名前がつけられたものもあるだろう。
しかし、自分で“これが俺のブギー!”と曲名をつけたのか、考えるのが面倒だったのか、はたまたレコード会社が勝手に名づけたのか──そんなことはどうでも良い!
確固たるアイデンティティを持ったギタリストの、自身の名前に“Boogie”という言葉がついた楽曲は、どれもカッコ良いのだ。
今回はそんな“俺のBoogie”を集めてプレイリストにしてみた。ぜひプレイリストを聴きながら、“自分の名前をつけたブギーはこうするな”という妄想&作曲をしてみてほしい!
そしてギタリスト諸君に言いたい、一度は作ろうぜ、“俺のBoogie”を!!
筆者の私的“俺のBoogie”筆頭は、映画『ブルース・ブラザーズ』でもお馴染み、マット・“ギター”・マーフィーの「Matt’s Guitar Boogie」。メンフィス・スリムに帯同したフォーク・ブルース・フェスティバルでソロイストとして披露したバージョンも最高だ。今回収録したのはソロ・アルバム版。流れるようなラン・フレーズ、クロマチック・フレーズも音楽的に響く、素晴らしいアプローチが聴ける。
B.B.キングやジミー・リードといったスター、ハウリン・ウルフやライトニン・ホプキンスといったブルース巨人たちにも“俺のBoogie”はある。J.B.ハットーはスライドで荒々しく弾きまくり、同じくスライド名手でも、ロバート・ナイトホークは押弦スタイルで巧みなコード・ソロを披露。リズム&ブルースなノリのアール・フッカーとロッキン・ブギーなマジック・サム、アコギのソロ・ギターでちょっとスウィンギーに仕上げたロバート・ロックウッド・ジュニア、どれもお見事だ。
アート・テイタムやチャーリー・パーカーらのバンドで活躍したギタリスト、タイニー・グライムスはスウィングするジャジィなプレイを。カントリーではスピーディー・ウェスト(pedal steel)との名コンビっぷりを見せつけるテレキャスター名手=ジミー・ブライアントも。ジャズの流れを汲む流麗なフレージングが美しい。ちなみに本プレイリストには入れていないが、ブライアントから大きな影響を受けているジム・カンピロンゴも「Jim’s Boogie」を残している。
さて、一番有名なのはジェフ・ベックだろうか? Charを始め、様々なギタリストにカバーされている「Jeff’s Boogie」だが、ベックはヤードバーズ時代から長きにわたって様々なバージョンを残しているので、ぜひ時期ごとに聴き比べてみてほしい。同じく英ブルース・ロック勢からは、チキン・シャックが1973年のライブで披露した「Webb’s Guitar Boogie Shuffle」もある。めちゃくちゃロックなビートのうえでスタン・ウェッブのギターが吠えまくる。
同じ“ブギー”というテーマでも十人十色。あなたなら、“自分の名前+Boogie”という曲ではどんなプレイを残しますか?