ビリー・ギボンズが序文を寄稿した、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのライブ作品『ライヴ・アット・ザ・LAフォーラム』。そのインタビューに際し、彼がジミからもらったというピンクのストラトキャスターについても話を聞くことができた。ストラトキャスターをテーマとしたジミとの思い出についても語ってもらおう。
インタビュー/翻訳=トミー・モリー Photo by Michael Ochs Archives/Getty Images
当時の私は大きなことともとらえずに受け取ったよ
ジミからあなたはピンクの1957年製ストラトキャスターをプレゼントされたそうですね。渡された時の状況とあなたの気持ちを教えて下さい。
あれもテキサスでのことだった。ジミが持っていた中でも古いストラトキャスターで、“お前もストラトキャスターをぜひプレイしてごらんよ”とストラトキャスターが詰まった機材トラックから1本くれたんだ。当時の私はフェンダーのテレキャスターをプレイしていて、ジミは私がストラトキャスターを気に入るだろうと考えたようだった。
“オーケー”という感じで、当時の私は大きなことともとらえずに受け取ったよ。そりゃ20数本もある中から“ハイ、これが君のだよ。どうぞ!”って渡された感じだったからね(笑)。
そのストラトキャスターを使った代表的なあなたの曲は?
「ラ・グランジェ」(『トレス・オン・ブレス』収録/1973年)でのソロ、オリジナル・バージョンの「ブルー・ジーン・ブルース」(『ファンダンゴ!』収録/1975年)がパッと思い浮かぶ曲かな。ZZトップを始めた頃に私はサンバーストの1959年製ギブソン・レス・ポール=“パーリー・ゲイツ”を手に入れた。それからしばらくはストラトキャスターとレス・ポールを行ったり来たりする形でまったく異なるサウンドの2本のギターをプレイしていたんだ。
あとは、2枚目のアルバム(『リオ・グランデ・マッド』/1972年)で「バーベキュー」という曲でも弾いている。今はすぐに思い出せないけど、もっとたくさんの曲であのストラトキャスターをプレイしたはずだ。
5ポジションのトグル・スイッチが生まれたのは、ジミのおかげなんだ
ジミとストラトキャスターで思い出すエピソードはありますか?
彼はトグル・スイッチ、つまりピックアップ・セレクターの変わった使い方も発明した。元々はフロント、センター、ブリッジの3つのポジションで選択するためのものだったけど、注意深く操作することで2つのピックアップを逆位相でミックスできるってことを発見したのは、実はジミなんだ。現在フェンダーから販売されているストラトキャスターは3ポジションじゃなくて5ポジションになっているけど、これは実はジミの発見があってのことなんだよ。あのアウト・オブ・フェイズのフェンダー・サウンドを生み出した最初の人がジミだったんだ。
ある日、彼はピックガードのネジをはずしてセレクターのスプリングをはずしていた。私が“何をしているんだ?”と聞いたら、“ミックスのポジションを出しやすく改造しようとしているんだ。バネをはずしたほうがあのミックス・ポジションを探しやすくなるからね”と言っていたよ。5ポジションのトグル・スイッチが生まれたのは、ジミ・ヘンドリックスのおかげなのさ。
ストラトキャスターの共同開発者としてジミの名前を入れるべきかもしれませんね(笑)。
それに彼は常に好奇心旺盛で、実験もしたがっていたよ。彼はフェンダーのストラトキャスターで色々な試行錯誤をして、オリジナルの設計者たち考えもしなかったサウンドを生み出してきた。ジミ・ヘンドリックスという男は、この楽器に新しい使い方を見出したんだ。それだけ先駆的な見方をした男がこの世に生まれ、さらに50年以上経った現在でも、彼がやっていたことから私たちは学び続けているというわけさ。
作品データ
『ライヴ・アット・ザ・LAフォーラム』
ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
ソニー/SICP-6490/2022年11月18日リリース
―Track List―
- イントロダクション
- タックス・フリー
- フォクシー・レディ
- レッド・ハウス
- スパニッシュ・キャッスル・マジック
- 星条旗
- 紫のけむり
- 今日を生きられない
メドレー - ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)
- サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ
- ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)
―Guitarist―
ジミ・ヘンドリックス