Survive Said The ProphetのTatsuya&Ivanに重厚なツイン・ギターのこだわりを聞く Survive Said The ProphetのTatsuya&Ivanに重厚なツイン・ギターのこだわりを聞く

Survive Said The ProphetのTatsuya&Ivanに
重厚なツイン・ギターのこだわりを聞く

ドロップ・チューニングのヘヴィ・リフを軸に、ハードで洗練されたロック・アンサンブルを響かせるSurvive Said The Prophet(サバプロ)。彼らが2年ぶり6枚目の新作アルバム『Hateful Failures』を完成させた。前作に引き続き、プロデューサーにクリス・クラメット氏を迎え、アメリカでレコーディングを行なったという本作。コロナ禍やYudai(b, vo)のバンド脱退など、幾多の危機を乗り越えて完成させたニュー・アルバムについて、ギタリストのTatsuyaとIvanに話を聞いた。

取材:尾藤雅哉(ソウ・スウィート・パブリッシング)

アメリカで行なったレコーディングは
ずっと音楽漬けの日々でした(Tatsuya)

Tatsuya(g)
Tatsuya(g)

ギター・マガジンのインタビューには初登場になるので、まずはギターを始めたきっかけから教えて下さい。

Tatsuya 高校生の時に、“モテるんじゃないか?”と思って始めました(笑)。当時、よく聴いていたのがメタルで、好きだったチルドレン・オブ・ボドムのアレキシ・ライホのギターをコピーしたりしていましたね。そこからメタリカやスレイヤーなど、時代をさかのぼりながら色んなバンドを知っていった感じです。

では、ギターでモテ始めたのはいつ頃ですか(笑)?

Tatsuya どうだろうなぁ~(笑)……ここ5年くらいじゃないですかね? やっていたのが頭を激しく振るような音楽だったので、そもそもモテるような音楽ではありませんでしたね。いつも野郎の友達とつるんで、ワーワーやってました。

Ivanさんはいかがですか?

Ivan もともと僕が生まれ育った香港でサッカーをやっていたんですけど、その仲間たちと“バンド組もうぜ”って流れから、ギターと出会いました。それが15歳くらいの頃かな。当時、友達の1人が夏休みの旅行でイギリスに行ってきて。そのお土産でもらったのが、リンキン・パークとスリップノットとKOЯNのCDだったんです。そこからバンドとギターにどんどんハマっていきました。

香港ではどのような音楽活動をしていたのですか?

Ivan 香港では、ボーカルとギターのデュオで路上ライブをやっていました。その後、19歳で日本に来たんですけど、そこでニュー・メタルやハードコアに出会い、自分の中の音楽の世界が大きく広がっていった感じです。日本のバンドでは、toeが凄く好きですね。

ずっと続けている練習法などはありますか?

Tatsuya クリックに合わせて弾く練習はずっと続けていますね。表や裏の拍でリズムを取ってみたり、2拍目しか鳴らさない、スネアが鳴っている箇所だけ弾く、とか。右手と左手のタイミングをよりシビアにリンクさせるために、速い曲だけでなく、物凄くスローなナンバーでも試してみたり。そういう練習をやることで、アンサンブルの中で“遊べる”幅が広がるんですよね。

Ivan 僕は、新旧を問わず好きな音楽をコピーすることかな。自分の中のプレイの引き出しが一番増やせる方法だと思うので。最近だとポリフィアのコピーをしたんですけど、物凄くテクニカルなので苦戦しながらやっています(笑)。あとは「ドライフラワー」(優里)。シンプルにいい曲だなって。色んな音楽をランダムに流しながら、それに合わせて弾くってことはよくやっていますね。

2年ぶりとなるニュー・アルバム『Hateful Failures』は、1ヵ月以上にわたってアメリカでメンバーと共同生活をしながらレコーディングしたそうですね。

Ivan 前作からの2年の間には、コロナ禍に加えて、メンバーの脱退もあったりして。極限まで追い込まれた中、残った4人のメンバーだけでアメリカへ行って、共同生活をしながらレコーディングをして完成させました。

Tatsuya アメリカに渡る前に、メンバーとは“むちゃくちゃ仲が悪くなるか、良くなるかのどちらかだろうな”って話をしていて(苦笑)。僕らとしては、大きな賭けでしたね。

 アメリカでは、スタジオに併設された下宿所みたいなところで生活していたんですけど、プライベート空間はゼロ(笑)。起きている時間はずっと音楽漬けの日々でした。時に喧嘩もしながら濃密な時間を過ごしたんですけど、結果としてとても素晴らしい作品が完成しましたね。お互いに素直な気持ちをぶつけ合ったことで、バンドとして良い方向に進むことができたと思います。

ステージで演奏しているノリを意識すると
自分がイメージしている音に近づける(Ivan)

Ivan(g)
Ivan(g)

ツイン・ギターのコンビネーションは、どのように作り込んでいくのですか?

Tatsuya 基本的にはIvanがバッキングで僕がリードを担当しています。ただ、デモができた段階で“どちらがリードを弾くか”を話し合う時もあって。そこでIvanが“リードやりたい” と言った曲に関しては、“良いフレーズが思い浮かんだのかな”と思って任せることもありますね。今回の作品で言うと、「Drive Far」で聴けるメロディアスなフレーズはIvanです。

「Drive Far」では、タメの効いたソロを披露していますね。

Ivan これは、ちょうどコロナ禍に突入した頃に作っていた曲で、“ギター1本だけで、バンドのアンサンブルをどこまで表現できるか”を自分なりに追求して完成させました。“ギター1本でも飽きさせない”ようなプレイを意識していましたね。ぶっちゃけて言うと、最初はソロを入れるつもりはなかったんですよ(笑)。バッキングのフレーズを作ってわりと満足していたので。

Tatsuya そうだね。でも、“ここからはソロだよね”みたいな雰囲気になって。このソロでは、普段の僕らが楽屋で遊びながらギターを弾いている時の感じが出ているのかなって思います。ずっとラウドな音楽をやってきましたけど、最近はお互いに歳を重ねて、7thを入れたオシャレなコードだったり、ブルージィなフレーズも好きになってきたので。

Ivan そうそう。そういうコード感のほうが、ギターで遊べる幅も大きかったりするんですよ。

「Papersky」では、タッピングを駆使したメカニカルなフレーズも耳に残りました。

Tatusya この曲のド頭のフレーズはシンセが元になっていて。そのフレーズに僕がタッピングで追従しながら作りました。

「Win-Lose」は、ヘヴィなリフを軸に緩急をつけたバンド・アンサンブルが大迫力で鳴り響くナンバーです。

Tatsuya 僕がバンドに加入する前からあった曲で(※加入は2016年)。それを今回、リアレンジして完成させた1曲ですね。もともとは、タイトなリフがずっとユニゾンしているアレンジだったんですけど、緩急をつけることで“開放”する場所を作ろうと思っていました。

Ivan アルバムの中で一番、一体感のある曲かもしれないです。ライブのサウンドチェックでは、毎回PAさんから「Win-Lose」をやってくれって頼まれるんですよ。“この曲がバンド・サウンドをモニターするのに一番わかりやすいんだよね”って。たしかに曲の中では、サウンドが塊になっているところも、開放感のあるパートもあるので、わかりやすいのかもしれない。

なるほど。ちなみにギタリストとして、お互いに対してどのような印象を持っていますか?

Tatsuya 僕から見たIvanは、凄く自由なプレイヤーという印象ですね。好きなタイミングで前に出てギターを歌わせたり、バックでアンサンブルを支えたりすることもうまい。あとプレイヤーとしての原点がアコギということもあってか、タッチのニュアンスも繊細で、右手の表現力がすごく豊かなんですよ。

 どちらかと言うと、僕が機械的なフレーズを弾くことも多いので、Ivanの弾くアルペジオやリフのおかげでバンドのアンサンブルがよりカラフルになることも多いですね。

Ivan Tatsuyaは“対応力”が誰よりも優れていると思います。それこそ「Papersky」のように、シンセで作ったフレーズもすぐにギターで弾けたりするし、僕らがどんなアイデアを投げてもすぐに対応できる。あと精神的な面でも、バンドの大きな支えになっていますね。とても万能なプレイヤーだと感じます。

今回の楽曲をレコーディングする時に意識してたポイントは?

Tatsuya 曲の全体像を見ることかな。Yosh(vo)の歌い方や声量も含めて、デモの段階からメンバーで話し合って、緻密に全体のアンサンブルを作り込んでいきました。

Ivan あとは、ライブで演奏するイメージを持つことも大切にしていましたね。僕はレコーディングの時に“立って”ギターを弾くことも多くて。僕らはずっとライブを続けてきたバンドなので、ステージで演奏しているノリを意識すると、フレーズが大きくなるし、自分がイメージしている音に近づけるような感覚があります。今回のアルバムだと「624」がそうかな。

レコーディングで使用した機材について教えて下さい。

Ivan 僕は、エンドース契約しているIbanezのFRがメインですね。サバプロの曲はドロップA#というチューニングがメインになるんですけど、Ibanezのギターはピッチが安定しているので気に入っています。ほかには、IbanezのAZやTalman、8弦ギター、ヘッドレス、ポリフィアのシグネチャー・モデルも使いました。

 アンプはMesa/BoogieのDual Rectifierをメインに、プロデューサーと一緒にいろんな機材を組み合わせながら音を作り込んでいきました。

Tatsuya ギターはSchecterのARがメイン。ドロップA#の曲ではロングスケール・モデルを使っていて。レギュラー・チューニングのほうは、ビグスビーを搭載したり、色々と改造しちゃっています。

 アンプは、Bognerが多かったですね。ほかにもバッキングでMesa/Boogieを使ったりしました。

今作のギターの“弾きどころ”は?

Tatsuya やっぱり「Drive Far」のメイン・リフかな。あとは、もしツイン・ギター編成のバンドだったら、「624」に挑戦してみるのも面白いと思います。リード・ギターもリフも弾きごたえがあるので。

Ivan サバプロの曲って意外とシンプルなコード進行だし、メロディもキャッチーなので、弾き語りやアコースティック・アレンジで演奏してみても面白いと思います。僕もたまにやるんですけど、けっこう楽しいですよ(笑)。曲の雰囲気も変わって感じられるので、ぜひいろいろと試してみてください。

最後に、バンドの今後の展望について教えて下さい。

Ivan ようやくライブができるようになってきたので、以前のように国内や海外でたくさんライブをやっていきたいですね。

Tatsuya コロナ禍で声が出せないライブが続いていますが、今回のアルバムには一緒に歌って楽しめる楽曲が多く収録されているので、今後はこれまで足踏みしてしまった時間を払拭できるくらい積極的にライブをやって、活動の勢いを加速させていけたらいいなと思っています。

作品データ

Hateful Failures
Survive Said The Prophet

ソニー/SRCL-12243/2022年10月12日リリース

―Track List―

  1. Hateful Failures Pt.1
  2. Mary
  3. Drive Far
  4. Beauty Queen
  5. Papersky
  6. Win / Lose
  7. Hopelessly young
  8. Hateful Failures Pt.2
  9. 624
  10. Prayer

―Guitarists―

Tatsuya、Ivan