個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。1950年代のアメリカで圧倒的なギター生産本数を誇ったケイは、歴史や国内シェアも踏まえるとギター界の“アメリカン・トラディショナル・ブランド”と呼べるだろう。しかし、その長い歴史と多作なブランドゆえ、必然的にビザールなモデルが生まれる、という側面も。今回はそんなケイから、なんとも哀愁たっぷりなK-4101ソロ・キングをご紹介しよう。
文=編集部 撮影=三島タカユキ 協力/ギター提供=伊藤あしゅら紅丸 デザイン=久米康大
KAY
K4101 SOLO KING
“モダンなダブル・カッタウェイ”!!
アメリカン・ビザールの横綱ブランドと言えば、ケイ、そしてハーモニー。多くのレジェンドが活躍し、のちのビッグネームを育んだ1950年代、ギターの生産数でNo.1を争った2大ブランドである。
今回紹介するケイは、1890年設立のグレッシェル・マンドリン・カンパニーがその母体で、エレキ・ギターの製造を始めたのは1936年という老舗ブランド。日本製ギターを始めとしたさまざまなメーカーにパーツ供給をしていたり、ノックスやケントのバイヤーズ・ブランド、シアーズのシルバートーン、モンゴメリー・ワードのエアラインなど、さまざまなブランドのスチューデント・モデルも大量に製造していたケイは、もちろん自社ブランドでも多くのギターを作っていた。
このように優れた生産性を誇る彼らは、コストパフォーマンスの高いギターも生産しながら、ジミー・リードやバーニー・ケッセルといったトップ・プレイヤーのシグネチャー・モデルをラインナップしている。“プロも使っているケイのギター”がビギナーでも手に入る、という事実は国内でのシェア率を高めた大きな要因だろう。
さまざまなブランドのギターを作り、そのうえ数多く生産してきた彼らのラインナップは多岐にわたる。ゆえに、ジミー・リード・モデル=K-161 シン・ツインのような印象的なギターがあれば、このK-4101ソロ・キングのようなビザール風味強めのモデルも自ずと出てくるわけだ。
1959年後半から1960年までという短命に終わったモデルながら、この見た目の愛くるしさにハマってしまう人も多いだろう。1ピックアップ、1ボリューム、1トーンというシンプルさで、当時の販売価格は75ドル。エレキ・ギターのラインナップとしては最も安価なモデルのひとつだった。
ピックアップはミニハム・サイズだが実はシングルコイルで、2基搭載したK-4102ソロ・キングもラインナップされていた。販売価格95ドル。2ボリューム、2トーンで、3ウェイ・ピックアップ・セレクターが付いている。
そして何より、本器でまず目を惹くのはこの独特なボディ・シェイプだろう。センターラインの右側はポール・バースのリッケンバッカー風でありながら、左側は直線のカットという、ある意味大胆なコンセプト。この独特な形が“オハイオ・シェイプ”と呼ばれるのは、西側・インディアナ州境が南北に走る直線である同州の形に似ているから。ちなみに北はエリー湖との湾曲した境界線になり、右側のカッタウェイにあたる。ケイの本拠地であるシカゴからも近いので、馴染み深かったのかもしれない。
いずれにせよ。“永遠の未完成”的な印象が、愛おしい。