ジェフ・ベックの過去インタビューから、印象的なトピックについて語った部分を抜き出してお届けする連載、『Jeff Beck Talked about…』。今回はその後の愛器として一生を共にするストラトキャスターとの出会いについて。少年が憧れのギターと初めて対面した時のワクワクを、あのジェフ・ベックも我々と同じように体験していた。
This article is translated or reproduced from Guitarist #495 March 2023 and is copyright of or licensed by Future Publishing Limited, a Future plc group company, UK 2023. All rights reserved.
Interpretation by Tommy Morly Photo by Paul Natkin/WireImage/GettyImages Designed by Marina Ino
店に飾ってあったストラトキャスターを5分以上眺めていたよ
俺は友達と一緒に電車とバスを乗り継いでクロイドンからロンドンへ行き、通りかかった配達業者の男に、どこに行けばギターが見られるのかを尋ねた。そいつは偶然ギターのことを知っていて、“チャーリング・クロス・ロードに行け”と教えてくれたんだ。
俺たちはバスに飛び乗り、バスの二階の窓からギターの店を探した。友人が突然“オー・マイ・ゴッド!”と言ってバスの階段を駆け下り、俺たちは互いにぶつかり合いながら渋滞の車列の間を駆け抜けていった。
ジェニングス・ミュージカル・インストゥルメンツ(JMI/チャーリング・クロス・ロードの100番地でVOXのアンプを販売していた店)の窓にテレキャスターとストラトキャスターが飾ってあったんだ。俺たちはその場から動けなくなって、少なくとも5分以上はよだれを垂らしながら眺めていたよ。友人が“俺らは入るべきか?”と聞いてきたが、“いや、ダメだ。俺たちには場違いだ!”と答えた。あの時、俺たちは完全に発狂していたね。
しばらくしてから俺たちは店に入って、“フェンダーのストラトキャスターを試奏したいんだ”と頼むと、“はいお客様、もちろんです。購入されるんですよね?”と聞き返された。俺たちにはそれを買える金なんてなかったが、“そ、そうだね……”と答えたよ(笑)。
俺はしばらくプレイしたけど、あれは本当にマジカルな経験だったよ。で、俺が泥のついたブーツをアンプに乗せてしまって、店員が“もういい、出て行け!”と怒鳴りつけてきた。でも俺は、ストラトをプレイできたことがあまりにも嬉しくて、店を追い出されたことなんて気にもならなかった。
俺がチェット・アトキンスの曲をストラトでプレイし始めると、通りから人が入ってきた
次にその店に行った時、その店員は“ムムム、お前のことを覚えているぞ……”ってなってたね。でも俺がチェット・アトキンスの曲をストラトでプレイし始めると、通りから人が入ってきて聴いていってくれたんだ。
それで店員は、“そのまま弾き続けろ、弾き続けるんだ!”と言ってきた。しかし俺は“この野郎! 俺が客を店に連れてきてやる代わりに、お前のアンプに1日中足を置いてやるからな!”って思ったね(笑)。
それにあの店はいつもパイプのヤニの臭いがしていて、販売員たちはかなり威圧的だった。だから俺たちは、チャーリング・クロス・ロードにあったリュー・デイヴィスというもう1つの店にも出入りしていて、そこでスラップ・バック・エコーの装置を発見して天にものぼるような気分になったのを覚えているよ。
リュー・デイヴィスでは販売員と仲良くなって、彼はどんなギターでも俺たちにプレイさせてくれた。“何も盗むなよ!”とだけ言って俺たちの自由にさせてくれたんだ。もちろん俺たちは何も盗まなかったし、追い出されるようなこともなかったよ。
でもある日、15歳のガキが父親と一緒にやってきて、現金でストラトを買ってもらう光景を目にしたんだ。ケースやなんやらも含めてだぜ!? ストラップも弦も、ピックも……。俺たちは座り込んでしかめっ面をする以外なかったね(笑)。
──ジェフ・ベック(ギタリスト誌2009年夏)
本記事の元となった『GUITARIST』2009年夏号のインタビュー全文が『ギター・マガジン・レイドバック Vol.12』で読める!
『ギター・マガジン・レイドバック Vol.12』
『ギター・マガジン・レイドバック Vol.12』に掲載された「追悼ジェフ・ベック」には、本記事の元となった『GUITARIST』誌の2009年夏号のインタビュー全文を収録。本記事で紹介した内容のほかに、ジミ・ヘンドリックスとの出会いやオックスブラッドのレス・ポールについてなどなど、貴重な話が語られている。
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