『アット・ファースト・ライト』
ラルフ・タウナー
アコースティックの鬼才が放ったECMデビュー50周年記念ソロ・アルバム
73年の『ダイアリー』でデビュー以来、半世紀にわたって25枚以上ものリーダー作があるタウナーだが、こと完全ソロとなると意外にも少なく、名声を決定付けた79年の『ソロ・コンサート』を含めてこれが6枚目。
今回はギルド12弦スチールはなく、全編クラシック・ギターで、2019年の来日時に持って来た近年メインのオーストラリアの名工ジム・レッドゲイト製。
2017年のソロ作『マイ・フーリッシュ・ハート』も素晴らしかったが、82歳を目前にして収録した本作も円熟の境地と研ぎ澄まされた感性が表出していて、ただただ酔いしれるばかり。
若き日はジャズ・ピアニストとして活動していた彼は、ビル・エヴァンス(p)の影響をクラシック・ギターの技法に投影してきた。
今回もスタンダード曲の③⑩、自作⑤などで見事なまでに結実しており、トラッド名曲⑦での奥深い表現力はどうだ!
合間に聴こえるブレス(息継ぎ)がこれまた臨場感満点。
(石沢功治)
【参加クレジット】
ラルフ・タウナー(g)
【曲目】
①フロウ
②ストレート
③メイク・サムワン・ハッピー
④ウビ・スント
⑤ギターラ・ピカンテ
⑥アット・ファースト・ライト
⑦ダニー・ボーイ
⑧ファット・フット
⑨アルゼンチンの夜
⑩リトル・オールド・レディ
⑪エンプティ・ステージ
ギター・マガジン2023年5月号
『追悼 鮎川誠』
2023年4月13日(木)発売