クリープハイプの新作EP『だからそれは真実』で小川幸慈が使用したギター&サウンド・システムをご紹介。今作のレコーディングでは、ジャズマスターを長らく愛用していた小川が、なんとストラトキャスターを導入! それに合わせてアップデートしたというサウンド・システムも含め、各機材のポイントを解説していこう。
取材/文=伊藤雅景 写真=星野俊
小川幸慈の使用ギター
Fender Custom Shop/Stratocaster 1961 Reissue
ジャズマスターに代わる小川の新たなメイン器
小川が2022年に入手したフェンダー・カスタムショップ製ストラトキャスター。今作のレコーディングで活躍したほか、クリープハイプのアリーナ・ツアー「本当なんてぶっ飛ばしてよ」でも度々登場している。小川の絶対的メインである62年製のフェンダー・ジャズマスターと比べて、“ストラトらしい”歪み感や、長いサステインがお気に入りとのこと。
チューニングはレギュラーで、ボリューム&トーンはマックス。ピックアップ・ポジションはフロントかセンターをメインで使用している。今作のレコーディングでは、「凛と」以外のすべての楽曲で登場しており、今後小川のギター・サウンドの核を担うであろう1本。
小川幸慈のペダルボード
【Pedal List】
①Custom Audio Japan/IN and OUT(ジャンクション・ボックス)
②VOX/V846-HW(ワウ・ペダル)
③RJM/Mini Effect Gizmo(ループ・スイッチャー)
④KATANASOUND/BLUE STRIPE 青線(コンプレッサー)
⑤Electro-Harmonix/POG2(オクターバー)
⑥ELK/Big Muff Sustainer(ファズ)
⑦Creation Audio Labs/MK4.23(ブースター)
⑧Custom Audio Japan/Line Selector(ライン・セレクター)
⑨Rainger FX/Dr. Freakenstein Fuzz(ファズ)
⑩Ed’s Mod Shop/Pookie Fuzz(ファズ)
⑪BOSS/ES-8(プログラマブル・スイッチャー)
⑫SOURCE AUDIO/SPECTRUM ENVELOPE FILTER(エンヴェロープ・フィルター)
⑬1995fx/Clarity(オーバードライブ)
⑭Beetronics/WHOCTAHELL(オクターブ・ファズ)
⑮SEYMOUR DUNCAN/805 Overdrive(オーバードライブ)
⑯FREE THE TONE/PA-1QG(プログラマブルEQ)
⑰strymon/TIMELINE(マルチ・ディレイ)
⑱strymon/Mobius(マルチ・モジュレーション)
⑲Eventide/H9(マルチ・エフェクター)
⑳Sonic Research/ST-200(チューナー)
㉑Custom Audio Japan/DC/DC Station II(パワー・サプライ)×3
プログラマブル・スイッチャー⑪を中心に音色を管理する小川のペダルボード。最初に、大まかな接続順を解説しよう。
ギターからの信号はジャンクション・ボックス①→ワウ・ペダル②の流れで通過し、プログラマブル・スイッチャー⑪へ。そして⑪のアウトから①へ戻り、アンプのインプットへ向かう。
プログラマブル・スイッチャー⑪では、以下写真で青枠で囲まれた③〜⑲までが管理されている。
また、⑪のループ内につながれたループ・スイッチャー③(ファズ⑥の筐体下に配置)に、④〜⑩までが接続されており、⑪のプログラムとMIDIで連動してそれぞれのオン/オフが管理されている。以下写真で赤枠で囲んだ部分が、③に接続されているペダルだ。
⑪のプログラム内容は、楽曲ごとに異なる。バンクの順番も、ライブのセットリストに合わせて都度並べ替えているとのこと。
それでは、各ペダルの使い分けを解説していこう。
メインの歪みは⑬、⑮の2台。⑬はコンプ感のある深く歪んだドライブ・サウンド用で、⑮は“アンプを少しプッシュする程度”のクランチ。なお、クリーンの際はコンプレッサー④のみがONになる。
ファズには⑥、⑨、⑩、⑭の4台が採用されており、⑥はマフっぽいサウンド、⑨はパワフルなファズ、⑩はチープな音が欲しい時、⑭はオクターブ・ファズという使い分けだ。
ギター・ソロではブースター⑦で音量をプッシュ。一方、レベルを下げる際はプログラマブルEQ⑯でマスター・ボリュームを抑えているようだ。
空間系の音色は⑰、⑱、⑲の空間系マルチ・エフェクターが担う。⑰はディレイ用、⑱ではコーラスや揺れ系のエフェクト、曲間のつなぎで使うボリューム・スウェル、⑲はリバーブやピッチ・シフト系の音色をプログラムしている。
小川幸慈の使用アンプ
Fender/1968 Vibrolux Reverb
小川の“フェンダー・サウンド”を作り出す1台
小川が今作で使用した1968年製のVibrolux Reverb。小川は“歪み始める音量が低いアンプ。クリーン〜クランチの音色が好き”と語っており、ボリューム・ツマミは目盛りの3〜4あたりで使うことが多いとのこと。チャンネルはNORMAL1で、BRIGHTスイッチはONにしている。
Dr.Z/Prescription RX ES & 2×12 Black Cabinet
硬くタイトな歪み感を演出
ドクター・ジー(Dr.Z)のヘッド&キャビネットは新作EPでも活躍した。“フェンダー・アンプと比べて、もう少し硬くタイトな歪み感が欲しい時に使いますね”とは小川談。セッティングは、BASS、MIDDLE、TREBLE=11時、VOLUME=10時、OVER DOSEスイッチはオフ。また、マスター・ボリュームが増設されており、目盛りは5の位置にセッティングしている。
作品データ
『だからそれは真実』
クリープハイプ
ユニバーサル/UMCK-1742/2023年3月29日リリース
―Track List―
- 凛と
- 本当なんてぶっ飛ばしてよ
- 朝にキス
- 愛のネタバレ
- 真実
―Guitarists―
小川幸慈、尾崎世界観