シドのギタリスト=Shinjiに、バンド結成から20年間で使用した機材の変遷を聞かせてもらった。ヘヴィなディストーション、グラッシーなクランチ、ブルージィなオーバードライブ……と、楽曲が求める音像を巧みに作り上げる彼の使用ギター、ペダル、アンプは、どのような試行錯誤を経て変化していったのか。その道のりを語ってもらおう。
取材/文=村上孝之 写真=今元秀明
必要最低限のギターしか持っていないんです
今回はShinjiさんの使用機材の変遷について聞かせて下さい。シドを始められた頃は、どんなギターを使っていたのでしょう?
サポート・メンバーだった時は、シェクターのSTタイプを使っていました。当時からSIAM SHADEが大好きだったので、DAITAさんのギターに似た作りのモデルを使っていましたね。
そのギターのあとからフェルナンデス製のギターを使うようになったのでしょうか?
いえ、次はフェンダーのストラトキャスターを買いました。シドは楽曲のテイストが幅広いので、ストラトキャスターみたいに音色が色々選べるギターじゃないと追いつかないと思って手に入れたんです。今は楽屋で弾く用のギターになっていますね。
ほかにも色々なギターを使ってきましたよね。
LPタイプやセミアコ、あと、フェルナンデスの草野(豊)さんが作ってくれた、Vタイプもありましたね。あの頃は自分が弾いたことのないギターを弾いてみたくて。
Shinjiさんはシングルコイルとハムバッカーの両方を楽曲に合わせて使い分けていますが、どちらが好みなのでしょう?
難しいですね。やっぱり曲によるんですよ。“こういう曲だったら絶対にハムバッカーでしょ!”みたいな曲もあるし、逆にシングルコイル一択な曲もあるし。だから、どっちも好きなんでしょうね。
それぞれの良さを活かすのが好きで、なおかつ両方の音を楽しみながら弾けるんですね。では、今使っているギターについても話を聞かせて下さい。
ここ最近はミニマリストになりつつあって、本当に必要最低限のギターしか持っていないんです。もう使わないであろうギターは見切ったんです。
すべてのギターを自分の家に置いているわけじゃなくて、倉庫にずっと眠っているものもあって。そうするとスペースも圧迫されるし、弾いてもらえないギターもかわいそうじゃないですか。ギターって誰かに弾いてもらったほうが絶対良いし。なので、“いつ使えるかな?”ってギターは全部手放して、本当に愛しているギターだけを持っています。
ちなみに、どんなギターを残されたのでしょう?
フェンダー、エキゾチック、それとサーですね。最近買ったものばかりです。フェンダーはストラトキャスターとジャズマスター。ジャズマスターはfuzzy knotで必要になって買ったギターですけど、シドが今やっているツアーで演奏するかもしれない曲でも使うと思います。控え曲なので実際にはまだ使えていませんが。
ジャズマスターの使いどころは?
今は“ジャガジャガ系”のサウンドが必要な曲で使っています。ジャズマスターは良いギターですけど、音がかなり個性的だから、ずっとそれでいくのは難しいんですよね。シドでは、エキゾチックのSTタイプをメインで使っています。
フェンダー系のギターが好みに合うんですね。
どちらかというとそうですね。でも、レス・ポールも好きだし、ES-335も好きです。ほかにも良いものと出会えたらもちろん欲しくなると思いますよ。
ゲインを上げ過ぎないように気をつけていますね
続いて、使用アンプの変遷についても聞かせて下さい。
シドで最初のライブをした時は、会場に置いてあるJC-120を使ったと思います。そのあと自分で買ったのが、ボグナーのEcstasyだったかな。あと、レコーディングの時に借りたフェンダーのBassmanが衝撃的に音が良くて、すぐに買い取りました(笑)。それは、いまだにトラブル時のサブ・アンプとしてセットしていますね。
良いアンプですよね。
凄く良いです。で、ボグナーのあとにディバイデッド・バイ・13を買って、アンプを2台体制にした時期もありましたね。ただ、種類の違うアンプを切り替えると、音色のコントロールが難しくて。
それで、“やっぱり1台にしたいな”と思ってトゥー・ロック(Classic Reverb Signature)を買ったんです。クリーン・トーンが抜群に良いし、歪みエフェクターでのドライブ・サウンドも申し分なくて。でも、やっぱりアンプのドライブ感が欲しくて、最近はマーシャルを色々探っています。
お気に入りの歪みエフェクターは?
いっぱい試しましたけど、今はフリードマンのBE-OD(オーバードライブ)です。2022年はめちゃくちゃエフェクターを買いまくったんですよ。YouTubeで気になるものを見つけてから、実際に楽器屋で弾かせてもらって気に入ったら買ってくるという。
でも、いざ現場で使ったら思ったよりもバンドに馴染まなかったり、テクニシャンが“うーん……”みたいになることがあったりするんです。それで、結局フリードマンにたどり着きました。
BE-ODのゲインはどれくらいで使っていますか?
それほど上げていないです。あまり上げ過ぎると、音が引っ込んでしまうところがあるので。深く歪んでいたほうが弾きやすかったりもしますが、そこは上げ過ぎないように気をつけていますね。
歪ませ過ぎは要注意ですね。では、ディレイなどの空間系エフェクトについても教えて下さい。
空間系は、マルチ・エフェクターが担っていますね。僕は、ボードをあまり大きくしたくなくて。例えば、空間系を全部コンパクト・エフェクターで揃えると数が多くなるじゃないですか。音楽性が一貫していて、セトリごとに雰囲気が変わらないバンドだったらそのスタイルでもいけると思いますけど、それこそシドは曲ごとにディレイ・タイムが変わったりするので、マルチじゃないと無理なんです。
だから現場ではHX Effectsを使って、家用にはHX Stompを使っています。
やっぱり楽しめている人のほうが輝けると思うんです
さて、今回はShinjiさんのシドでのこれまでの足跡について話してもらいましたが、現在、ギターを弾くうえで大事にされていることや、こだわっていることは?
良いパフォーマンスをしながらも良いプレイをする、っていうところですね。そのために普段の練習を怠らず、一度も手元を見なくても1曲を弾けるような状態まで持っていって、そういう状態で1曲目から良い演奏をする。
そうすると勝手に動きがついてくるんです。無理やりパフォーマンスを頑張ろうとする時は、大体演奏が良くなかったりするし、かといって動かずに演奏に徹してしまうのは練習不足だと思うんですよね。
それに、ずっとツアーを回っているとステージの緊張感がなくなってしまう時があって。それにはリラックスしてプレイできるという面もあるけど、やっぱりロック・ギターは“ピリッ”とした危機感みたいなものがあったほうがいいと思うんですよ。
ただ、ガチガチに緊張した状態は絶対にダメなので、ライブをする時は適度な緊張感を持つということも毎回意識しています。
あと、僕はエリック・クラプトンが語った“普段は自分のことを一番ヘタクソだと思え。でもステージに上がったら一番自分が上手いと思え”という言葉を、いつもライブの前に思い浮かべています。そうやって自分を奮い立たせていますね。やっぱり自信なさげにステージに立ってもダメだから。
ライブの話が出ましたが、20周年を締めくくる日本武道館公演が2023年12月27日に行なわれることがアナウンスされました。
武道館はまだかなり先のことなので、今は何も考えていないです。目の前のツアーが始まったばかりだし、それの反省もしながらほかの曲を書いたりもしているんですよ。未来というのは今の積み重ねじゃないですか。だから、目の前のことを1つずつこなしていくことが、武道館の成功につながるんじゃないかなと思います。
ありがとうございます! それでは、ギタリストとして今後の展望を聞かせて下さい。
バンドというのは1人でやっていることではないから、色々あるわけですよ。揉めることもあるし、足並みが揃わない時とかもある。そういう中で、いかに楽しめるかが重要で。やっぱり楽しめている人のほうが輝けると思うんです。
あと、心の底から楽しいと思えるライブをしたいし、“音楽は楽しくないとダメ”だとも思っていて。せっかく自分が好きで始めたことが仕事になっているわけだから、楽しくなくなったらやめたほうがいいと思っているんです。だから、楽しむためにはどうしたらいいかということを考えながら音楽を続けていくと思います。
LIVE INFORMATION
■SID 20th Anniversary Premium FANMEETING TOUR 2023
2023年7月23日(日)/Zepp DiverCity TOKYO
2023年7月30日(日)/Zepp Nagoya
2023年8月12日(土)/Zepp Fukuoka
2023年8月13日(日)/Zepp Osaka Bayside
2023年8月26日(土)/Zepp Haneda(TOKYO)
2023年9月2日(土)/SENDAI GIGS
2023年9月18日(月)/Zepp Sapporo
■SID 20th Anniversary GRAND FINAL 「いちばん好きな場所」
2023年12月27日(水)/日本武道館
※情報は記事公開時のものです。最新のチケット情報や公演詳細はSID 20th Anniversary Special Siteをチェック!
SID 20th Anniversary Special Site
https://www.sid20th.jp/