2023年4月の来日公演でエリック・クラプトンが使用したアンプは、フェンダーの’57 Bandmasterだ。そしてこれは、ダンブル・アンプで有名な故ハワード・ダンブル氏が、エリック・クラプトンのためにモディファイを施したものだった。
取材・文=菊池真平 撮影=星野俊 協力=ダン・ディアンリー(https://www.dandguitars.com/)、前むつみ
Fender
’57 Bandmaster
ダンブルがクラプトンのためにモディファイ!
今回の武道館公演でエリック・クラプトンが使用したアンプは、フェンダーからリイシューされたツイードの’57 Bandmaster。ステージ上には2台がセットされていたが、1台はサブと思われる。
Bandmasterは1953年に登場したアンプだ。当初は15インチ・スピーカー1発のみで、出力は15W前後という仕様だった。その後、回路などが見直され、クラプトンが使うモデルの元となった1957年製では、5E7と呼ばれる6L6GCのパワー管を2本使ったプッシュ・プル回路で、10インチのジェンセン製P10Rスピーカーを3基搭載、約28Wの出力になった。
10インチ3発という珍しいスピーカー・レイアウトのため、音のレスポンスに優れ、独特な音抜けと音圧がある。そこがクラプトンのお気に入りなのかもしれない。余談ではあるが、当時BandmasterはSuperやProといったモデルよりも高価だったこともあり、あまり人気は高くなかったようだ。
そんな57年製の仕様を忠実に再現したアンプが、今回使われたフェンダーのカスタム・シリーズの’57 Bandmaster。回路はもちろん5E7で、当時と同じようにハンド・ワイヤードで組まれたこだわりのモデルだ。
スピーカーには、ジェンセンと共同開発したというアルニコ・マグネットの10インチ・スピーカー、P10R-Fが3発搭載されている。4インプットの2ch仕様で、コントロールはマイク・ボリューム、インスト・ボリューム、トレブル、ベース、プレゼンス。リバーブは搭載されていない。
2台の’57 Bandmasterは、エリックがアレクサンダー・(ハワード・)ダンブル(注釈:伝説のアンプ・ビルダーであり、ダンブル・アンプの製作者)の家を訪ねたあと、彼がエリックのためにモディファイしたアンプです。トレブルは会場の音によって、少しだけ上げ下げすることがありますね。
と、ダンが教えてくれたとおり、なんとダンブルがモディファイしたアンプのようだ。たしかに歪み系のエフェクターを使わず、あれだけ太く艶やかで伸びのあるトーンを出力するには、ミッド・ブースト回路だけでは難しいだろう。
ちなみにアンプのセッティングを確認すると、インスト・ボリューム、ベース、プレゼンスは7、トレブルのみ8にセッティングしてあった。シールドは、インスト・チャンネルの1に差し込まれていた。
また残念ながら、現行モデルとして’57 Bandmasterはラインナップしておらず(編注:2023年7月現在)、手に入れるためには中古を探すしかない。
アコースティック・ギター・マガジン2023年9月号 SUMMER ISSUE Vol.97
2023年7月27日発売の『アコースティック・ギター・マガジン2023年9月号 SUMMER ISSUE Vol.97』では、2023年4月来日公演でエリック・クラプトンが使用したアコースティック・ギター&関連機材を掲載!
アコースティック・ギター・マガジン2023年6月号 SPRING ISSUE Vol.96
『アコースティック・ギター・マガジン2023年6月号 SPRING ISSUE Vol.96』の特集は、エリック・クラプトン日本武道館公演100回記念の特別企画“エリック・クラプトンとアコースティック・ブルースのならず者”。
DanD Guitars公式HP
https://www.dandguitars.com/
エリック・クラプトンのギター・テックを務めるダン・ディアンリーは、ギター・ルシアーとしても活躍している。彼が手掛けるダンDギターズ(DanD Guitars)の12弦モデルは、クラプトンもライブ作品『Lady In The Balcony: Lockdown Sessions』で使用した。