『サヘル』
ボンビーノ
アフリカ・トゥアレグ族のギター・ヒーロー 放浪の友としてギターがあったその音
80年ニジェール生まれ、サハラ砂漠西部に住む遊牧民=トゥアレグ族を両親に持つギタリストの新作。
トゥアレグと言えばティナリウェンやグループ・イネラネ、エムドゥ・モクターなど、時にサイケに渦巻くギター・シーンが熱い印象である。このボンビーノはというと、18年作『デラン』がグラミー賞ノミネートまで進んだトゥアレグ・ギター・ヒーローの1人だ。
本作もバンドで作り出す土のグルーヴ感が圧巻だが、①や③の冒頭でチョロチョロっと弾く準備運動的フレーズからリフへと展開し、一挙曲の中心へと押し上げるそのさまからは、まずギター1本ありきなのだという矜持も見て取れるかのよう。
幼い頃、社会的事情により逃亡生活を送っていた中でギターと出会ったらしいが、その放浪の友としてギターが良き遊び相手だったに違いない。だからこそ、ギターと遊んでいるという愉しさ、優しさが溢れる⑧のようなフレーズが生まれるのだ、と想像してみる。
(辻昌志)
【参加クレジット】
ボンビーノ(vo, g)、カウィサン・モハメド(g)、ジャクレイブ・ディア(b)、コリー・ウィルヘルム(d)、モハメド・アラキ(k)、他
【曲目】
①Tazidert
②Alwane
③Aitma
④Si Chilan
⑤Ayo Nigla
⑥Darfuq
⑦Ayes Sachen
⑧Nik Sant Awanha
⑨Itisahid
⑩Mes Amis