舞台版“ぼっち・ざ・ろっく!”特別対談 Kuboty&後藤ひとり役・守乃まもが語るリアル結束バンド誕生まで。 舞台版“ぼっち・ざ・ろっく!”特別対談 Kuboty&後藤ひとり役・守乃まもが語るリアル結束バンド誕生まで。

舞台版“ぼっち・ざ・ろっく!”特別対談 
Kuboty&後藤ひとり役・守乃まもが語るリアル結束バンド誕生まで。

TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の世界を生歌唱&生演奏で再現する舞台公演、“LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」”が、2023年8月11日(金)〜20日(日)まで新宿THEATER MILANO-Zaにて開催された。その再現性の高さは公演期間中にSNSで話題となるほどで、編集部が観覧した17日(水)も満員御礼。ここでは、後藤ひとり役を見事に演じた守乃まも(g)と、本舞台の“音楽コーディネート”を担当したKubotyの対談をお届けしよう。

取材:錦織文子 撮影:星野俊

ギターとの付き合い方がもうリアルぼっちだな!──Kuboty

Kuboty
Kuboty

ステージを観ましたが、今回が初舞台と思えないほど“ぼっちちゃん(後藤ひとり)”を再現していました。

守乃 あの、なんて言うか、そのままの自分で挑んだところはあったんですけど、自分のキャラがぼっちちゃんと近かったので、それほど気張らずにできたと思います。私はステージで前に出て目立って弾くタイプではないので、ぼっちちゃんの下を向いて弾く姿勢も自然体でできて、逆に助かりました。“ありがとう、ぼっちちゃん”的な気持ちです。

(笑)。結束バンドは難易度の高いフレーズも多いですが、見事な演奏でした。

守乃 いや、それはもうKubotyさんのおかげです……。たくさん教えてもらってなんとかできるようになりました。

今回の舞台ではKubotyさんが“音楽コーディネート”として演奏指導から全体の機材選びやサウンドメイクを担当したんですよね。

Kuboty 演奏に関することは全部を担当しましたね。自分のほかの活動もやりながらだったので、もう昼夜血眼になって取り組んでいました(笑)。結束バンドのサウンドはハードだし、俺がいつも出している音にも近い部分があるというか。だから声をかけられたところはあると思います。

本日はギター練習や本番でのプレイについて聞いていこうと思いますが、まずは守乃さんのギター経験について教えて下さい。もともとギターは弾いていたんですよね?

守乃 あっ、はい。でも激しいギター・ソロや速弾きのようなリード・プレイを全然やったことがなくて。それまではギター・ボーカルをやっていました。

ギターを始めたのはいつですか?

守乃 初めてギターを触ったのは小学3年生の時なんですけど、当時は難しく思えてしまって諦めて。それから小学6年生になって、エレキ・ギターをやり始めました。

Kuboty 小6からだったんだ? 一緒!

守乃 えっ、そうなんですか。光栄です!

エレキ・ギターを始めた頃にコピーしていた楽曲は?

守乃 私のお兄ちゃんがTHE BLUE HEARTSの『SUPER BEST』(95年)のCDをたまたまレンタルしていて、それを聴いたのがきっかけで大好きになったんです。それでTHE BLUE HEARTSのバンド・スコアを買ってひたすらコピーしていました。毎日学校から帰ったら練習して、起きたら練習して、一番弾き込んでいた時期でしたね。

Kuboty ギターとの付き合い方がもうリアルぼっちだな!

守乃 はい。フフッ(笑)。

当時使っていたギターは?

守乃 初めて弾いたのは、お父さんが御茶ノ水の楽器店で買ってくれた中古のギターです。それからお金を貯めて、高校生の頃にビリー・ジョー・アームストロング(グリーン・デイ)さんのシグネチャー・モデルの白いレス・ポール・ジュニアを買って、しばらくそれをずっと弾いていました。

レス・ポール・カスタムを弾くのは今回が初めてでしたか?

 そうですね。ジュニアもけっこう重かったんですけど、カスタムはそれ以上に重くて。人生で一番重いギター、凄く新鮮でした。

“バンドの中で安心して弾くってこんな感じなんだ”と思いました。──守乃

守乃まも
守乃まも

舞台では、結束バンドの楽曲4曲(「ギターと孤独と蒼い惑星」/「青春コンプレックス」/「あのバンド」/「Distortion!!」)と、路上ライブ・バージョンの「あのバンド」、そして弾き語りで披露した「押し入れより愛をこめて」など多くの楽曲を披露していました。楽曲を覚える段階で苦労した部分も多かったのでは?

Kuboty けっこう早い段階で、譜面上のプレイはひと通りさらってもらったんで、そこからクオリティを突き詰めていきましたね。

実際にバンドで合わせてみた時の第一印象はどうでしたか?

守乃 えっと、そこは自然にできたと思っています。大森(未来衣/vo, g ※喜多郁代役)さんはめっちゃ上手くなってたし、自分もどんどんバンドに馴染んでいって。何よりドラムが凄く安定しているので、私は自分のプレイに集中できてて。“バンドの中で安心して弾くってこんな感じなんだ”と思いました。

Kuboty 正直、これらの曲をバンドで合わせるのも相当回数を重ねないといけないだろうなと思っていたんですけど、一番最初に合わせた時に想像以上にバッチリで。

守乃 そうなんです! 自分で弾いていても、“あれ、いけるかも?”ってびっくりして(笑)。練習した甲斐がありました。

Kuboty リード・ギターというだけあって曲の中でバシバシ目立ってくるポイントが多かったけど、本当によくやってくれました。実は舞台のギター練習期間は1ヵ月しかなかったんですよ(笑)。

1ヵ月間ですか!?

Kuboty その期間でできることを取捨選択して、“これさえやっておけば全体的なプレイの質は上がるな”という基礎練をとにかく頑張ってもらいました。

そのような中で、テクニックを新たに習得するのは大変だったのではないでしょうか?

守乃 そうですね。ぼっちちゃんのテクニックはどれも難しいものばかりだったので……。

Kuboty でも、タッピングは好きだったんでしょ?

守乃 あっ、タッピングは好きでした! たまに自分で曲を作ることがあるんですけど、ポップな感じで取り入れたりしていたので。とにかくそのほかのテクニックは、Kubotyさんに教えてもらって、小学校以来にめちゃくちゃ練習しました。

Kuboty とにかく日々基礎練だったよね。一発LINEを送るたびに、“トリルと基礎練ね”って伝えていました(笑)。

守乃 トリル、頑張りました!

後藤ひとりスタイルには不可欠なポイントですね(笑)。そのほかに守乃さんの中で印象に残っている練習メニューはありますか?

守乃 あの……“ドゥドゥドゥ〜ドゥドゥドゥ〜”っていう。

Kuboty ジョー・サトリアーニがよくやるボックス・ダイアグラム(斜めの押弦移動の練習)だね。

守乃 それです!

口ギターだけでわかるんですね(笑)。

Kuboty 左手と右手のタイミングが一致するように、押弦移動の練習は重点的にやっていきましたからね。

守乃 あと、2本ずつ順番に左手の指を鍛える練習も頑張りました。

Kuboty 運指をスムーズにするために、左手の2本の指の組み合わせを変えながら押弦したり離したりする練習だね。

左手の動きをスムーズにするのがテーマだったんですね。

Kuboty 左手の基礎筋力が上がれば、わかりやすくプレイが良くなるはずなんですよ。もちろんセッションしている中で上手くなってくると思うんですけど、基礎がある分だけその先まで飛距離が出るんで。それはまもちゃんが証明してくれたと思います。

「あのバンド」は一番楽しく弾けた気がします。──守乃

冒頭の登場シーン(注:押し入れの中でハードなギター・プレイをする後藤ひとりが初登場する場面)は、アニメ作中のプレイに負けず劣らずタッピングなども取り入れた速弾きを披露していましたよね。

Kuboty 冒頭のソロは、お客さんに対してまもちゃんの第一印象を決定づけるところだったからこだわったよね。

守乃 はい。ただ、今まで独学でやってきたので変な癖が身についてしまっていて、そこを乗り越えるのに苦労しました。ピッキングもオルタネイトでやったことなくて、すべてダウンで弾いてきたんです。弾く時にアップだとフレーズが追いつかなくて、めちゃくちゃ難しかったです。

Kuboty わかるよ〜。俺も小6から独学だったもん。結束バンドは速いフレーズが盛りだくさんなので、オルタネートの練習は日々取り組んでいったよね。

劇中でのライブ演奏では速弾きのフレーズが盛りだくさんですよね。どのような練習を経て、上達したのでしょうか?

Kuboty もうめちゃ研究したよな!

守乃 はい! 全曲今まで私が弾いたことないような曲だったので……。特に「青春コンプレックス」は、めっちゃフレーズにバリエーションがあって、転調もたくさんあるからかなり鍛えられて(笑)。でも、「あのバンド」はくり返したりすることが多いので、一番楽しく弾けた気がします。

Kuboty もちろんどの曲も色は違うんですけど、 チョーキングや、ハンマリングの3連フレーズ、裏打ちっぽいリフなど、ギター・プレイの内容的にはわりと共通する点が多いんですよ。そういう意味で言うと、1曲を通して基礎ができれば、ほかの曲でも応用でいけるみたいなところはあって、けっこういいクオリティまで上達できたんじゃないかと思ってます。今日(2023年8月17日公演)の「青春コンプレックス」のソロも良かったよ!

守乃 あっ、ありがとうございます。

アンコールの「Distortion!!」では、飛び跳ねながらプレイするなどの余裕も見えました。

守乃 サビはノリノリでできるんですけど、ギターはソロがいかつかったり、けっこう難しい場面もあったので、実は緊張していました。

Kuboty そうなんだ? でもリラックスして弾いているように見えてたよ。

守乃 みんな楽しそうだから、私も楽しい感じにしたほうがいいかなって思って、精一杯飛び跳ねてました。あ、正直に話します……。

Kuboty (笑)。本当にどの曲も何かと出てくるトリルとプリングがエグかったもんね〜。でもだいぶ上達したから、「Distrotion!!」の最後に出てくるプリングもめっちゃキレイに鳴ってた。

守乃 あっ、あそこは得意です(笑)。とにかくくり返しで身につけていきました。

今後の音楽人生に十分すぎるほどのテクニックは習得したと思う。──Kuboty

左からKuboty、守乃まも。
左からKuboty、守乃まも。

改めて、今回の公演を振り返ってみてどうですか?

守乃 Kubotyさんのおかげで本当にたくさんの技を習得できました。本当にありがとうございます。

Kuboty 多分今後の音楽人生に十分すぎるほどのテクニックは習得したと思う(笑)。

守乃 そうですね。自分が好きな曲でも、難しいギターが入ってると“できないな”って決めつけて逃げてきたんですけど、自信がついたというか……あの時諦めた曲も、今ならできるのかもって思うことが増えました。

“LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」”は今後の新しい動きを予定していたりするんですか?

守乃 あっ、知らないです……。

Kuboty (笑)。いち個人の活動としてはどうなの?

気になります!

守乃 えっ、私ですか……? あの、実は自己顕示欲強めなので、アングラなバンドでギター・ボーカルをやってみたいです。バンドで上手く人と関われるかはわかりませんけど、これだけギターを頑張ったので、作曲したりしてカッコいいプレイも取り入れてみたり、楽しい音楽人生が生まれたらいいなと思います。

Kuboty まもちゃんは自分で打ち込みもできるんでしょ? 最近はそうやって1人で作っちゃえるもんね。打ち込みのトラック1個にギター・ボーカルを載せる人もたくさんいるから、もしかしたらそういうのも合ってるかもね。

守乃 あっ、はい。1人で作曲して、1人で生きていきたいと思います。

Kuboty ぼっちやってるね!

最後に、これまで守乃さんの頑張りを間近で見てきたKubotyさんからひと言お願いします!

Kuboty たったの1ヵ月でここまで仕上げてくる集中力が本当素晴らしいですよね。“守乃まも”の1人のギタリストとしてより強固な存在感が確立できたんじゃないかと思います。今後の活躍も期待してしますよ!

守乃 あっ、ありがとうございます! これからも頑張ります。

ギター・マガジン2023年10月号
『布袋寅泰 GUITARYTHM』

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