コロナ禍以降で初となるB’z LIVE-GYM “Pleasure”は、35周年イヤーという節目での開催となった。そのツアーから、2023年9月3日(日)に日産スタジアムで行なわれたステージに潜入し、機材撮影に成功。今回は松本孝弘がステージに用意した11本のギターを紹介しよう。
取材・文:関口真一郎 機材撮影:星野俊
※本記事はギター・マガジン2023年11月号に掲載された「Axis’ Gear」を一部抜粋/再編集したものです。
Gibson Tak Matsumoto Double Cutaway Custom Prototype (#2007-4)
長年愛用のシグネチャー・モデル
メイン・ギターはギブソンのシグネチャー・モデル。ボディはメイプル・トップ&マホガニー・バック、ネックは1ピースのマホガニーで、指板はエボニー。レス・ポール・カスタムなどと同様のスペックが採用されている。「RUN」、「ultra soul」と「BAD COMMUNICATION」のメドレー、「Pleasure 2023 ~人生の快楽~」などで使用された。ちなみにすべてのエレキ・ギターの使用弦はSITのPower Wound Light(.010~.046)だ。
1955 Gibson Les Paul Gold Top(#5-9937)
“オックスブラッド”仕様に改造
『Blow By Blow』のジャケットでジェフ・ベックが弾いているレス・ポール(通称“オックスブラッド”)が、50年代前半製のP-90/バー・ブリッジ仕様のものを2ハムに改造したものと知った松本は、自分も同じことをしてみたいと思い立つ。そこで2019年に手に入れたのが、こちらの55年製レス・ポール・ゴールドトップで、“オックスブラッド”のように2ハムに改造。オープニング・ナンバーの「LOVE PHANTOM」で使用された。
1991 Gibson Les Paul Gold Top 1957 Reissue (#1-5283)
90年代に活躍した信頼の1本
90年代のB’zにおいてライブ/レコーディングのメインとして活躍した91年製のゴールドトップ。2ハム、チューン・オー・マティック・ブリッジ、ゴールドトップと、57年モデルをリイシューしたレス・ポールだ。かなり現場で酷使されてきたために、98年にはピックアップをTAKバーストバッカーに交換しているほか、全面的にリフィニッシュされている。「LADY NAVIGATION」と「YES YES YES」で登場した。
Gibson Les Paul Custom -清正-
フル・メインテナンスで第一線に
日本のハードロック・バンドの草分け、“紫”のギタリストである比嘉清正から90年代後半に譲り受けた70年代製のギブソン・レス・ポール・カスタム。比嘉氏の了承のもと“清正”と命名。長年表舞台に登場していなかったが、2019年に修理して使ってみたところ音が気に入ったため、ライブでも使われることに。「太陽のKomachi Angel」、そして「BIG」の後半とその後のジャム・シーンなどで使用された。
Gibson Les Paul Standard -Bernini-
“Bernini”と名付けられた新顔
近年、松本がイタリアで購入したというレス・ポール・スタンダード。本人によって“Bernini”(ベルニーニ)という愛称が付けられ、その名をあしらったオリジナルのトラスロッド・カバーが付いている。フレットを打ち換え、ジェフ・ベックの“オックスブラッド”レス・ポールの赤黒い色をイメージしたカラーに塗り直し、ピックアップはToneismのカスタム・ワウンド・モデルに交換している。「Calling」で使用。
Gibson Les Paul Studio -Fireball-
インパクトのある炎のグラフィック
2曲目の「FIREBALL」で登場したギブソン・レス・ポール・スタジオ。97年のPleasure“FIREBALL”ドーム・ツアーのイメージ・ギターとなったモデルで、炎のグラフィックには車の塗装技術が応用されている。PUセレクターの横には“Tak”の文字をデザイン。外観の状態は良さそうだが、長年使っていなかったため、今回のツアー用にしっかりと調整。フレットを打ち直し、ナットも交換。ピックアップもToneismに換えている。
Gibson Custom Flying V Korina 50th Anniversary 2008 (#8-8163)
半音下げの50周年フライングV
本編のラスト・ナンバー「兵、走る」で登場したフライングV。こちらは2008年にギブソン・カスタムがフライングV発売50周年を記念して復刻した全世界100本の限定モデル。大ぶりなヘッド、ボディ・エンド部のV字型金属プレート、弦裏通し構造、ボディ&ネックのコリーナ材など、58年のオリジナル・デザインを踏襲している。今回のセットリストでは「兵、走る」のみ半音下げチューニングで、本器も半音下げになっている。
Fender Custom Shop 1957 Telecaster Heavy Relic Firemist Red TELEHUM (#CZ560818)
2ハムに改造したテレキャスター
フェンダーカスタムショップのマスタービルダー、デイル・ウィルソンが製作した57年型テレキャスターを2ハムバッカーのいわゆる“テレギブ”仕様に改造したもの。最近、購入して改造されたもので、ピックアップは“Bernini”同様に、Toneismのカスタム・ワウンド・モデルを搭載。リア・ピックアップの位置に合わせてブリッジもカットしている。ツアー・タイトルにもなった新曲「STARS」で使われた。
Yamaha MG-M III Custom Prototype 1993
長年のファンには懐かしい1本
「JAP THE RIPPER」で登場したヤマハ松本孝弘モデルのカスタム・ギター。MG-MはヤマハMGシリーズをもとにした松本のシグネチャー・モデルで、いくつかのバージョンが89年末~96年に販売されていた。本器はサスティナーをはずしてハムバッカーに交換。ナットはFU-TONE Titanium R3 Locking Nutに交換されている。ボディの穴はサスティナー用のスイッチが付いていた跡だ。
Ernie Ball Music Man EVH Model PINK #86255
活動初期に愛用していたEVH
「ミエナイチカラ ~INVISIBLE ONE〜」のジャケットにも登場しているEVH。90年代後半に所在がわからなくなっていたが、2018年に開催された展示に伴う公式からの情報提供の呼びかけで見つかったという逸話がある。ライブ序盤の「恋心 (KOI-GOKORO)」で使用。MG-M同様、ナットはFU-TONE Titanium R2 Locking Nutに交換。ダイレクト・マウントPUならではのソリッドな音を会場に響かせていた。
K.Yairi by Ken B’z XXX Anniversary Special 2019
指板のインレイ・ワークが圧巻!
B’zの30周年記念に製作されたK.ヤイリのハンドメイド・モデル。稲葉とアコースティック・デュオ形式で演奏した「BIG」の前半パートで用いられた。とにかく目を惹くのは、桜の木の間を鳳凰が舞う様子を描いた見事な指板のインレイ・ワーク。ブリッジの高音弦側には“玲”の文字が入っている。なお松本の使用アコギ弦はSITの.011~.050(P1150/フォスファー・ブロンズ)とのこと。
PICK
ピックは今回のツアーのためにデザインされたオリジナル・モデル。ラメの入った鮮やかな色合いで、中央部にロゴが入っている。マイク・スタンドのほか、各ギターの高音弦側ボディ・サイドにも複数枚貼られていた。
ギター・マガジン2023年11月号
『追悼 ロビー・ロバートソン 1943-2023』
本記事はギター・マガジン2023年11月号にも掲載されています。誌面ではさらに、ライブ・レポートも掲載! 表紙&特集は8月9日にこの世を去った、ロビー・ロバートソン。