『スピーク・トゥ・ミー』
ジュリアン・ラージ
現代のヴァーチュオーゾが新境地を見せる最新作
ジョン・ヘンリーをプロデューサーに起用した今作は、新境地に踏み込むフレッシュな仕上がり。
これまでエレキとアコギはアルバム中に同居しない傾向だったが、今回はアコギ率が高めながらエレキ曲も少々というバランスで、管楽器や鍵盤類の入った曲もあり、いつものトリオ編成に華やかな色彩感を加えた音像が印象的だ。
アパラチアン・フォークやポップなテイスト、砂漠っぽいロッキンなリフもの、デレク・ベイリー~オーネット・コールマン~チャールズ・ロイドを横断するフリーなソロやアンサンブルまで、リズムとハーモニーを自在に操りつつ、底なしの深みをたたえて心の最深部まで刺激してくる。
自然な弦の響きが微細に聴き取れる録音も素晴らしく、完全ソロ・ギターの「マイセルフ・アラウンド・ユー」ではかすかに聴こえる息遣いの中から、気ままに旅するように音楽に向かうジュリアンのスピリットが伝わってくるようだ。
またしても開かれる音楽の新たな可能性。傑作!
(青山陽一)
【曲目】
①ヒムナル
②ノーザン・シャッフル
③オミッション
④セレナーデ
⑤マイセルフ・アラウンド・ユー
⑥サウス・マウンテン
⑦スピーク・トゥ・ミー
⑧トゥー・アンド・ワン
⑨ヴァニシング・ポインツ
⑩ティブロン
⑪アズ・イット・ワー
⑫76
⑬ナッシング・ハプンズ・ヒア