若い世代で人気急上昇中の3ピース・ロック・バンド、This is LAST。彼らの新作『HOME』には、ポップなメロディを支えるアンサンブルの中に隠されたメタル的な要素や、多彩なソロ・パートなど、ギタリストがニヤリとするエッセンスが多く盛り込まれている。ギター・ボーカルの菊池陽報に、アレンジの考え方や、ギター・ソロのこだわりなどを聞いていこう。
インタビュー=福崎敬太 写真=日吉”JP”純平
ソロを作る時は、ちょっとカーク・ハメットっぽくなる
インタビュー初登場ですので、まずはギターを始めた経緯から教えて下さい。
高校生の頃に実写映画の『BECK』(2010年/原作:ハロルド作石)がやっていたんですよね。もともと音楽は好きでしたけど、自分で演奏するっていう考えはなかったんです。でも、その映画を観て“ギター、自分でもやれるんだな”って知って、家の近くのリサイクル・ショップで6千円ぐらいの初心者用セットを買ったんです。
その初めて買ったSTタイプが最悪の状態で、最初は“こんな楽器をみんな弾いてんのか”って思いながら始めましたね。
当時はどういった練習をしていましたか?
最初は教則本のトレーニング・フレーズとかです。『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ』(小社刊)もやるようになっていって。
当時から速弾きやメタルのスタイルが好きだったんですね。
徐々に好きになっていったんです。まずはELLEGARDENやONE OK ROCK、coldrainにハマって、どんどんサウンドの重厚感を欲するようになって洋楽にも広がっていった感じでしたね。
そこからどのようにバンドを始めることに?
僕は軽音部とかに入っていなかったので、周りで楽器をやっている人たちや軽音部の人たちに声を掛けて、ちょっと遊んだりしていた感じですね。ただ、その頃からオリジナルは作っていて。
それはメタルやハードロック?
いえ、当時はELLEGARDENとかが好きだったので、そういう楽曲を作っていました。そこからヘヴィなものにハマって、ハードコアやヘヴィメタルをやって今にいたります。
今の自身のギター・スタイルに影響を与えたギタリストは?
ジェイムズ・ヘットフィールドですね。ソロを作る時は、ちょっとカーク・ハメットっぽくなる。だから、僕がソロを作ると、J-POPでは使えない感じになってしまうこともあって。“若い子は聴かないよ”っていうフレーズがよく出ちゃう(笑)。
なので、僕らが今いるフィールドで輝いてる人たちを勉強して、自分の中に落とし込む、楽曲と合うものを作るように心掛けていますね。
でも、ライブを観ると「もういいの?」のヘヴィな刻みの時がめちゃくちゃ楽しそうですよね(笑)。
あそこらへんが大好きなので(笑)。僕が大好きで普段聴く趣味の音楽と、自分のバンドのために聴く音楽は、分けて考えている感じはありますね。
ライブのSEもメタルが多くて、始まる前から笑いました(笑)。
この間、札幌でのライブ映像を観ていたら、始まる直前でSEの音量が上がっていく時に流れていたのがスリップノットだったんですよ(笑)。スリップノットの音がどんどんデカくなっていって僕らのSE流れるっていう。めっちゃ面白かった(笑)。
(笑)。This is LASTの楽曲にメタルの影響はありますか?
実はけっこうありますね。歪んでるギターが大好きですし、僕が好きな重厚感のあるサウンドに寄っていくので。ただ、歪ませてもちゃんと3ピースで成り立つように機材には凄く気を使っています。
あとはドラムのフレーズにメタルの影響が出ているかもしれないですね。てる(鹿又輝直/d)は最初からヘヴィな音楽が好きで、“ツイン・ペダルがあって当たり前”みたいな状況で。「艷麗」の最後にツイン・ペダルをドドンって踏んでたり、そういうフレーズをちょっと入れてるんですよ。
僕らが内側に持っているものを、隠し味的に“バレないぐらいに入れようぜ”みたいな。そういう部分はわかってもらえればなと思います。
最初はSTタイプだったということですが、そこからはどういったギターを弾いてきましたか?
ずっとレス・ポールでした。STタイプの次は、初心者用のLPタイプを3万円ぐらいで買って。そこからもうちょっと良いのが欲しいと思って、3本目にチェリー・サンバーストのエピフォンのレス・ポールを買いました。で、This is LASTを始めるってなった時に、また同じ色のレス・ポールで、ギブソンを買ったんですよね。
頭の中に流れている響きにどれだけ近づけられるか
新作『HOME』について聞かせて下さい。全体的なギター・アレンジで考えていたことはありますか?
僕がいつも考えているのは、“シンプルに”っていうことで。パソコンの前で曲を作りながら、付点8分のディレイを掛けたり、ルーパーを取り入れたり、そういう見せ方も色々考えたりもするんです。でも最終的には、フレーズとしても楽曲としてもシンプルなものになるんですよね。
このジャンルはやっぱり歌が凄く重要なので、そこに寄り添いながら自分たちの個性を出しつつ、いかにシンプルに仕上げるかを今作のコンセプトにはしてます。
曲名に“retake”とつけて再録された6曲は、そういったコンセプトで新たに演奏されたものだと思います。菊池さん自身は、それぞれのギター・パートはどのように変化したと感じますか?
以前までの音って、良い意味でも悪い意味でも平面的だったんです。今鳴らしているThis is LASTの音は、ギター1本がしっかり鳴っている状態でも歌を邪魔せずに、立体的なカッコ良い音になっていると思うんですよ。
そのサウンドで音源として残せたらなっていうところもありましたね。ライブに近い音作りをしているので、そこは感じてもらえると思います。
3ピース・バンドなので、コードやアルペジオがメインになることが多いと思いますが、ボイシングはどのように考えていますか?
センスですね。メロディを生むことも、それに対する副旋律を考えることも、センスが良いので(笑)。僕の頭の中に流れている響きにどれだけ近づいて、なおかつギターとして良いものにできるかが僕の課題。
「カスミソウ」だったらブラスやオルガンなども入ってきますが、上モノのアレンジはどのように進めているのでしょうか?
例えば3ピース・バンドだったら、3つの楽器でのマックスとミニマムを決めるんです。どういう風に描いていったら、一番聴かせたいところで盛り上げられるか?っていうところを、まず考えるんですね。
「カスミソウ」はAメロをノリノリにしたくてコードを鳴らしている。でも、Bメロはそれなりに音は必要だけど、ギター・コードをフルに鳴らしたら、サビで“やっときた感”がなくなるなって思ったんですよ。なのでそこは3、4弦しか鳴ってないし、そんなに前に出てこないんです。
ただ、3、4弦の響きって、ちゃんとハーモニーで綺麗にできる。あとは、サビに持っていくワクワク感が出るボイシングを探しながら、っていうのはよくやりますね。3、4弦の2音だけのハーモニーでサビまでつなぐ手法はけっこうやるかもしれないですね。
しっかりと緩急をつけるという感じですね。
そうですね。今の日本のトップチャートを聴いていると、やっぱり緩急がしっかりあるし、サビがサビっていう感じがある。そこはしっかり気をつけています。
ソロで勝負するギター・ロックでも結果を出していきたい
This is LASTの楽曲はブライトなアコギで情景を演出するのも常套句な印象があります。アコギを入れる時に考えていることやこだわりはありますか?
もともとは、僕が弾き語りで作るから、イメージの中にアコギがあって入れていたんですよね。
ただ最近は、“ハイハットっているか?”っていう気持ちがちょっとあって。スネアとキックだけでビートは感じられてるわけで、“ハイハットってそこまで必要ないよな”って考えるようになったんです。で、アコギがその役割を担うんですよね。例えば「アウトフォーカス」はフォーキーではあるんですけど、そういう役割が大きくて。
そこがハイハットじゃいけない理由は?
ドラムの金物系って、ぶわぁ〜っと広がっちゃって、若い子がiPhoneの小さいスピーカーとかで聴くと潰れちゃうんですよ。それに対して、アコギをどう弾くかで表現することで、めちゃめちゃクリアに聴こえてくれる。そういう部分は研究しながらやっています。
今作はギター・ソロが豊富なのも嬉しいところです。「ラブソングにも時代がある」は起承転結のあるソロですが、どのように作りましたか?
コードに対してどう当てにいくか、どういうメロディが刺さるか、どういうメロディが流行ってるかを意識して作りましたね。そもそも今、ギター・ソロ自体が流行っていない。それでも弾きたかったんです。ただ、やるんだったら刺さるフレーズを弾こうと。
「拝啓、最低な君へ」のソロは始まりにオアシスっぽい感じがありつつ、途中のピッキング・ハーモニクスやブリッジミュートのところにはメタル・キッズ感が入ってくる感じですね。
まさに同じことを現場にも話してました。最初のフレーズは、もう作れば作るほどオアシスになっていって。この曲のソロは最後のほうに入れているので、今の女子高生とかはここまでは聴かないだろうってことで、好きにやろうと(笑)。
当日は、“ちょっとオアシスしすぎない?”みたいな話も出ましたけど、“いや僕が好きだから、良いでしょ”みたいな感じで全部やりました。
ソロを作る時に“どういうメロディが流行っているか”を意識するというのは、人気の曲のメロディを分析しているということですか? それはどのようなことを行なっているんでしょうか?
まずは、どのキーか。トップチャートの中でキーを洗い出していくと、系統が似ていたりするんですよね。あとは、どういうコードを使っているのか。最近で言うと、CからE7にいってAmにいく流れの楽曲と、メジャー・セブンス系の楽曲が多い。自分たちの音楽にそういうものをどう反映できるかを考えたりしますね。
あとは、コードに対してどういう音を当てているのかを研究するって感じですかね。メロディだけを覚えるよりも、コードに対して何を当ててるかを考えたほうが、何をしているのかがわかるんですよ。
菊池さんにとってギター・ソロとはどういう存在ですか?
大好きな時間です。単純にギターが好きだからソロが好きですし。それに、僕が聴いてきた音楽はギターがカッコ良いものばかりで。それこそメタリカには10分くらいある曲もあって、そのフレーズが全部カッコ良い。
もちろん今はギター・ソロの時代じゃないのはわかっているけど、僕が最後結果を出して、そこでもちゃんとギター・ソロ弾いているっていうのが理想なんですよ。
それこそ「ラブソングにも時代がある」は基本的に3ピース編成のアレンジでギター・ソロも入っていて、凄く勝負したなと思っている楽曲ですね。
最後に、ボーカル・ギターではなくギタリストとして、今後の展望を聞かせて下さい。
ギターが目立つ楽曲がどんどん少なくなってきているとは凄く感じるんです。だからこそ、ソロで勝負するギター・ロックでも結果を出していきたい。それこそ今みんなが流行ってる曲のメロディを鼻歌で口ずさむように、ギターのメロディをみんなが歌うようにすることができたら凄いよなって思うんです。
This is LAST one man live tour “HOME”
- 2024年2月23日(金)/北海道・札幌PENNY LANE 24
17:00開場/18:00開演 -SOLD OUT- - 2024年3月3日(日)/福岡・DRUM LOGOS
16:00開場/17:00開演 -SOLD OUT- - 2024年3月30日(土)/大阪・Zepp Namba(OSAKA)
17:00開場/18:00開演 -SOLD OUT- - 2024年3月31日(日)/愛知・Zepp Nagoya
16:30開場/17:30開演 -SOLD OUT- - 2024年4月21日(日)/東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
16:30開場/17:30開演 -SOLD OUT-
This is LAST one man live tour 2024 Autumn
- 2024年9月1日(日)/千葉・LOOK
17:00開場/17:30開演 - 2024年9月4日(水)/埼玉・HEAVEN’S ROCK SAITAMA SHINTOSHIN
18:30開場/19:00開演 - 2024年9月5日(木)/神奈川・F.A.D YOKOHAMA
18:30開場/19:00開演 - 2024年9月8日(日)/茨城・水戸LIGHT HOUSE
17:00開場/17:30開演 - 2024年9月14日(土)/岩手・盛岡the five Morioka
17:30開場/18:00開演 - 2024年9月15日(日)/宮城・仙台Rensa
16:30開場/17:30開演 - 2024年9月19日(木)/三重・四日市CLUB ROOTS
18:30開場/19:00開演 - 2024年9月21日(土)/京都・KYOTO MUSE
17:30開場/18:00開演 - 2024年9月22日(日)/奈良・NEVERLAND
17:30開場/18:00開演 - 2024年9月25日(水)/長野・CLUB JUNK BOX
18:30開場/19:00開演 - 2024年9月28日(土)/鹿児島・CAPARVO HALL
17:30開場/18:00開演 - 2024年09月29日(日)/熊本・B.9 V1
17:00開場/17:30開演 - 2024年10月3日(木)/山口・周南RISING HALL
18:30開場/19:00開演 - 2024年10月5日(土)/福岡・DRUM LOGOS
17:00開場/18:00開演 - 2024年10月6日(日)/広島・HIROSHIMA CLUB QUATTRO
16:30開場/17:30開演 - 2024年10月8日(火)/愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO
18:00開場/19:00開演 - 2024年10月12日(土)/北海道・札幌PENNY LANE 24
16:00開場/17:00開演 - 2024年10月16日(水)/兵庫・神戸VARIT.
18:30開場/19:00開演 - 2024年10月18日(金)/石川・金沢AZ
18:30開場/19:00開演 - 2024年10月19日(土)/新潟・LOTS
17:00開場/18:00開演 - 2024年10月24日(木)/鳥取・米子AZTiC laughs
18:30開場/19:00開演 - 2024年10月26日(土)/愛媛・松山WStudioRED
17:30開場/18:00開演 - 2024年10月27日(日)/香川・高松DIME
17:00開場/17:30開演 - 2024年11月2日(土)/静岡・浜松窓枠
17:30開場/18:00開演 - 2024年11月3日(日)/愛知・DIAMOND HALL
17:00開場/18:00開演 - 2024年11月9日(土)/大阪・Namba Hatch
17:00開場/18:00開演 - 2024年11月21日(木)/神奈川・KT Zepp Yokohama
18:00開場/19:00開演
※情報は記事公開時のものです。最新のチケット情報や詳細は公式HPをチェック!
This is LAST公式HP:https://thisislast.jp/
作品データ
『HOME』
This is LAST
SDR/ZXRC-2107/2024年3月27日リリース
―Track List―
- カスミソウ
- 恋愛凡人は踊らない(retake)
- アウトフォーカス
- Any
- ラブソングにも時代がある
- バランス(retake)
- # 情とは
- 殺文句(retake)
- もういいの?
- おやすみ
- 結び(retake)
- 言葉にして
- 病んでるくらいがちょうどいいね(retake)
- 君と生きる
- 拝啓、最低な君へ(retake)
- ヨーソロー
―Guitarist―
菊池陽報