フェイザーを使ったカッティングも一世を風靡した。より効果的にフェイザー・サウンドを操るために、その仕組みも知っておこう。TAKINGの直伝フレーズも掲載。
文:鈴木誠 採譜:PURETONE MUSIC
*本記事は、ギター・マガジン2024年8月号の「カッティングに最適なエフェクターを探せ!」を再編集したものです。
一世を風靡した魅惑のうねり系サウンド
フェイズ=位相(音の波形の周期がスタートする地点)、シフト=ズラす、からフェイズ・シフターと呼ばれる。起源はハモンド・オルガンの“レスリー”に代表されるロータリー・スピーカー。高音用ホーンと低音用ローターを回転させ、ドップラー効果による音の揺れを与える物理的な仕組みで、それに似たサウンドを小さな電気回路で再現することを目指した。
フェイザーの有名なモデルを思いつくままに挙げると、MXRのPhase 90、Electro-HarmonixのSmall Stone、MusitronicsのMu-Tron Bi-Phaseなどがある。ギターのカッティングのみならずエレクトリック・ピアノに組み合わせるのも王道で、80年代のフュージョンなどスタジオ・ミュージシャン系の演奏で多く聴かれる。また、カッティング時ではないが、初期ヴァン・ヘイレンのギター・サウンドにおけるMXR Phase 90の存在は有名。近年では凜として時雨のTKが、曲中のフィルイン的に(短いと1小節だけ)フェイザーを踏み、いわゆる“ジェット・サウンド”のような効果を与えるシーンも見られた。
基本的な仕組みは、ギターからの入力信号をフェイズ・シフト回路に通し、位相をズラしたエフェクト音を作り出し、ドライ音と混ぜて出力する。この位相をズラすフェイズ・シフト回路を一定のサイクルで揺らすことにより、出力時にドライ音と混ざって周期的なうねりを持つサウンドが生まれる。“Stage”(段数とも)というのは、このフェイズ・シフト回路をいくつ通るか示したもの。そのため4段より8段のほうが複雑なサウンドになる。
また、フェイズ・シフト回路の前後にはフィードバック回路がつながっており、位相をずらしたエフェクト音の一部を再びフェイズ・シフト回路に戻すことができる。“Feedback”といった名前のノブがあれば、この割合を調節できるわけだ。例えばMXR Phase 90は“Speed”の1ノブのみなので、うねりのスピード以外はすべてプリセットとなる。
基本パラメーター
Depth [デプス]
エフェクト音が揺れる幅の大きさを決める。うねりの深さに影響。
Speed [スピード]
エフェクト音の周期のスピードを決める。Rateとも。
Feedback [フィードバック]
うねりの強さに影響。上げるほどクセの強いサウンドに。
Stage [ステージ]åß
位相をずらす回路を通るステージ数(段数)を選ぶ。4段より8段のほうがエグくかかる。
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ギター・マガジン2024年8月号
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