ギタリストなら絶対に聴くべき戦前ブルースの名盤40(2/4) ギタリストなら絶対に聴くべき戦前ブルースの名盤40(2/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき
戦前ブルースの名盤40(2/4)

戦前ブルースの名盤を紹介する本企画。第2回目の今回はブラインド・レモン・ジェファーソンらのテキサス勢が登場します。テキサス・ブルースに興味を持った方は本サイトの特集『テキサス・ブルース超入門』もぜひご覧ください。

文・選盤=小出斉 協力=七年書店

サム・コリンズ
『Complete Recorded Works In Chronological Order』

●ギタリスト:サム・コリンズ 

切なく歌うスライド・ギター

サム・コリンズは、1887年生まれのブルース第一世代。27~31年に残した録音はバラッド、スピリチュアルズ、ミンストレル・ソングなど多岐に渡る。 “クライング”という芸名もついているように、スライド・ギターをゆったり、しかし切なく歌わせる、ミシシッピとテキサスのスタイルが混淆したような味わいがユニークだ。

ミシシッピ・ジョン・ハート
『Mississippi John Hurt』

●ギタリスト:ミシシッピ・ジョン・ハート、ハンボーン・ウィリー・ニューバーン、他

スリー・フィンガーの名手

スリー・フィンガーピッキングの名手、ミシシッピ・ジョン・ハートは戦後に再発見され、絶大な人気を得た。本作は、より力強い戦前録音全13曲を収録。ハートの他に、ハンボーン・ウィリー・ニューバーンとリチャード・ブラウンらの楽曲も収録。特にニューバーンのボトルネック・チューン、「Roll And Tumble Blues」は聴き逃し禁止。

V.A.
『Backwoods Blues』

●ギタリスト:ボー・ウィーヴィル・ジャクソン、キング・ソロモン・ヒル、他

カントリー・ブルース、謎の4人

1920年代の、初期カントリー・ブルースの謎の4人をまとめたコンピレーション。野放図にスライド・ギターで暴れるボー・ウィーヴィル・ジャクソン、ナイフ・スライドにファルセット・ボイスで緊迫感漂うキング・ソロモン・ヒルが特に聴きもの。レーン・ハーディンの「Hard Times Blues」はエリック・クラプトンがカバーしている。

ブラインド・レモン・ジェファーソン
『The Best Of Blind Lemon Jefferson』

●ギタリスト:ブラインド・レモン・ジェファーソン

初期カントリー・ブルースのスター

1925~29年に100曲ほどを録音、レコードを通じ初期カントリー・ブルースのスターとなった、テキサスのブラインド・レモン。ギターは歌に呼応してしばしば拍数が半端になるが、さまざまなテクニックを駆使した変幻自在なプレイは、これが歌いながら弾くことかと驚愕するほど。「Matchbox Blues」は巡り巡ってビートルズまで。

テキサス・アレクサンダー
『Levee Camp Moan Blues』

●ギタリスト:リトル・ハット・ジョーンズ、ロニー・ジョンソン

戦前テキサスの巨人シンガー

強烈なモーンで知られる、ブラインド・レモン・ジェファーソンと並ぶ戦前テキサスの巨人。本人は楽器を弾かず、しばしばブルース進行からも逸脱したプリミティブなスタイルを展開した。それに応える、テキサスの名ピッカー、リトル・ハット・ジョーンズやロニー・ジョンソンの当意即妙なギターも聴きどころ。

レッドベリー
『Midnight Special』

●ギタリスト:レッドベリー

12弦ギターを豪快にストラム

殺人罪で服役中、アラン・ロマックスのフィールド・レコーディングで知られることとなったレッドベリー。12弦ギターを豪快にストラムし、歌い放ち、フォーク・ファンからも絶大な人気を博した。本作は国会図書館用の録音で、代表作「Irene(おやすみアイリーン)」や、CCRでも有名な「Midnight Special」などが聴ける。

ブラック・エイス&オスカー・ウッズ
『Texas Slide Guitars』

●ギタリスト:ブラック・エイス、オスカー・ウッズ

ラップ・スティールの師弟コンビ

オスカー“バディ”ウッズと、その弟子筋のブラック・エイスの録音をまとめたもの。ともにラップ・スタイルのスライド・ギタリスト。歌もギターも野太いエイスに対し、ウッズは歌もギターもより繊細。スライド・ワークもテクニカルで「Don’t Sell It Don’t Give It Away」など、曲によっては見事なスウィング感も発揮する。

ブラインド・ウィリー・ジョンソン
『The Complete Recordings』

●ギタリスト:ブラインド・ウィリー・ジョンスン

ギター弾き語りの伝道師

ジョンソンは、ギター・エヴァンジェリスト=ギター弾き語りの伝道師であり、ブルースマンとは一線を画す存在だが、音楽的にはブルースと近い。ライ・クーダーのカバーでも有名な、「Dark Was The Night, Cold Was The Ground」の、激しくも繊細、幽玄な味わいのあるスライド・ギターの肉声感覚たるや。人類の文化遺産。

エド・ベル
『Mamlish Blues』

●ギタリスト:エド・ベル

表題曲のユニークなアルペジオ

アラバマのエド・ベルの全録音集。別人と思われていたベアフット・ビル、スルーフット・ジョーも現在はベルと同一人物と認定され、まとめられている。タイトル曲など、アルペジオを用いたギター・パターンがユニークで、その昔キャンド・ヒートがリフに拝借していたものだ。ハイ・ピッチで叫ぶような歌はプリミティヴな魅力。

スリーピー・ジョン・エスティス
『I Ain’t Gonna Be Worried No More』

●ギタリスト:スリーピー・ジョン・エスティス、チャーリー・ピケット

再発見ブルースマンの戦前録音

60年代に極貧状態で再発見され録音した『スリーピー・ジョン・エスティスの伝説』が“悲痛なブルース”として有名。戦前録音はより力強いが、泣きの入った唱法はこの頃から。本人のギターはシンプルなコード・ストローク中心で、チャーリー・ピケットのギター、ヤンク・レイチェルのマンドリンなどが絡み、音に膨らみを出す。

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*本記事はギター・マガジン2021年3月号にも掲載しています。

『ギター・マガジン2021年3月号』
特集:ギター・ヒーローが愛した、アコースティックの世界。

クラプトン、デュアン、フルシアンテ。キースにピートにジョン・メイヤー。Jマスキスにガルシアにハウ。コイツら全員、アコギもヤバい!!!