マーティンD-45は“アコースティック・ギターの最高峰”と言っても差し支えないだろう。豪華絢爛な仕様と抜群のサウンドは、ギタリストにとってのステータスでもあるのだ。世界中のトップ・プロがこぞって自らの膝のうえに乗せたがる“ギター界の宝”についてご紹介しよう。
文=久保木靖 Photo by Gijsbert Hanekroot/Redferns、Nigel Osbourne/Redferns/Getty Images
マーティン・ギターの最高峰モデル、D-45
見た目の豪華さもさることながら、そのきらびやかな音色からも、すべてのアコースティック・ギタリストの憧れの的と言っても過言ではないのがD-45だ。
カントリー・シンガーのジーン・オートリーからのオーダーで1933年から製造が始まり、1938年には14フレット・ジョイントが導入されてレギュラー・ラインナップへ。何と言っても、ボディやネック周りのアバロン貝インレイやポジション・マークのヘキサゴン・インレイ、ゴールド・ペグといった豪華な装飾に目が奪われる。ヘッドのヴァーティカル・ロゴは、スタイル45の象徴だ。
トップ=スプルース、サイド&バック=ローズウッド、フィンガーボード=エボニーといった基本仕様はD-28同様だが、グレードの高い材と豊富なインレイとの相乗効果から生み出される音色は唯一無二。弾き方次第では重厚にもなるし、また、倍音をたっぷり含んだトーンはあらゆるギタリストを魅了してやまない。
ちなみに、D-45は1942年に一度生産がストップし、それ以前にはわずか91本しか制作されておらず、それらは今では“プリ・ウォー(戦前)・モデル”として超高額査定をされる幻のギターとなっている。1968年に生産再開。現行品の価格は100万円前後だ。
豊かな鳴りと豪華な装いが似合うギタリストたち
D-45がポピュラーな存在となったのは、ニール・ヤング、デヴィッド・クロスビー、スティーヴン・スティルスらによるCSN&Yのインパクトが大きい。特に変則チューニングを駆使するニールにとって、豊かな響きを持つドレッドノートはまたとない代物であった。ちなみに、ニールとスティーヴンはエレクトリックではグレッチの“ホワイト・ファルコン”を愛用していたことから、豪華志向だったのかもしれない。
そのほか、スライドや変則チューニングを駆使するフィンガー・ピッカーのライ・クーダーや、ジャズ/フュージョン系ではガボール・ザボといった個性派がメイン・ギターとして活用。デラニー&ボニー&フレンズに参加していた時期のクラプトンの愛器としても知られている。そして、“現代3大ギタリスト”のひとり、ジョン・メイヤーも愛用し、マーティンは彼のカスタム・モデル、D-45 John Mayerを製品化した。
『ギター・マガジン2021年2月号』
特集:ギター・ヒーローが愛した、アコースティックの世界。
クラプトン、デュアン、フルシアンテ。キースにピートにジョン・メイヤー。Jマスキスにガルシアにハウ。コイツら全員、アコギもヤバい!!!