ギブソン・アコースティックの王道、J-45 歌い手を刺激する名器 ギブソン・アコースティックの王道、J-45 歌い手を刺激する名器

ギブソン・アコースティックの王道、J-45 歌い手を刺激する名器

100年以上の歴史を持つギブソンが1942年から今までずっと生産し続けてきたアコースティック・ギターのフラッグシップ・モデルがこのJ-45だ。老若男女問わず世界中で愛され、“スタンダード”として君臨し続ける歴史的モデルの魅力に迫っていこう。ちなみに、上写真はエルヴィス・プレスリー。

文=久保木靖 Photo by Nigel Osbourne/Redferns/Getty Images


マーティンに対抗してフラットトップ市場に本格参入

創業当初はマンドリンやバンジョー、その後アコースティック・ギターの製作に乗り出すものの、主流はあくまでアーチトップ・モデルという期間が続いたギブソン。ジャズを中心とした“室内楽”の場合はそれで充分だったが、次第にカントリーやブルースといったアメリカ音楽の発展とともに音量の問題が起こった。

気付けば、そうした音楽シーンに適応したマーティンのフラットトップ・ギターが世を席巻。焦ったギブソンもフラットトップ・モデルの製作に本腰を入れることに。そうして、大型ボディの1934年の“Jumbo(のちのJシリーズ)”や1938年の“SJ-200”といった、のちにギブソン・アコースティックを代表することとなる名器が生み出された。

アコースティック・ギターの中心座標、J-45

1946〜1949年頃の1本と思われる、ギブソンJ-45
ベリー・ブリッジ仕様で“Only a Gibson Is Good Enough”というヘッドのバナーがないため、1946〜1949年頃の1本と思われる。

今回紹介するJ-45は、マーティンのD(ドレッドノート)シリーズに対抗すべく、1934年から製造が開始されたモデル。ギブソンの定番にとどまらず、マーティンのD-28に並ぶ、まさにアコースティック・ギターの中心座標である。エレクトリックに喩えれば、レス・ポールといったところか。

“J”は“Jumbo”の略で、“45”は発売当初の価格が45ドルだったことに由来。16インチのボディ幅を持ち、ボディのショルダー部(ネック・ジョイント部の両側)が丸みを帯びたラウンド・ショルダー型と呼ばれる形状が特徴だ。材はトップ=スプルース、サイド&バック=マホガニーというギブソン王道の組み合わせ。そして、ネック=マホガニー、フィンガーボード=ローズウッドである。フィニッシュはサンバーストが基本。

コードを鳴らした時に派手に広がるのではなく、音の塊としてバンと前に出るような印象で、ひと言で言うなら“ロックなギター”。そのバランスの良いサウンドはボーカルとの相性が良く、弾き語り系アーティストからも絶大な信頼を得ている。現行品の価格は30万円前後。ビンテージ・モデルは年式や状態によって異なるが、1950年代以前のものは100万円を超えることも。ちなみに、J-50はJ-45のナチュラル・フィニッシュ版である(違いはカラーのみ)。

“弾きながら歌う”が似合うJ-45ユーザーたち

J-45の歯切れの良い音とシンプルなコード・ストロークが見事にハマっているのが、ブルース・スプリングスティーンやノエル・ギャラガーといったロックなギタリスト兼シンガー。一方で、音の立ち上がりの良さと程良いサステインを生かし、繊細なフィンガー・ピッキングを行なうボブ・ディラン(J-50も)やドノヴァン、ジェームス・テイラー(J-50)のようなフォーク系ギタリストにも好まれた。

さらに、ロックンロール世代のバディ・ホリー、テキサス・ブルースのライトニン・ホプキンス(J-50)、ほかにも国内外のロック・シンガー/シンガーソングライターなどが大勢使用している。

『ギター・マガジン2021年2月号』
特集:ギター・ヒーローが愛した、アコースティックの世界。

クラプトン、デュアン、フルシアンテ。キースにピートにジョン・メイヤー。Jマスキスにガルシアにハウ。コイツら全員、アコギもヤバい!!!