最大級のボディ・サイズとアーティスティックなマスターシュ・ブリッジなど、その見た目のインパクトもあるのか、エルヴィス・プレスリーやボブ・ディランなど、スターが手にした名器がJ-200。ロックをアピールする重要なシーンでお目見えする映える1本は、どういうモデルなのだろうか?
文=久保木靖 Photo by Paramount Pictures/Sunset Boulevard/Corbis、Nigel Osbourne/Redfern/Getty Images
“キング・オブ・フラットトップ”、J-200
エルヴィス・プレスリーやボブ・ディランといったレジェンドから愛されたことからも、“キング・オブ・フラットトップ”と称されるのがJ-200だ。
カントリー・シンガー兼俳優のレイ・ウィットリーからの働きかけで製作がスタートし、1938年に“Super Jumbo”としてカタログに登場した。そのモデル名の頭文字と200ドルという販売価格から、翌年には“SJ-200”と名称が変更される。“J-200”という表記となったのは1955年以降だ。
基本的な構造は、トップ=スプルース、サイド&バック=メイプル(戦前のモデルはローズウッド)、ネック=メイプル、フィンガーボード=ローズウッドとスタンダードであるが、目を引く派手なルックスは唯一無二。例えば、花柄のピックガードやマスターシュ・ブリッジ(口髭のような形状)、クラウン・インレイのポジション・マークなどは“王”の象徴だ。
その名に相応しい17インチという大型ボディ・サイズから放たれるのは、どれだけシャウトしてもその存在が脅かされることのないラウドなサウンド。そのような力強いストロークでこそポテンシャルが活かされる一方、フィンガー・ピッキングでも音の粒立ちがはっきりするのは、メイプルの為せる効果だろう。
ギブソン・アコースティックの最上位モデルであるJ-200は価格も高い。1960年代以前のビンテージは100万円以上、中には数百万円するものも存在する。現行品は40〜50万円といったところだ。
その音色がすぐに思い浮かぶアコギ名曲
J-200を一躍有名にしたのは、自らが主演する映画で使用したエルヴィス・プレスリー。フィンガーボードに名前をインレイしたモデルは有名だ(ちなみにJ-200発売当初、50ドルで指板に名前を入れるオプションがあった)。
そのほか、以下に挙げる曲名を見れば、J-200がいかにロックの王道を歩んできたかがおわかりいただけると思う。ザ・フー(ピート・タウンゼント)の「Pinball Wizard」、ザ・ビートルズ(ジョージ・ハリソン)の「Here Comes The Sun」、「While My Guitar Gently Weeps」、レッド・ツェペリン(ジミー・ペイジ)の「Your Time is Gonna Come」、「Black Mountain Side」などなど。
また、J-200の愛用者として知られるボブ・ディランやロン・ウッドに関しては、彼らのシグネチャー・モデルもリリースされている。
『ギター・マガジン2021年2月号』
特集:ギター・ヒーローが愛した、アコースティックの世界。
クラプトン、デュアン、フルシアンテ。キースにピートにジョン・メイヤー。Jマスキスにガルシアにハウ。コイツら全員、アコギもヤバい!!!