今や多くのギタリストたちが愛用するようになったアンプ・シミュレーター。このページでは、フェンダーのTone Master Proを、ギタリストの小川翔による試奏レビューとともに紹介する。
文＝鈴木誠 製品撮影＝星野俊
＊本記事は、ギター・マガジン2025年9月号の特集記事『自宅からステージまで1台で完結！ アンプ・シミュレーターのススメ』の一部を抜粋し、再構成したものです。
Fender
Tone Master Pro
忠実にモデリングされた“本家”フェンダー・サウンド
ここがポイント！
- 本家ならではのリアルなフェンダー・サウンド。
- EVHブランドの公認アンプ・モデリングを内蔵。
- 直感的な操作が可能なカラー・タッチパネル。
- 100種類以上のアンプ&エフェクト・モデリングと数千種類のIRデータを搭載。
老舗ギター／アンプ・メーカーのフェンダーが送り出す、アンプ・モデラーとマルチ・エフェクターを統合したフロア型プロセッサー。同社のデジタル・アンプであるTone Masterシリーズの音質を継承しながら、タッチパネルを用いた直感的な操作性が大きな特徴となっている。
搭載するアンプとエフェクターのサウンドは、Tone Masterアンプの全モデルや、シミュレーターとしては初の公式ライセンスとなるEVH 5150 Ⅲ Stealthなどを含む100種類以上で、すべての音色が独自のTone Masterモデリング・テクノロジーによってオリジナルと聴き分けがつかないレベルで再現。加えて、ファームウェア・アップデートで新しいアンプやキャビネット・モデルの追加も行なわれている。
また、デスクトップ用ソフトおよびアプリの“Tone Master Pro Control”からクラウド・データベースにある数千種類のプリセットを取り込み、500種類の保存領域を持つユーザー・プリセットに配置することもできる。キャビネットとマイクの特性を再現するIRデータは6,000種類を内蔵。サードパーティのIRデータの読み込みにも対応する。
本体には7インチのタッチ・スクリーンを搭載。10個のフット・スイッチは、それぞれがロータリー式のノブとしても動作。スイッチごとに色分けやエフェクト名などの表示も行なえる。画面を直接タッチ操作するスタイルに加えて、フット・スイッチをノブとして扱うことで、アンプやエフェクターのノブを回しながら音作りをするような直感的な操作にも対応する。
楽器用の入力のほかに、ボーカル・マイク用のXLR入力も装備。お気に入りのエフェクターをつなげる4つのエフェクト・ループは、相性に敏感なファズ・ペダルの接続にも対応。
加えて60秒のステレオ・ルーパー機能、スマートフォンで再生したオーディオを受け取れるBluetooth接続、自宅練習向けのヘッドフォン出力など、ステージから自宅まで活躍する多機能性を満載したモデルとなっている。
OGAWA’s IMPRESSION
フェンダー・アンプが好きな人には
ピッタリな機種だと思いますね。
フェンダー・アンプ好きの小川さんですが、第一印象はどうですか？
まずは僕にとっての基準であるデラックス・リバーブのモデルを選んでみましたが……良いですね！ ボリュームが6のところからクランチしてくる感じが実機とまったく同じで、凄くリアルです。しかも、色付けを感じない音色なのが好ましいです。ちゃんとボリューム4まではクリーンなのがまさにホンモノという感覚です。
さすがフェンダー製品なのでフェンダー系の音が充実していて、限定で出たブロンドのデラリバとか、スピーカー違いのリミテッド・モデルなんかもありますね。凄いな。よくあるフェンダー・アンプのモデリングは、少し歪んだ音がベストになるように狙って再現されている印象を持っています。でも、このTone Master Proのサウンドは“このクランチ・サウンドが欲しいんでしょ？”みたいな狙いが感じられないのが好ましいです。僕はスーパー・クリーンなデラリバの音をペダル・プラットフォームにしたいので、その使い方にピッタリです。
実機の挙動に非常に近いということですね。
そうですね。僕も昔から色々とデジタル機材を渡り歩いてきましたけど、やはり当時はキレイなクリーンがどうしても出なかった。僕は単体では味気ないぐらいのクリーン・トーンが欲しいので、悩ましいところでした。でも、これならかなりイケる感じです。
価格なりの気合いを感じるというか、実戦で使えるものにしたという印象があります。これだけのサウンド・クオリティがあるなら、アンプ・モデリングだけに特化したコンパクト・タイプがあったら嬉しいかもしれませんね。そうしたら僕は複数のボード用に3台買います（笑）。
フェンダー系以外の音はどうですか？
VOX系やMesa/BoogieのMark I系とか、マーシャル系も充実してます。でもやっぱり、フェンダー・アンプの音が抜群に良いですね。これでマーシャル系の音が一番良くても違うと思うので（笑）、フェンダー好きの僕にはありがたいのです。Princeton、デラリバ、Super Reverb、Twin Reverbといったモデルごとの違いはもちろん、ブラック・フェイスやシルバー・フェイスといった違いもちゃんと出てますからね。
ペダルも色々あって、例えばTS10系のエフェクトが入っていたりもするので、これ1台でスティーヴィー・レイ・ヴォーンやジョン・メイヤーのサウンドも作れます。しかも、実機のペダルにはないクリーン・ブレンドのコントロールも付いているし、ローが太くなるスイッチもある。
ほかにはAnalog.Manらしきオーバードライブもあったり、Klon Centaurと思われる“Mythic”は、金と銀まで用意されている（笑）。僕も最近“ケンタ”づいてて、ペダル・ボードに本物を入れているのでこれは嬉しいです。
フェンダー傘下のブランドであるEVH系も充実して、なんとこれらは世界初の公式認定モデリングだそうです。
EVHのアンプはチャンネルごとに細かく音を選べますね。僕は昔の5150しか弾いたことないんですが、最新の5150Ⅲはあのイナタイ感じからモダンになった感じがします。粘りもあって、かなり良い音だと思います。ハイゲイン・サウンドが欲しい時はマーシャル系を選ぶよりEVHを選ぶのが早道かもしれません。すぐに良い感じのドライブ・サウンドを作ることができました。
操作感はいかがでしょうか？
フット・スイッチがノブにもなっていて、それ自体は他ブランドでも採用している例がありますが、ノブを回すのに連動して画面上のアンプもノブが回るから面白いです。直感的でもありますよね。
キャビネットを選ぶ画面では、マイクをどのぐらいの距離や位置から狙うかも変えられます。無段階ではないのですが、設定の迷いが少なくなるのでむしろ利点だと思います。
タッチパネルのレスポンスもスムーズで、想像以上に良いですね。ノブと音色変化の関係性にも納得感があります。フット・スイッチのノブを回す感触も良いし、フット・スイッチをパッチ切り換えに使うか、ストンプ・モードで使うかのモード切り換えもわかりやすい。マニュアルを見なくてもサクサク操作できています。自分自身がそうなのですが、普段からフェンダー・アンプを使っていて、それをデジタルの利便性や安心感と共にツアーに持ち出したい人にはピッタリな機種だと思いますね。
客席側に実機アンプのようなパイロット・ランプも付いていたりして、見た目もカッコいいです。さすがフェンダーですね！
Fender
Tone Master Pro
【スペック】
●アンプ&エフェクト・モデリング：100種類以上
●ユーザー・プリセット：500種類
●外形寸法：37.1（W）×26.16（D）×9.64（H）cm
●重量：約4kg
●専用アプリケーション：Tone Master Pro Control
【価格】
266,200円（税込）
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL：0120-1946-60 http://fender.co.jp
