今や多くのギタリストたちが愛用するようになったアンプ・シミュレーター。このページでは、Neural DSPのQuad Cortexを、ギタリストの小川翔による試奏レビューとともに紹介する。
文=鈴木誠 製品撮影=星野俊
*本記事は、ギター・マガジン2025年9月号の特集記事『自宅からステージまで1台で完結! アンプ・シミュレーターのススメ』の一部を抜粋し、再構成したものです。
Neural DSP
Quad Cortex
AI技術を活用したリアルなモデリング・サウンド


ここがポイント!
- プラグインの評価も高いNeural DSPによる実機型アンプ・モデラー。
- タッチパネルのスムーズかつ直感的な操作感。
- 実機アンプやエフェクターの音色をキャプチャーできるNeural Capture機能。
- A4ほどのサイズ感と1.95kgという軽量さ。
プラグイン・ソフトのブランドとしてスタートしたフィンランドのNeural DSP。AI技術をアンプ・シミュレーションに活用することを目指し、数年の研究開発を経て2021年に登場したのが“世界最強のフロアボード型アンプモデラー”との呼び声も高いQuad Cortexだ。そのクオリティと実用性の高さから、ギタリストのみならずベーシストからの信頼も厚い。
“クアッド”の名前を体現するように、強力なDSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)を4基搭載。アナログ入出力も4系統を備え、タッチ操作やドラッグ&ドロップの直感的なコントロールにより、複雑なシグナル・チェインを素早く構築できる。
搭載する音色のアルゴリズムは、アンプが90種類以上、エフェクトが100種類以上、音響特性(IR)が1000以上。これらはOSのアップデートで追加されるほか、プリセットの管理やバックアップが可能なデータ・クラウド・アプリの“Cortex Cloud”を使用することで、さらに世界中のユーザーがキャプチャーしたサウンドを手に入れられる仕組みとなっている。
Neural DSPというブランド名にも反映されている、ニューラル・ネットワーク(人間の脳の神経細胞を模した機械学習モデル)を用いたNeural Capture機能も大きな特徴だ。人間の耳と同じように音を聴くAIとして訓練されたことで、実機のアンプやエフェクターの音響特性をより正確に学習・再現できるという。
アノダイズド処理を施され、スタイリッシュなデザインに仕上げられたアルミ製の筐体には、操作レスポンスに優れる7インチのタッチ式ディスプレイを搭載。本体サイズはA4用紙程度に収まり、重量は1.95kg。フラッグシップ級のフロア型モデラーらしく豊富な入出力端子や拡張性に優れる装備を持ちながら、可搬性に優れる点も強みだ。
OGAWA’s IMPRESSION
本当にこれ1台でなんでもできるし、
無限の可能性がありますよね。

Quad Cortexは近年、アンプ・モデラー/シミュレーターのジャンルにおいて大きな存在感を放っているモデルですが、使ったことはありますか?
僕自身はないんですが、周りにはかなりユーザーが多いですね。ベーシストの愛用者も多いイメージがあります。使っている人と同じ現場になってイヤモニで聴いた時、凄く良い音だなあという印象でした。
パラレル出力が使えたり、ルーティングの自由度の高さも人気の理由かなと思ってます。ギターで言えば、3台のディレイを並列でかけたりもできるわけですもんね。僕の現状のシステムでは、歪みにコンパクトのアナログ・ペダルを使いつつ、ライン出力をしたいので別モデルのアンプ・シミュレーターを使っているんですが、それは“Quad Cortexのようになんでもできる機種でシミュレーターだけ使うのはもったいないな”というのが理由の1つでもあるんです(笑)。実際、現場でQuad Cortexを愛用している人は、エフェクトも含めてこれ1台で完結というケースも多い印象ですね。
タッチパネルでの操作も本機の特徴の1つです。
スマートフォンみたいにヌルヌルな操作感が凄いですね。これはiPhoneの操作感に慣れている人でも納得できるぐらいのスムーズさがあります(笑)。画面上のノブをタッチ操作するのってけっこうストレスだったりしますが、これは細かい操作もしやすいです。
音作りの自由度はどうでしょう? キャプチャーした音も入れられます。
本当に何でもできるし、無限の可能性がありますよね。シグナル・チェインの中で入れたい位置をタップすればそこに追加できますし、直感的です。
試しにTwin Reverb系のアンプ・シミュレーションを選んでみましょうか。キャビネットも触れます……C12という名前はセラミックの12インチ・スピーカーという意味ですね。マイクも定番のSM57やリボン・マイクも選べて、置く位置も設定できます。キリがないぐらい音を作り込めますね。
歪み系のサウンドも聴いてみると……やっぱりこういった製品の特性なのか、歪みサウンドのほうが得意そうな感じがしますね。例えばFriedmanの歪み、良いですね。実にFriedmanっぽいです。ほかにも5150だったり、メジャーどころはだいたいありますね。全体的に、深く歪んだ音でも破綻せず、整ったサウンドという印象を受けました。
小川さんが使うとしたらどんなシーンが想定できますか?
いつもの自分のシステムを丸ごとQuad Cortexに入れたいですね。僕は最近、基本的にペダルボードで音を作っていて、アンプは歪みペダルを踏んでも変な癖が出ないようにしたクリーン・トーンの状態です。ペダルボードで作った音のプラットフォームとして、アンプでは良質なフェンダー系クリーン・サウンドさえ出てくれればOKなんです。なので、それらの音をそのままキャプチャーして入れたいなと思います。
それで、レコーディングよりもツアーやライブの現場で使いたいですね。ツアーが色々重なったり、レコーディングの仕事も合間に入ることを想定して、僕はほぼ同じ内容のエフェクト・ボードを複数枚持ってるんですが、そのセットがQuad Cortexにまとまったら便利だろうなと思います。
好きなオーバードライブ・ペダルをNeural Captureで取り込んで、気に入ったフェンダー・アンプもキャプチャーしておいてワン・パッケージにすれば、ツアー機材はこれ1台だけ預ければOK!という状態にできて一番ラクですよね。ボードを組まないので結線のトラブルもありませんし。それでこのコンパクトさにまとまるのは魅力ですよね。OSのアップデートも頻繁に行なわれているようで、安心感があります。
Neural DSP
Quad Cortex
【スペック】
●アンプ・モデル:90種類以上
●エフェクト:100種類以上
●外形寸法:290(W)×195(D)×69(H)mm
●重量:1.95kg
●独自機能:Neural Capture
●専用アプリケーション:Cortex Cloud、Cortex Control
【価格】
279,000円(税込)
【問い合わせ】
Neural DSP https://neuraldsp.jp
このモデルもチェック!
Neural DSP
Nano Cortex

既存のペダルボードに加えることも想定された、小型サイズのデジタル・アンプ&エフェクト・プロセッサー。重量は620gだ。
Quad Cortexと同じクオリティのNeural Captureテクノロジーを搭載し、アンプやエフェクターの実機をNano Cortex単体でキャプチャーすることもできる。
2つのフット・スイッチはプリセットやFXブロックを操作するノブも兼ねており、主な事前設定は“Cortex Cloud”アプリから行なう。
Neural DSP
Nano Cortex
【スペック】
●アンプ・モデル:90種類以上
●エフェクト:100種類以上
●外形寸法:290(W)×195(D)×69(H)mm
●重量:1.95kg
●独自機能:Neural Capture
●専用アプリケーション:Cortex Cloud、Cortex Control
【価格】
89,800円(税込)
【問い合わせ】
Neural DSP https://neuraldsp.jp