今や多くのギタリストたちが愛用するようになったアンプ・シミュレーター。このページでは、Universal AudioのUAFX Enigmatic ’82 Overdrive Special Ampを、ギタリストの小川翔による試奏レビューとともに紹介する。
文=鈴木誠 製品撮影=星野俊
*本記事は、ギター・マガジン2025年9月号の特集記事『自宅からステージまで1台で完結! アンプ・シミュレーターのススメ』の一部を抜粋し、再構成したものです。
Universal Audio
UAFX Enigmatic ’82 Overdrive Special Amp
伝説的なダンブル・サウンドを徹底追求したシミュレーター


ここがポイント!
- 評価の高いUAFXシリーズが送り出す、伝説的アンプ=ダンブルの再現モデル。
- 真空管の種類など様々な設定を自分好みに組み合わせられるCUSTOMモード。
- UAFX Controlアプリと連携して、筐体に備わったツマミのほかにも マニアックなパラメーターにアクセス可能。
- アプリ連携でアーティスト・プリセットの取り込みも可能。
プロ御用達のスタジオ機材をルーツに持ち、現在はプラグインやオーディオ・インターフェースなどのデジタル・レコーディング・ツールを幅広く手がけるUniversal Audio。2021年にスタートしたUAFXシリーズは、フェンダー、マーシャル、VOXといったギター・アンプの名機をもとにした実機ペダル・エフェクターをラインナップし、いずれも高い評価を得ている。
中でも本機は“最も入手困難なギター・アンプ”こと、Dumbleの再現を目指したペダル。ダンブルの代表的な愛用者としてはスティーヴィー・レイ・ヴォーン、ジョン・メイヤー、ロベン・フォード、ジョー・ボナマッサ、カルロス・サンタナなどの名前が挙げられる。
サウンド・キャラクターの選択は、本家Dumbleを模した“ROCK”と“JAZZ”の選択だけでなく、さらに“CUSTOM”モードを搭載。歴代Dumbleの出力管、電源トランス、トーン・スタックEQなどのバリエーションを選択することが可能で、自分好みのダンブル・アンプを構成できるというマニアックさもUAFXのペダルらしい特徴だ。
コントロール・パネルも一般的なアンプに見られる3バンドEQのみならず、Dumbleらしい“ディープ/ミッド”のオン/オフや、“BRIGHT”コントロールでブライト・キャップの選択も可能。30年にわたるDumbleアンプの個性を時代ごとに再現し、実機さながらのコントロールを駆使して音作りを行ない、憧れのDumbleサウンドをペダルボードに加えられる。
スマートフォン用の“UAFX”アプリと組み合わせることで、アプリの画面上からさらにマニアックなアンプ・セッティングの変更が可能になる。また、製品登録のボーナスとして、初期状態では3つから選べるスピーカー・キャビネットとマイクの組み合わせが合計9つに増加。
加えて、エフェクト・ループを持つギター・アンプに対して本機を別チャンネルとして追加できる“4ケーブル・モード”にも対応。伝説のダンブル・サウンドを徹底的に追及し、あらゆるシーンに持ち出せるペダルだ。
OGAWA’s IMPRESSION
パッと触って音を出してみただけで、
すぐにDumbleっぽいと思える音を作れました。

Dumbleといえば多くの人が実物を目にしたことすらない伝説的なアンプですが、実機を弾いたことはありますか?
はい、幸運にも3台ぐらい弾いたことがあります。Dumbleアンプというとロベン・フォードのような歪んだギター・サウンドを得意とするイメージが強いかもしれませんが、僕はどちらかというとクリーンでのDumbleサウンドが好きなんです。
では、第一印象は?
Dumble感、ありますね! 歪んでいる時のローのファジーな感じというか、6弦~5弦あたりの低いところを単音で弾くとローが“ブシュッ”とつぶれるような独特のサウンドがあります。まずはここにダンブルの“らしさ”を強く感じました。マーシャルみたいにドカンと低音が飛び出してくる感じではなく、良い意味でファジーなローの質感に僕はDumbleっぽさを感じるんです。
ハイ・ポジションも太さがあるというか伸びやかで、倍音が多めな音という雰囲気がありますね。本当にパッと触って音を出してみただけで、すぐにDumbleっぽいと思える音を作ることができました。クリーンにしてジャジィに弾くのも良いですね。
このEnigmaticが出た時、ギタリスト界隈で“今度はUAFXからDumble系が出た!”と話題になっていたので、僕も気になっていた存在でした。UAFXのペダルといえば、先に発売されたフェンダー系の“Dream ’65 Reverb Amplifier”が人気でしたからね。
デジタル機材なのでレイテンシーはゼロではありませんが、こうして自分の制作環境に組み込んで試奏してみると、さほど気にならないですね。とりあえず、レイテンシーのせいで弾けないなんてことは全然ありません。今回の試奏企画ではガッツリは使い込めませんけど、この第一印象だけでも“おっ!”と思えるかどうかは大事ですね。
モード・スイッチには実機を踏襲した“ROCK”と“JAZZ”がありますが、切り換えた時の違いはどうですか?
まずはストラトキャスターで弾いてみましたが、クリーン・トーンの時にはJAZZモードが好きだなと思いました。歪んだサウンドを作るならROCKモードの音が太くて良いかなと思います。ROCKモードで歪みサウンドを作る場合、ディープ・スイッチはオフにするほうが好みです。
そしてブライト・スイッチの設定は、ギターのピックアップがハムバッカーかシングルコイルかによりそうですね。ゲインをかなり上げるとギター・サウンド全体がローに包まれてしまう感じがあるので、歪ませる時にはブライトをオンにして、抜けを良くしてあげたほうが良い感じのサウンドになりますね。
キャビネット・シミュレーションも触ってみます。最初の“1×12 Black GB25”はグリーンバックの1発ですね。次の“2×12 Boutique D65”に切り換えてみると……こっちのスピーカー2発の音のほうが僕は好みかもしれません。このキャビネット・シミュレーターも定番系から色々あって、全部で9種類から選べるんですね。とにかく設定が奥深いです。
CUSTOMモードや、アプリで設定できる部分も、電源が100Wか50Wなのかとか、めちゃめちゃ内容がマニアックです。すべての組み合わせを試したら、音作りはほぼ無限かもしれないです。
このペダルはどんな人にオススメでしょうか?
やっぱりフュージョン系だったり、ダンブル・アンプのイメージがあるギタリストの音を目指したい人にはピッタリですね。いわゆるロック・バンドで使ってマーシャル系のような歪みを狙ったりするのはちょっと違う感じがしますし、万人向けというよりは、本当にDumbleサウンドを求めるギタリスト向け。でも、それを求める人には間違いのない選択と言えるクオリティがあります。設定次第でスティーヴィー・レイ・ヴォーンみたいなサウンドも出せそうですし、もちろんジョン・メイヤーのファンにもおすすめできます。僕もダンブルの実物をそこまで深く触ったことはありませんが、音の質感は本当にダンブルらしさが感じられました。
Universal Audio
UAFX Enigmatic ’82 Overdrive Special Amp
【スペック】
●モード:ROCK/JAZZ/CUSTOM
●キャビネット・シミュレーター:GB25/D65/EV12(アプリ連携でさらに6種類のキャビネットを選択可能)
●外形寸法:92(W)×141(D)×65(H)mm
●重量:605g
●専用アプリケーション:UAFX Control
【価格】
66,000円(税込)
【問い合わせ】
フックアップ TEL:03-6240-1213 http://www.hookup.co.jp
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UAFX Dream ’65 Reverb Amplifier

いわゆる“ブラック・フェイス”期のフェンダー・アンプを再現した機種。特徴的なチューブ式のスプリング・リバーブとビブラート・サウンドもエミュレートし、ブルースやファンク、サーフ・ミュージックまで幅広くカバーする。
スピーカー・キャビネットとマイクの組み合わせは出荷時に3種類、製品登録により合計6種類を利用できるようになる。また本器には、オリジナル・アンプによく行なわれるモディファイを3通り搭載し、好みで呼び出せるというマニアックな要素もある。
Universal Audio
UAFX Dream ’65 Reverb Amplifier
【価格】
66,000円(税込)
【問い合わせ】
フックアップ TEL:03-6240-1213 http://www.hookup.co.jp