田渕ひさ子がNUMBER GIRL時代から愛用するアンプ・ヘッドとキャビネットを本人が解説! 田渕ひさ子がNUMBER GIRL時代から愛用するアンプ・ヘッドとキャビネットを本人が解説!

田渕ひさ子がNUMBER GIRL時代から愛用するアンプ・ヘッドとキャビネットを本人が解説!

元BiSHのアユニ・Dがフロントマンを務めるPEDROが2025年4〜7月に開催した“PEDRO TOUR 2025 「LITTLE HEAVEN TOUR」”。本ツアーにて、田渕ひさ子が使用したアンプを本人に解説してもらった。

取材・文=小林弘昂 機材撮影=星野俊

Hisako’s Amplifier

1974 Marshall / 1959 MKⅡ & Orange / OR412

1974 Marshall / 1959 MKⅡ & Orange / OR412

様々なプロジェクトで活躍する鉄壁の2台

田渕がNUMBER GIRL時代から現在までレコーディング/ライブで愛用するアンプは、1996年に福岡の楽器店で購入した1974年製マーシャル1959 MKⅡとOrange OR412のセット。メインの1965年製ジャズマスターを購入したあと、まずOR412を、その次に1959 MKⅡを購入したとのこと。

OR412にはCelestionのG12M Greenbackが4発搭載されている。

1974 Marshall / 1959 MKⅡ

1959 MKⅡはクリーン・サウンドで使用している。チャンネル・リンクをし、HIGHのⅠにインプット。各ノブはVOLUME Ⅱが0.5、VOLUME Ⅰが0.5、TREBLEが0.5、MIDDLEが1過ぎ、BASSが2過ぎ、PRESENCEが2手前にセッティングされていた。

チャンネル・リンクをすることでVOLUME Ⅱで低域を加えている。BASSノブはローよりも高い中低域が動くとのことで、ロー・ミッドを出した音作りだということがわかる。耳に痛い帯域を抑えるため、ほかのコントロールはあまり上げないという。

この状態でBOSS BD-2W(オーバードライブ)をオンにするのが田渕の基本のサウンド。NUMBER GIRL時代はほかのメンバーの音量が大きく、それに合わせるためにアンプのボリュームを上げており、BD-2をアッテネーター的に使うことでアンプの音量を下げていたというが、PEDROの現場ではBD-2Wをオンにしてもアンプと同じくらいの音量にしているそうだ。BD-2Wをアッテネーター的に使用すると、そのうしろにつないだ歪みペダルやブースターを踏んだ時に音量がガツンと上がってくれるとのことで、田渕は“やめられないです”とコメント。

1974 Marshall / 1959 MKⅡ

もともとは1959 MKⅡの電源ケーブルが直付けだったが、アンプ・ケースに入れた際にケーブルの付け根が折れる心配があったそうで、トラブルを防止するために取りはずしができるようにしてもらったとのこと。

Marshall/1959
Orange

Amp Case

2023年にPULSEにオーダー製作してもらったという1959 MKⅡ用のハードケース。カラーはライムで、ペダルボードと同じ色で統一している。ケースに貼られているピンクのテープは、ひと目で田渕の機材だとわかるようにとギター・テックが貼ってくれたもの。

2017年頃、田渕が自宅で制作したというOR412用のカバー。ホームセンターでプラダンシートを購入し、キャビネットのサイズに合わせてハンドメイドで制作。

Interview

アユニさんの声はハイ寄り、パーカッシブな感じなので、
相性は悪くなかったんじゃないかな。

アンプ・ヘッドとキャビネットも福岡の楽器店で購入したんですよね?

これも福岡で買いました。順を追って話すと、Hiwattのヘッドを人から借りてたんですよ。でもキャビを持ってなかったので、自分で買おうと思って。Orangeが欲しいと思ったのは、“かわいいから”というミーハーな理由です(笑)。当時、Orangeのアンプを使っている人はマーク・ボランとオアシスのポール・“ボーンヘッド”・アーサーズくらいしか雑誌で見たことがなかったんですけど、存在は知っていて。それで楽器店で“絶対にOrangeが欲しい!”と言って、たぶん輸入してくれたんじゃないですかね。その時は日本に代理店がなかったんですよ。それが1996年で、メインのジャズマスターを買ったのとほぼ同じ時期です。

ACIDMANの大木さんからも、20年以上前はOrangeのアンプが全然手に入らなかったと聞きました。

そうそう。気軽に買えなかったんですよね。私のやつは頼んでから1ヵ月くらいかかったのかな? 分厚い段ボールがグルグル巻きになった状態で楽器店に届いて、“うわぁ〜!”って取りに行きました(笑)。Orangeって買えないものだと思ってたんですよね。でも楽器店に相談したら“買えますよ!”と言われたので、“じゃあお願いします!”と。これもローンで買いました(笑)。

購入してからスピーカーは交換しましたか?

換えてないと思います。たまにレコーディングで“ここ1発ヘタってるかも”と言われるんですけど、いつも言われるわけじゃなくて、よくわからないんですよね(笑)。1回開けたことがあって、Celestionの緑色が入ってましたよ。

では、マーシャルの1959 MKⅡを購入した時のことも教えてもらえますか?

NUMBER GIRLの初期、アンプを持ち込む時はHiwattのヘッドとOrangeのキャビだったんですけど、Hiwattを返してすぐ、楽器店の店長さんに“良いギターを買ったら良いアンプだろ”と言われて、まんまとマーシャルも(笑)。

良いお客さんですね(笑)。

続けて3つドンドンドンと買ったから、“お前、大丈夫か?”と凄く心配されました。

1959 MKⅡを初めて弾いた時の印象は?

キレイな音、クリアだなって思いました。このタイプって現行のマーシャルと比べて倍音が出すぎてないというか、ハイの出方が全然違うじゃないですか。

マスター・ボリューム搭載のモダンなモデルとは違ったキャラクターですよね。

でも音がデカすぎる問題があったんですよ。お高いアッテネーターを買わなきゃいけないのかと思ったんですけど、楽器店の店長から“最近出たこのBlues Driverを踏んで音量を下げればいい”と薦められて、言われるがままにエフェクターまで購入して(笑)。

オーバードライブをアッテネーター的に使うという方法は今でこそ色んな人が取り入れていますけど、当時そこにたどり着くというのはかなり凄いなと思ったんです。

あははは(笑)。そうすると、BD-2のうしろに置いたブースターを踏んだ時にガツンと音量が上がるんですよ。やめられないです。

BD-2のオンとオフでは音量差がけっこうあるんですか?

NUMBER GIRLの頃はそうだったんですけど、今はそんなに音量が出せる現場があんまりなくて。NUMBER GIRLはめちゃくちゃ音がデカかったんですよ! 今考えたら“なんであんなに上がってたのかな?”って思うくらい。でも今は凄く小さいです。BD-2を踏んでもアンプのクリーンと同じくらいですね。

そうなんですね。

マーシャルはある程度までボリュームを上げないと変な音なんですよ。だからそこまでボリュームを上げて、BD-2を踏んでだいたい同じくらいの音量にしています。あとは後段のブースターを踏んだ時にどれだけ音をデカくしたいかを、BD-2とアンプのボリュームで調整するみたいな感じですね。

チャンネル・リンクは最初から取り入れていたんですか?

たぶんそうですね。VOLUME Ⅱはローで、BASSノブはそれよりちょっと上の中低域くらいが動くというイメージです。リンクさせたVOLUME ⅡがBASSみたいな感じ。

古いマーシャルって、EQがその帯域どおりに動いてくれないじゃないですか?

そうそう。MIDDLEがTREBLEですよね。TREBLEは“キラキラキラキラ”みたいなところ。じゃあPRESENCEは何なんだって感じですけど(笑)。

EQのセッティングのコツはありますか?

一応、目印のシールを貼っているんですけど、日によってちょいちょい動かしますね。会場によってドラムやベースの抜けが全然違うので、ギターもそれに合わせています。

マーシャルの音ってボーカルの帯域とぶつかるってよく言われるじゃないですか?

言われます! ジャズマスターもそうだし、Klon Centaurもそうだし、歌の良いところを全部持っていこうとしてるみたいな(笑)。“当たるところを本当に出すギタリストだよね”と言われることがあるんですけど、私は今までずっとそれを考えずに“オラオラ!”と出していたんでしょうね(笑)。PEDRO用のボードだと、真ん中をちょっと避けている感じにしています。

エフェクターで調整するんですね。

はい。エフェクターやパッチ・ケーブルとかでも変わるので、避け気味を心がけています。アユニさんの声はハイ寄り、パーカッシブな感じなので、相性は悪くなかったんじゃないかなって思いますね。

そういえば、以前は1959 MKⅡの電源ケーブルは直付けでしたよね?

生えてたんですけど、ケースにしまう時に“ギュッ”ってなるじゃないですか。いつも折れ曲がってて不安な感じがして、ケーブルを別にしたほうが便利かなと思って換えてもらいました。“多少、音が変わるかもよ”とは言われたんですけど、大丈夫でしたね。

最後に、アンプのケースについても教えてもらえますか?

キャビネットのケースは、ホームセンターでプラダンを買ってきて家で作りました。裏側もけっこう丈夫に作っております(笑)。どの面も2枚重ねていますね。

制作は大変だったのでは?

まあまあ大変でした(笑)。プラダンはデカいですから、“わっしょーい!”って運んできて、マジックで切るところを書いて、腕に切り傷を作りながら家で足の踏み場もない感じで作りましたね。図画工作は好きなので(笑)。

このくらい頑丈だとハードケースがなくても大丈夫そうですね!

もともとハードケースがあったんですけど、デカいし重いし、家での存在感があまりにも凄かったんですよ。もうNUMBER GIRLも解散してツアーをすることもないだろうと思ってたので、それは必要な方に譲りました。これはPEDROのサポートが始まるくらいに作ったのかな。

自宅に置いていたんですか!?

前は家のリビングに“ドーン!”とありましたね(笑)。今はPEDROに預けてるか、倉庫に置いています。

ヘッドのケースはPULSEにオーダーしたものなんですよね?

そうです。NUMBER GIRLの時、1999年とか2000年くらいに作ってもらったハードケースがあったんですけど、取っ手が上に1つだけで、どこに行っても“とても運びづらい”と不評だったんです(笑)。そのケースの金具が壊れたので、2年くらい前に新調しましたね。PEDROのボードが黄緑だったので、同じ色にしました。