ボーカリストの脱退を乗り越え、2025年4月に新体制で制作した3年ぶりのアルバム『Forever Howlong』をリリースし、12月に来日ツアーを行なったブラック・カントリー・ニュー・ロード。最終日のEX THEATER ROPPONGI公演でルーク・マーク(g)へのインタビューが実現。彼が愛用しているストラトキャスターを、本人の解説とともにご紹介しよう。
取材・文=小林弘昂 通訳=川原真理子
Luke Mark’s Electric Guitar
Fender
Classic ’50s Stratocaster Mod.
アイザックから譲り受けた改造メキシコ製ストラト
ルークが今回の来日ツアーに持ち込んだエレキ・ギターは1本のみ。2022年に脱退したアイザック・ウッド(vo,g)が18歳の誕生日に手に入れたメキシコ製の50年代リイシュー・ストラトキャスターで、現在はルークが本器を受け継いで使用している。
様々な改造が施されており、ゴールドのボディ・カラーはアイザックがオリジナルのブラック塗装を剥がしてペンで塗ったもの。そのため最初はルークが弾くたび服にゴールドの塗料が付いていたという。

アイザックが所有していた頃から手が加えられており、リアにストラト用のシングルコイルが1基、フロントとセンターの間にゴールド・フォイルが1基搭載され、コントロールはボリューム・ノブのみ、ピックアップ・セレクターは3wayだったそうだが、ルークが本器を弾くようになってからピックガードを自らアルミ製に交換。そのタイミングでフロントとリアにCreamery Custom Handwound PickupsのFirebird Style Pickupを、センターにMojo Pickupsのゴールドフォイルを搭載した。ルークはおもにセンターのゴールドフォイルをよく選択するという。
ピックアップ・セレクターは現在5wayで、ポジション2とポジション4のハーフ・トーンではフェイズ・アウト・サウンドになる。
現在はトーン・コントロールが2つ追加されている。コントロール・ノブは3つすべてが黒いものに交換されており、ボリューム・ポットもシングルコイル用の250kΩからハムバッカー用の500kΩのものに交換済み。そのためルークは、“高域が強調されたブライトなサウンドが特徴”と語っていた。
2025年初頭の『Forever Howlong』のレコーディング中、ほかのギターに取り付けられていたテレキャスター用のネックを本器に移植。オリジナルのネックは音詰まりなどの問題が生じていたため交換しなければならなかったそうだが、ルークがテレキャスター・ヘッドの見た目を気に入っていたという理由もあったとのこと。
2022年のライブ映像を観ると、まだオリジナルのストラト・ネックで、3ピックアップ、ボリューム・ノブだけが搭載された本器の姿が確認できる。
弦はD’AddarioのXTE1149 Medium(.011〜.049)で、基本のチューニングはレギュラー。「Socks」ではドロップDに、「For The Cold Country」では半音下げにセッティング。
使用楽曲(2025年12月10日@EX THEATER ROPPONGI)
- 「Salem Sisters」
- 「Socks」(後半のみ)(Drop D Tuning)
- 「Goodbye(Don’t Tell Me)」
- 「Turbines/Pigs」(後半のみ)
- 「The Ballad Of El Goodo」(Capo 6)
- 「Happy Birthday」
- 「For The Cold Country」(後半のみ)(Half Step Down Tuning)
Interview
僕がレコーディングしたすべての作品で
このピックアップを使っている。
メインのストラトキャスターについて詳しく教えてください。様々な改造が施されていますよね?
そう、いろんな改造をしているんだ。以前このバンドにいたアイザック(ウッド/vo,g)が18歳の誕生日にこのギターを手に入れたんだけど、それを僕が使い始めて、さらに改造を施したんだよ。ボディはメキシコ製フェンダーの50年代のリイシューだね。もともとはブラックだったんだけど、アイザックがオリジナルの塗装を全部剥がしてゴールドのペンで塗ったんだ。だからこんなにボロボロなんだよ。最初は僕が弾くと服がゴールドに染まってしまって、今年になってやっと染まらなくなったんだ。素敵な服がかなりやられたよ(笑)。ネックはたしか古いもので、ライセンスされたフェンダー・テレキャスター・ネックじゃなかったかな?
アイザックから譲り受けた時、ネックはすでに換えられていたのですか?
いや、オリジナル・ネックが付いていたよ。メイプル指板のVシェイプで、僕はそれをとても気に入っていた。Vネックが好きなんだよね。でもフレット・アウトするようになっていたから、直さないといけなかったんだ。で、最新アルバム(『Forever Howlong』/2025年)のレコーディングを行なった時、スタジオで別のギターのネックをこれに取り付けた。だからこうなったのは最近だね。今年の初めだったかな。
なぜテレキャスター用のネックを付けたのでしょう?
これがたまたま手元にあったし、僕はそのほうがクールな見栄えだと常々思っていたから。僕は70年代のストラトの、あのデカいヘッドが大好きなんだ。それ以外だとテレキャスター・ネックも大好きでね。以前はテレキャスター・ネックが付いたジャズマスターも持っていたんだよ。要は、このデザインのファンだっていうことだね。
アイザックが使っていた当時とはスペックが全然違っているんですね。
そう、当時はかなり違っていたよ。アイザックがこのギターを持っていた時、ピックアップはセンターとフロントの間にゴールド・フォイルが1つ載っていて、リアは普通のストラトキャスター用だった。僕がこのギターを手に入れてから今のピックガードを買って、ピックアップを取り付けたんだよね。よく見ると、ピックアップの横に余分に穴が空いているのがわかるかな? ひどい出来だ。道具を使うのがあまり得意じゃなくてさ(笑)。
現在、搭載されているピックアップはどこのメーカーのものですか?
センターのゴールド・フォイルは一番使っていて、イギリスのMojo Pickupsのもの。フロントとリアは、これまたイギリスのCreamery Custom Handwound PickupsのFirebirdスタイル・ピックアップだよ。ピックアップ・セレクターは5wayで、ポジション2とポジション4はアウト・オブ・フェイズになっている。クールな音で、たまに使っているんだ。あとはボリューム・ポットが500kだから、すごくブライトな音が出る。それがたまに厄介だけどね。
3つのコントロール・ノブも黒いものに交換されていますよね。
もともとボリューム・ツマミしかなかったし、ピックアップ・セレクターも3wayだったんだ。それを5wayにして、アウト・オブ・フェイズも出せるようにして、同時にノブも換えたんだよ。
あなた自身で改造したんですか?
テックにやってもらったんだ。僕はハンダ付けが得意じゃないんだよ(笑)。僕がこのギターをライブで使うようになってから、今のピックアップにしたんだ。『Ants From Up There』(2022年)を作った時にはこの状態だったね。だから僕がレコーディングしたすべての作品で、このピックアップを使っている。
テレキャスター・ネックを取り付けたのは最新アルバム『Forever Howlong』からだったんですよね。
そう。テレキャスターのネックは『Forever Howlong』だけ。『Ants From Up There』と『Forever Howlong』の大半でこのストラトを使ったんだけど、ほかのギターも試してみたんだよ。
どんなものを?
すごく良い音になるんじゃないかと思って、グレッチを買ってスタジオに持って行ったんだ。「Socks」でちょっとだけ使ったかな。実は「Goodbye(Don’t Tell Me)」でも使ってみたんだけど、結局ストラトのテイクに差し替えたんだ。僕の耳にはそっちのほうが良く聴こえたから。そのグレッチは青いElectromaticで、6120っぽい見た目のやつだね。ピックアップはアメリカ製のTV Jonesが付いていたと思う。それ以外はオリジナルのままで、ビグスビーも付いているよ。
『Forever Howlong』のレコーディングで使ったほかのエレキ・ギターは、フェンダーのブラッド・ペイズリー・シグネチャー・テレキャスター。安いギターだけど、とても良いんだ。ブラッド・ペイズリーのテレキャスターはオリジナルのままで、「Happy Birthday」で使ったよ。このストラトも安いギターなんだけど、改造したから高くついちゃったな。
彼のギター・サウンドが大好きなんだ。
特に『Rain Dogs』とかの音がね。
ブラック・カントリー・ニュー・ロードで使うチューニングはレギュラーですか?
ほぼレギュラーだね。「Socks」ではドロップDにしたけど、僕は変則チューニングをあまり使わないんだ。それと「For The Cold Country」ではE♭で弾いている。つまり半音下げだね。それだけだよ。あとはパートによってはカポを使ったりしている。僕はライブでエレキ・ギターを1本しか使わないから、たくさんのチューニングを使うのは難しいんだよね。いろんなキーで、いろんな機会を得られるような曲作りをしたいんだ。
弦のメーカーとゲージも教えてください。
D’Addarioの.011〜.049(XTE1149 Medium)。普通だよ。僕はコーティング弦が好きなんだ。怠慢だから、あまり張り替えたくないんだよね。あとはブライトな音が大好きだから、機材でトレブルを加えるよりも、弦のほうでずっと保っていたいんだ。
ブラック・カントリー・ニュー・ロードはアイザックが脱退したことでボーカリストが変わり、音楽性もガラッと変わりました。あなたがこのストラトを使い続ける理由とは?
大好きだからだね。家で弾いているギターはほかにもあるし、このストラトを置いてツアーに出たことも何度かあるけど、そうすると必ずまた弾きたくなる。耳が一定のEQの形に慣れているからじゃないかな? ボリューム・ポットが500kでブライトだから、それを聴くことに慣れてしまっているんだろうな。ウチのPA担当はピーター・フリントンという人でね。この間のライブで僕はトーンをちょっとダークにしたんだけど、その翌日、彼は“またブライトにしてくれよ”と言ってきた。彼も僕と同じトーンをいつも聴いているから、それを聴きたかったのかもね。
シンガーも音楽性も変わったことで、求められるサウンドやフレーズも変わったと思います。現在ギターを弾くうえで、どのようなことを心がけていますか?
ベーシックなクリーン・トーンで、ブライトさを出せるようにしておきたいんだ。だからペダルやアンプのセッティングをかなり変えたんだよね。以前はもっとクリーンで、ペダル側で思いっきりゲインを上げていたんだけど、今はもう少し中間寄りかな。
『Forever Howlong』の楽曲は複雑なコードやフレーズなどが多く、ギターの居場所を作るのが大変だと感じました。どのようにフレーズやコードのボイシングを考えていったのですか?
良い質問だ。かなり時間がかかったよ。僕は常々、“ギターを弾くためのアプローチ”は2通りあると思っている。1つは“参照アプローチ”で、ほかの人が出している音を参考にすること。例えばロック・ソングだったら、“マーシャルの音量を上げてジミー・ペイジのような音を出そう”とかね。もう1つは“楽器奏者アプローチ”。自分の音があるうえで、チェロとか、ほかの楽器のような音を自分のやり方で出すこと。
僕は両方やるけど、“参照アプローチ”のほうはあまりやらないようにしている。つまり、最初に思いつくことのないボイシングを見つけるんだ。曲のキーを見て最初に思いつくポジションではなく、指板上で新しいポジションを見つけていくことが多かったね。だから今はカポをよく使っているんだ。昔はカポが大嫌いだったんだけど。
そうなんですか?
すごくダサいと思っていたんだ。怠慢だってね。カポがなくたって、どんなキーでも弾けるだろう? でも、面白いフレーズを考える時に開放弦がものすごく役に立つから、カポを使うようになったんだ。特にアコースティック・ギターでね。タイラー(ハイド/vo,b)が作る曲はキーがE♭のものが多いんだけど、ギターでは弾きにくいキーだよね? だからカポを使って、弾きやすいフレーズを見つけるんだ。それと僕は、ギターのボイシングの“音程が狭まっている響き”が大好きでね。2本の弦を半音違いで鳴らすと、せめぎ合いが起きて軽快な音になる。僕はそれが大好きなんだよ。
あなたのプレイ・スタイルやサウンドメイクで影響を受けたギタリストは?
今回の『Forever Howlong』でずっとイメージしていた人は、80年代にトム・ウェイツと一緒にやっていたマーク・リーボウだった。彼のギター・サウンドが大好きなんだ。特に『Rain Dogs』(1985年)とかの音がね。彼はジャズ・スタイルだけど、大きくスラップバックするような音をテレキャスターで出していて、ちょっとグランジィで、強力な音がする。最近はそれをかなりイメージしていたね。
ほかには誰が好きかな? ……トム・ヴァーレインだ。テレヴィジョンは僕の一番のお気に入りのギター・バンドかもしれない。彼らはすごいよ。あとはジェフ・ヒーリーやウィルコのネルス・クラインのギター・サウンドも大好きなんだ。とても味のあるエレクトリック・ギター・サウンドだと思う。すごく良いよ。ほかにもたくさんいるけど、強く影響されたのは今挙げた人たちだね。
昨年、ちょうど同じ席でネルス・クラインにインタビューしましたよ。
本当に!? 超クールだね! 彼にはぜひ会いたいよ。
まだ会っていないんですね。
そう、まだなんだ。彼と共演するだけの腕は僕にはないよ。彼はとっても上手いもん。
2025年12月10日(水)EX THEATER ROPPONGI
【Setlist】
01. Two Horses
02. Salem Sisters
03. The Big Pain
04. Mary
05. Nancy Tries To Take The Night
06. Besties
07. Socks
08. Dancers
09. Goodbye(Don’t Tell Me)
10. Turbines/Pigs
11. The Ballad Of El Goodo(Big Star Cover)
12. Forever Howlong
13. Happy Birthday
14. For The Cold Country


