FEATURED MODELS
クラフトマン・シップを体現するパオレッティ・ギターズの世界
本記事では、パオレッティ・ギターズのブランド・コンセプト、そしてラインナップについてまとめてみよう。独自の美学や音作りの背景を踏まえつつ、個性溢れる各シリーズの特徴をより深く理解してほしい。
Presented by ゼンブジャパン
構成=ギター・マガジン編集部
*本記事は、ギター・マガジン2026年2月号の記事『世界のマスタービルダーを訪ねて Vol.7~Paoletti Guitars/ファブリツィオ・パオレッティ』を再構成したものです。
OVERVIEW
ワイン樽から生まれる独創性と職人技
イタリア・トスカーナ発のハンドメイド・ギター・ブランド、パオレッティ・ギターズは、世界でも極めて独自性の高いギター・ブランドとして注目を集めている。創業者のファブリツィオ・パオレッティは、もともとワイン醸造を営む家系の出身で、代々受け継がれてきた自家ワイナリーの古いワイン樽をギター作りに活かしたいという思いから、2008年にブランドを立ち上げた。
工房が位置するトスカーナ州はイタリア屈指のワイン産地として知られ、その地で長い時間をかけて熟成に使われてきた樽材=チェスナットこそが、パオレッティ・ギターズのアイデンティティを象徴する素材となっている。同ブランドのギターの存在を本当に際立たせているのは、熟成されたチェスナットなのである。
この木材は、完璧な乾燥度に達すると標準的に使用される材では得られない響きが生まれるという。サウンドは中低域が豊かで、暖かみと深みのあるトーンが特徴。サステインが長く、倍音成分も豊かで、ブルースやロック、ジャズなど幅広いジャンルで存在感を発揮する。多くのブランドがアルダーやアッシュを用いるなか、素材の段階で強烈な独自性を持つ存在は希少だ。
こだわりは木材だけにとどまらない。ボディやネックはもちろん、ピックアップ、ブリッジ、ピックガードにいたるまで、可能な限り自社製作でまかなうという徹底ぶりだ。ピックアップはハンド・ワウンドで巻かれ、ハードウェアの多くはブラス製。これはトーンに温かみと質量感を加えるとともに、ビンテージ的なルックスを生み出している。さらに、ほとんどのモデルがカスタム・オーダーに対応しており、木材の選択やピックアップの構成、仕上げ、エイジド加工、インレイなど、プレイヤーの理想を細部まで反映できる。
同ブランドのラインナップも個性的だ。最も代表的なのは、チェスナット材の木目を活かしたソリッド・ボディのWine Series。ほかにも、独特な風合いの塗装が魅力のLoft Seriesや、ホロウ/セミ・ホロウ構造で柔らかい音色を追求したLounge Seriesなど、視覚的/音響的にユニークなモデルが揃う。近年は限定色や特殊仕上げのモデルも増え、コレクターからの注目度も高まっている。
このように、パオレッティ・ギターズは単なる楽器メーカーではなく、ワイン文化とイタリアのクラフトマン・シップを融合させた“アートとしてのギター”を提供するブランドと言える。古木となるチェスナット材のサステナブルな再利用は環境倫理的にも意義があり、そこに宿る“時間の物語”が1本1本のギターに深い個性を与えている。大量生産では決して生まれない特別な存在感、そして職人による高い完成度。これらすべてが、このブランドのギターを一生ものとして選ぶプレイヤーを惹きつけているのだ。
もしあなたが、楽器を単なる道具として扱うのではなく、“背景を持つギター”、“語れるギター”を探しているなら、パオレッティ・ギターズの楽器はきっと特別な1本になってくれるだろう。
PRODUCT LINEUP
シリーズで“世界観”、モデルで“仕様”を選ぶ二層構造

パオレッティ・ギターズの製品ラインナップは、 “Series” と “Models” という二層構造で分類されている。まず“Series”については、ブランドが掲げるコンセプトや設計思想、仕上げの方向性といった“世界観”をまとめた大きな枠組みを指す。
先述のように、チェスナット材を活かした自然な仕上げが特徴のWine Series、使い込まれたような仕上げや、自然な質感を活かしながら色味を何層も吹き付ける塗装が特徴のLoft Series、セミ・ホロウ、またはトーン・チェンバー入りの構造で、ソリッド・ギターとは異なる音色を生み出すLounge Seriesなど、トーンやルックス、製造哲学を包括的に示すカテゴリに分類されるのだ。この段階では“どのような思想の楽器か”が定義され、好みの音色の傾向やデザインの方向性を大まかに選ぶことができる。
一方、“Models”については、そのシリーズの中に含まれる具体的なギターの形状、構造、仕様を指している。ボディ・シェイプについては、STタイプのAlfa、TLタイプのNancy、シングル・カッタウェイのSeicento、JMタイプの112、セミアコの500、オリジナル・シェイプの128や131などを用意。加えて、ピックアップの構成やブリッジの形式、コントロール配置といった実際の演奏感に直結する要素を組み合わせる。つまり、“Series”が“思想・テーマ”で、“Models”が“個別の設計”となるのだ。
まとめると、大枠のキャラクターを決めて(Series)、次に自分の演奏スタイルに最も合う仕様を選ぶ(Models)、という風に考えると理解しやすいだろう。
Wine Series
チェスナットの深みが映える標準ライン
参考モデル:NANCY CHIANTI WINE SH

最初期から続く、ソリッド・ボディの基幹ライン。チェスナット本来の表情を引き出し、その自然な色合いを際立たせている。ナチュラル・フィニッシュに加え、近年はChianti Wineフィニッシュと呼ばれる紫がかったオイル仕上げも登場。いずれもワインの文化を背景に持つブランドらしい、深い色味を帯びている。
Paoletti Guitars
NANCY CHIANTI WINE SH
【スペック】
●ボディ:エイジド・チェスナット
●ネック:カナディアン・ローステッド・メイプル
●指板:エキゾティック・エボニー
●フレット数:22
●スケール:648mm
●ペグ:クルーソン・デラックス
●ピックアップ:Paoletti Rock II – 8.1K Alnico 5、Walnut Paoletti Nancy’60s – 7.5K Alnico 5
●ブリッジ:Paoletti OEM 3Saddle Nancy
●コントロール:ボリューム、トーン、3wayピックアップ・セレクター
【価格】
オープンプライス(市場実勢価格:786,500円前後)
【問い合わせ】
ゼンブジャパン TEL:06-6441-2263 http://www.zenbu-jp.com
Loft Series
深い色層で表現するイタリアの美学
参考モデル:ALFA LOFT HSS – 585+ SAFARI INFERNO

イタリア的な色彩表現を取り入れたシリーズで、複数のカラーを重ねることで深い陰影を作る。“エイジド加工”とは異なり、色のレイヤーによって質感を生み出すため、独特のアート性が漂う。単に古風に見せるのではなく、“本物の古木材を使った、新品ながら歴史を感じるギター”という、こだわりの強いライン。
Paoletti Guitars
ALFA LOFT HSS – 585+ SAFARI INFERNO
【スペック】
●ボディ:エイジド・チェスナット
●ネック:カナディアン・ローステッド・メイプル
●指板:パーフェロー
●フレット数:22
●スケール:648mm
●ペグ:クルーソン・デラックス
●ピックアップ:Paoletti ‘60s – 7.5K Alnico 5×2、Paoletti Rock II – 8.1K Alnico 5
●ブリッジ:Paoletti OEM Tremolo
●コントロール:ボリューム、トーン×2、5wayピックアップ・セレクター
【価格】
オープンプライス(市場実勢価格:827,200円前後)
【問い合わせ】
ゼンブジャパン TEL:06-6441-2263 http://www.zenbu-jp.com
Lounge Series
軽さと響きを両立させたホロウ・モデル
参考モデル:112 LOUNGE 2P90 – 050 CHIANTI WINE

ジャズ、ファンク、ブルースなど幅広い音楽に対応するホロウ/セミ・ホロウ構造のシリーズ。重量バランスを崩さずに空洞を設計する高度な技術が注ぎ込まれており、楽器自体の軽さとトーンの豊かさを両立。JMタイプとなる112シリーズだけでなく、セミアコの500シリーズやほかのボディ・シェイプも用意。
Paoletti Guitars
112 LOUNGE 2P90 – 050 CHIANTI WINE
【スペック】
●ボディ:エイジド・チェスナット
●ネック:カナディアン・ローステッド・メイプル
●指板:エキゾティック・エボニー
●フレット数:22
●スケール:648mm
●ペグ:クルーソン・デラックス
●ピックアップ:Paoletti OEM Walnut P90 – 7.5K Alnico 5×2
●ブリッジ:Paoletti OEM®6Saddle Fixed
●コントロール:ボリューム、トーン、3wayトグル・スイッチ
【価格】
オープンプライス(市場実勢価格:807,400円前後)
【問い合わせ】
ゼンブジャパン TEL:06-6441-2263 http://www.zenbu-jp.com
Signature Series
ギタリストの要望を叶える無二の逸品
参考モデル:ALFA WINE HSS – RICHIE SAMBORA

リッチー・サンボラやジョン・ノーラム、トモ藤田、ichiroといった世界的なミュージシャンとの共同開発によるシグネチャー・シリーズ。アーティストが求める仕様に合わせて製作されたモデルだが、パオレッティ・ギターズ独自のチェスナット材と設計思想により、新しい価値を持つギターとして昇華している。
Paoletti Guitars
ALFA WINE HSS – RICHIE SAMBORA
【スペック】
●ボディ:エイジド・チェスナット
●ネック:ローステッド・ハード・メイプル
●指板:クレリカム・エボニー
●フレット数:22
●スケール:648mm
●ペグ:クルーソン・デラックス
●ピックアップ:Single Coil Paoletti×2、Humbucker Rock(Paoletti hand-wired pickups)
●ブリッジ:Paoletti OEM vintage bridge 6 screws
●コントロール:ボリューム、トーン×2、5wayピックアップ・セレクター
【価格】
オープンプライス(市場実勢価格:776,600円前後)
【問い合わせ】
ゼンブジャパン TEL:06-6441-2263 http://www.zenbu-jp.com
SPECIAL ARTICLE
イタリアの至宝、“The Eye of Florence”プロジェクトが発足!
現在、ファブリツィオが手がけているプロジェクトが、フィレンツェ大聖堂のステンドグラスをモチーフにした“The Eye of Florence”。ギターをアート作品として再定義する、壮大なる構想の詳細とは?
パオレッティ・ギターズが進める“The Eye of Florence(フィレンツェの目)”プロジェクトは、一般的なギター製作の領域を超え、ギターを“アート作品”として創造することを目指した、極めて野心的な試みである。パオレッティは、これまでもレオナルド・ダ・ヴィンチやマルコ・ポーロをテーマに、世界限定10本のみのアート性/コレクション性の高いギターを製作してきたが、本プロジェクトはその流れをさらに発展させるもの。
今回は、中東で最大級のアート・ギャラリー兼ディーラーである、ドバイのArt of Guitarと提携し、ハイエンド市場に向けてギターをアートとして提示する、まったく新しい方法を探ることが核心となっている。
ファブリツィオ・パオレッティ自らが手がけ、ギター製作家としてだけでなくアーティストとしての創造性を打ち出すこのプロジェクト。テーマはイタリア文化の象徴であり、フィレンツェの中心的存在であるフィレンツェ大聖堂(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)のドームから着想を得ている。
15世紀半ばにフィリッポ・ブルネレスキによって設計されたこのドームは、革新的な構造で知られており、芸術と技術の極限に挑む象徴的存在。今回製作される8本のギターは、そのドームを彩る8枚の巨大なステンドグラスをモチーフにしている。
いずれも1点もので、世界に1本ずつしか存在しない。特徴的なのは、以前のマルコ・ポーロ・モデルではボディ・トップと指板のみだったマザー・オブ・パールの装飾が、今回はボディ・トップや指板だけでなく、サイドやバックにいたるまで、全身を覆うレベルに拡張されている点である。
製作における最大の挑戦は、直径5メートルにおよぶ実際のステンドグラスのデザインを、ギターのサイズに再構築する作業である。1枚のデザインに数ヵ月、全体で約1年を要する緻密なプロセスで、その後の製作工程は従来のアート・モデルの3倍以上の手間を要するという。
ボディはセミ・ホロウ構造でサイズも大きく、使用されるヴェネツィア産のマザー・オブ・パールはすべてファブリツィオによる手作業でカット/装着されるため、膨大な時間と技術が必要となるのだ。さらに特筆すべき要素として、各ギターのボディ・バックにはフィレンツェ大聖堂から提供された“本物の破片”が埋め込まれていることも挙げられる。この貴重な素材は公式な証明付きで譲渡されたもので、単なる高級楽器ではなく、歴史そのものを宿すという唯一無二の芸術作品/美術品へと昇華させている。
“The Eye of Florence”コレクションは2026年10月に正式公開が予定されており、パオレッティ・ギターズがギターをアート市場に本格的に持ち込み、新たな価値を切り開く象徴的なプロジェクトとなる。
The Eye of Florence North-East Resurrection of Christ
ここで紹介するのは、“The Eye of Florence”コレクションの試作品の1つ、North-East Resurrection of Christだ。

この個体は、イタリア・ルネサンス期の画家、パオロ・ウッチェロが1444年頃に製作したステンドグラス“キリストの復活=Resurrection of Christ”をモチーフにしている。このステンドグラスは、フィレンツェ大聖堂のドームにある八方のうち、北東に設置されている。
ボディはチェスナット材、ネックはローステッド・メイプルを使用し、約6000個のヴェネチアン・マザー・オブ・パールを手作業で敷き詰めた豪華装飾が特徴。
24金のハードウェア、手彫りのエボニー・ブリッジ、ファイン・セラミック・ピックアップを搭載し、ボディ裏には大聖堂の本物の破片が封入されている。美術、工芸、音響を融合したコレクター垂涎の特別モデルだ。






