コートニー・バーネットが語る、ギター・ロックに回帰した新作『Creature Of Habit』での実験的なサウンドメイク コートニー・バーネットが語る、ギター・ロックに回帰した新作『Creature Of Habit』での実験的なサウンドメイク

コートニー・バーネットが語る、ギター・ロックに回帰した新作『Creature Of Habit』での実験的なサウンドメイク

コートニー・バーネットが、2026年3月27日(金)に約5年ぶりとなる4枚目のアルバム『Creature Of Habit』をリリースした。鍵盤をメインに作曲を行なった前作『Things Take Time, Take Time』(2021年)、全編インストで制作された映画『アノニマス・クラブ』のサウンドトラック『End Of The Day』(2023年)を経て、今作では彼女を象徴するディストーション・サウンドが鳴り響くギター・ロックへと回帰している。近年、様々な環境の変化があったというコートニーにインタビューを行なった。

取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モリー 人物撮影=Pooneh Ghana

コートニー・バーネット(撮影:Pooneh Ghana)

もう一度ちゃんと腰を据えて
音楽を作るべきだと思ったの。

なんとギター・マガジンでは11年ぶりのインタビュー、2回目の登場となります。

もう旧友だね(笑)!

インタビュー掲載号(有料会員限定)

ギター・マガジン2015年10月号

この11年間で、あなたはカート・ヴァイルとのコラボ・アルバム(『Lotta Sea Lice』/2017年)をリリースしたり、拠点をメルボルンからLAに移したり、自身のレーベル“Milk! Records”をクローズしたりと、様々な出来事があったと思います。最も思い出に残っている、または大きな影響を及ぼした出来事は?

グッド・クエスチョンだね。本当にクレイジーな時間が流れたよ。これまでの年月、私は自分の音楽と一緒に世界中を旅することができて本当に恵まれていたと思う。振り返ってみると、どれだけたくさんの素晴らしいものを見て、経験してきたのかを改めて思い出すよ。

今はもっと本を読もうとしたり、エクササイズしたり、自然の中で過ごす時間を増やそうとしているんだ。私は自然からすごくインスピレーションをもらうの。ちょうどこの週末もロサンゼルスから1時間くらい車を走らせて、山に行って雪を見てきたんだ。自然の前で自分がちっぽけだと感じる感覚はとても大事で、インスパイアしてくれるんだよね。

そしてついに約5年ぶりのアルバム『Creature Of Habit』がリリースされました。どのようなコンセプトを掲げて制作をスタートしたのですか?

インストゥルメンタルのアルバム(『End Of The Day』/2023年)を出して、少しツアーもしていたけれど、もう一度ちゃんと腰を据えて音楽を作るべきだと思ったの。

最初は頭の中で起きていることを日記みたいに書き留める感覚から始まった。それが自分の考えや感情、日々の出来事を整理するのにすごく役立ったんだよね。しばらく曲を書いていなかったから、“曲の書き方を忘れちゃった”みたいな感覚もあったし、まるで最初からやり直しているみたいな気持ちになれたかな。だから毎朝キッチンのテーブルにギターを持って座って、“1日1曲書いてみよう!”としていたの。それが流れを取り戻すための、とても面白いエクササイズになったんだ。

1曲目「Stay In Your Lane」からコンソールで歪ませたようなドライブ・サウンドが痛快でした。この歪みはどうやって作ったんですか?

この曲には、特にこのサウンドが必要だった。でも正直、あんまりハッキリ覚えてないの。ギターはジャガーを使ったはずだけど、いろんなペダルやアンプを試していたから具体的には思い出せない。ちゃんとアンプを鳴らして、何かしらのオーバードライブも使ったと思うんだけど……。

この曲はジョン・コングルトンがエンジニアリングとミックスを担当していて、彼がところどころにナイスな味付けしてくれたんだよね。彼が少しマジックをかけてくれた気がするの。

コンソール的な歪みはビートルズやレッド・ツェッペリンに始まり、セイント・ヴィンセント、レディオヘッド、ウィルコ、マック・デマルコ、ウェット・レッグなど、数々のアーティストが積極的に取り入れています。その魅力とは?

かなり切迫感があってアグレッシブだし、突き刺すようなサウンドだよね。こういうトーンは昔からライブで使ってきたの。長年ずっと3ピース編成でやってきたし、楽器が少ない編成ではクリーンやいろんなレベルの歪みを使い分けてサウンドのレイヤーを作ることが大事だから。

こういうサウンドは新しい空気感を生み出してくれるし、曲を別のエモーショナルな空間へと引き上げてくれると思う。ディストーションのサステインは、例えばギター・ソロを弾き始める瞬間にもすごく役立つよ。特に3ピース編成ではナイスなオーバードライブ・サウンドがあると本当に心強いんだ。

あなたはキャリアの初期からBOSSのBD-2をメインの歪みとして愛用していますが、今も変わらずですか? SNSにアップされた写真を見ると久しぶりにFulltoneのOCDも使用しているようですね。

そう、今はまたOCDを使っているよ。もうBD-2はペダルボードに入っていないけど、本当に長い間使っていたね。あとは最近、29 Pedalsっていうメーカーのグレイトなペダルも使っているの。LAのビルダーが作っていて、オーバードライブもファズも本当に良いんだよね。もしかしたら「Stay In Your Lane」をレコーディングした時にも使っていたかもしれない。それから今は小さなブースターも使っているけれど、どんなものだったかはすぐに思い出せないな。

歪みペダルはゲイン違いによって使い分けられるように、いつも何台か用意しておきたいんだ。軽い歪み、さらに深い歪み……みたいにね。もっとクレイジーさが欲しい時はFuzz Factoryを使うこともあるよ。

今のボードにはHologram Electronicsのエフェクターも入っていますよね?

Hologram Electronicsのペダルをいくつか試したことがあって、その中でも特に気に入っているのがMicrocosmっていうモデル。本当にいろんな音が出せるし、すごく美しいテクスチャーが作れるんだ。キラキラした、ちょっと幽霊みたいなテクスチャーのギター・サウンドを生み出せるお気に入りのセッティングを見つけて、『End Of The Day』を作った時にもたくさん使ったよ。

このペダルは時々どう使えばいいのか自分でもよくわからなくなって、そこが好きなんだよね(笑)。でも、だからこそアクシデントのように美しいサウンドと出会えるの。『Creature Of Habit』でもあちこちで使っていて、いろんなダビングやテクスチャーを作ったんだ。ルーパー機能もかなりグッドだよ。Microcosmは本当に最高。

EQDのAvalanche Runもずっと愛用していますし、不思議なサウンドが出せる空間系が好みなのでしょうか?

うん。ちょっと変なペダルが好きだね(笑)。自分が何を探しているのかハッキリわからない時、思いがけずに“何か”を持ったサウンドに出会えることがある。それが自分の快適な場所や、いつものソングライティングの枠から押し出してくれるんだ。

Avalanche Runは本当に大好きで、クラシックなリバーブ/ディレイとしてよく使っているよ。ほかにも、名前は忘れちゃったけどかなりグッドなエフェクターがあって……急激に立ち上がる感じのエフェクトなんだけど……そのサウンドは「Stay In Your Lane」にも入っている。名前が思い出せないけど、そのペダルは長く使っていて、とても頼りにしているんだよね。

ケイト・ル・ボンは本当にアメイジングな
ソングライター/ミュージシャン。

「Mantis」で鳴っている、浮遊感のあるリバービィなトレモロ・サウンドはどのように作ったんですか?

オムニコードをダビングしているのは間違いないね。オムニコードを長くストロークさせてハープみたいなサウンドを作ったんだ。たっぷりリバーブをかけていて、Microcosmも使ったと思う。ギターには、たぶんオーバードライブと少しのディレイか何かをかけていたくらいじゃないかな。

「Great Advice」のエンディングは複数本のギターのミニマムな絡みが面白いです。

メインとなるリフがあって、エンディングで何かもう1つソロみたいな要素を足したいと思ったの。でもメイン・リフ自体がかなり尖った感じだったから、普通のソロにするんじゃなくて、ギター同士が掛け合うような形にしようと思ったんだ。片方のギターはメロディを弾いているけど、くり返すたびに上のハーモニーをプレイする感じになる。あのパートを考えてレコーディングするのは本当に楽しかったな。音源では2本目のギターをダビングしているけど、ライブでは少しアレンジを変えて2つのパートを同時にプレイできるように工夫しているの。

「One Thing At A Time」のギター・ソロのファジィなサウンドもすごくかっこよかったです。

あれはケヴィン・シールズのシグネチャー・ペダル、Fender Shields Blenderを使ったの。リズム・ギターがいなくなるところがあるから、ソロでその空間を埋めたかったんだ。ぶっ飛んだサウンドにしたかったし、サステインも残したかったからね。実は一度レコーディングしたあとに、もう1回レコーディングし直していて、たぶん音源は最終バージョンを使ったはず。あとはAvalanche Runも使っているし、もしかしたらOCDも同時にオンにしていたかも。でもハッキリとは覚えていなくてね。ただ、Fender Shields Blenderを使ったのは確か。

「Sugar Plum」や「Same」で聴けるコーラスのようなサウンドにも耳を惹きつけられました。

その2曲ではストラトキャスターを使ったのを覚えてる。アンプは私の大のお気に入り、RolandのJazz Chorus。このアンプでたくさん曲を作ってきて、すっかり惚れ込んじゃったんだ。ちょうどその頃に手に入れたばかりで、「Sugar Plum」ではJazz Chorusのコーラス・サウンドをそのまま使っているの。

このような爽やかなサウンドからはケイト・ル・ボンの影響をすごく感じます。彼女が制作に関わったウィルコのアルバム『Cousin』(2023年)やセイント・ヴィンセントの楽曲「All Born Screaming」など、近年の作品からインスパイアされた部分もあるのでしょうか?

もちろん! ケイトの音楽は大好きだよ。面白いことに、実は今ちょうど彼女が私の家に泊まっているの(笑)。

本当ですか!?

うん。遊びに来てるんだ。彼女はツアーを終えたばかりで、ちょうど私の家に滞在しているの。本当にアメイジングなソングライター/ミュージシャンで、大きなインスピレーションを与えてくれているよ。

話は戻るけど、私が初めて手に入れたコーラス・ペダルはBOSSの青いやつで、たぶん10年くらい前だったと思う。最初にインスパイアされたのはニルヴァーナで、私が作りたいサウンドはああいう感じだったんだ。実際、カート・コバーンもコーラスをけっこう使っていたんだよね? それがコーラスとの最初の出会いだった。もちろんケイトのサウンドも大好きだよ。

ケイトとはギター、サウンド、レコーディングについて頻繁に話し合ったりしているのでしょうか? 将来的にコラボレーションも期待してしまいます(笑)。

コラボレーションはどうだろうね? 私たちは本当に仲が良い友達なの。音楽の話はいつもしているよ。彼女はアートや音楽に向き合う姿勢がとても美しい。ほかの人よりも、もっと深いところで受け止めている気がするしね。音楽との接し方が本当に素敵なんだ。

コートニー・バーネット

似たようなサウンドになったり、
退屈になったりすることは避けたいんだ。

あなたが影響を受けたプレイヤーとしてはスティーヴン・マルクマス、ジェフ・トゥイーディー、ジョニ・ミッチェル、ニール・ヤングなど様々なギタリストの名前を挙げていましたが、サウンドメイクで影響を受けたギタリストは?

いろんな人たちが混ざり合ってると思う。ジョン・フルシアンテ、ジェフ・バックリィ、PJハーヴェイとかね。この人たちはみんな本当にインスパイアしてくれる。それからボニー・レイットもよく聴いていて、彼女は本当に驚異的だよ。

現在のメイン・ギターは2ハムバッカーのカート・コバーン・ジャガーのようですね。このギターを選んだ理由は、あなたが左利きであることも関係していますか?

正直に言うと、それが一番の理由。左利き用だったから手に入れたんだ。私が新しいギターを買おうと決めた時、選べるモデルがほとんどなかったんだよね。でもカート・コバーン・ジャガーをプレイしてみたら、本当に好きになってしまった。ピックアップはかなりグッドなサウンドで、少し分厚くてパワフルなの。だから偶然の選択ではあったけれど、結果的にとても気に入っているよ。その前から別のジャガーを持っていて、それはシングルコイルのクラシックなタイプで気に入っていたんだけどね。

Fender/Kurt Cobain Jaguar

ライブではフェンダーのコンボ・アンプを3台並べて使用していますが、それぞれの詳細を教えてください。

1台はバックアップ。私の場合、どういうわけかアンプが本当によく壊れるの(笑)。残りの2台はアンプ・セレクターを使って接続していて、2台の音を常に出力している。本当はペダルボード内でシグナルを分けて、片方のアンプはクリーン、もう片方はエフェクトをかけたサウンドにしたかったんだけど、まだ上手くできていなくて、理想のシステムを組めているわけじゃないんだよね。

これまでで触れていない、今作のレコーディングで使用したギター、アンプ、エフェクターなどはありますか?

アコースティック・ギターはギブソンの……モデル名が思い出せない(笑)。今から確認しに行くね!

ありがとうございます(笑)。

……あ、J-45だ。これを使ったの。本当にナイスなアコギで大好きなんだ。それからBOSSのRE-202(ディレイ)も使ったよ。本当にグレイトで「Another Beautiful Day」でも使ってる。

アンプに関しては特に思い出せるものがないの。ジョシュア・ツリーにある“Rancho De La Luna”というスタジオでたくさんレコーディングしたんだけど、あそこにはアンプがいっぱいあって、適当にいろんなモデルを使ったから正確には覚えていなくてね。でもたぶん、フェンダーの何かしらのアンプがメインだったと思う。

このアルバムでは実験するのが本当に楽しかった。デモの多くは自分で作っていて、SOMA LaboratoryのPULSARっていうドラム・マシンを使ったんだけど、それがすごく楽しくて、たくさんのトラック作りにも役立ったんだよね。「Same」の冒頭でもPULSARのサウンドが聴けると思うよ。それからEcho Fixというブランドのテープ・コーラス・エコー(EF-X3)も使った。RolandのRE-301やRE-201と似ていて、デモを作る時、ボーカルやドラム・マシンのリズムを新しい感じにするのにたくさん使ったの。

今作はサウンド面での実験的要素が特徴でした。これは意図していたものですか?

もちろん! アルバムごとに何か新しいことにトライして学びたいと思っているの。私の作曲方法は独特で、常に自分らしさがあるけど、似たようなサウンドになったり退屈になったりすることは避けたいんだ。だから常に新しいサウンドを探したり、違うコードやチューニングを使ったりしている。前のアルバム(『Things Take Time, Take Time』/2021年)でもギターじゃなくてキーボードやピアノを試して、快適なところから少し抜け出そうとしたの。

コードの動かし方やボイシングがギターとは異なるので、鍵盤で作曲をしたりフレーズを作ったりすると作風にも影響を与えると思うのですが、その変化はありましたか?

自分でもハッキリわからないんだ。基礎はわかっているけど、私のピアノは本当にアマチュア・レベルだからグッドなプレイヤーではない。でもピアノに集中していると脳の別の部分がオープンになってきて、無意識のうちにメロディやアイディアを見つけられるんだよね。だからピアノで作曲をするのが大好きなの。それに、ピアノで作曲するとギターでは絶対に出てこないようなメロディを発見することもあるからね。2つの楽器がまったく違うインスピレーションを与えてくれるのは本当に面白いことだよ。

私はアルバムを重ねるごとに自分の音楽スキルを高め、たくさん考えながら曲を作ることを目標にしている。前のアルバムと新しいアルバムとで競争しているわけじゃないけど、今回の『Creature Of Habit』で曲を形にしていくことはとても楽しかった。真に作り上げるという感覚があったと思う。歌詞は時間がかかるものもあったけど、基本的な構成はかなりオーガニックにまとまっていったんだ。

今日はありがとうございました。久しぶりの日本でのライブも期待しています(※取材後、7年ぶりとなるジャパン・ツアーの開催が発表された)。次回はライブ会場で機材を撮影させてください!

もちろん! 次にまた日本に行ける日が待ちきれないよ。できれば、すごく早いうちにね。ありがとう。See you soon!

作品データ

『Creature Of Habit』
コートニー・バーネット

VMG
UICB-1038
2026年3月27日リリース

―Track List―

01. Stay In Your Lane
02. Wonder
03. Site Unseen (featuring Waxahatchee)
04. Mostly Patient
05. One Thing At A Time
06. Mantis
07. Sugar Plum
08. Same
09. Great Advice
10. Another Beautiful Day

―Guitarist―

コートニー・バーネット

Live Information
Courtney Barnett “Creature of Habit Tour

【名古屋公演】
<日時>

2026年6月16日(火)NAGOYA CLUB QUATTRO
Open 18:00 / Start 19:00

<チケット>
・スタンディング(前売り)……9,000円(+1drink)

■オフィシャル先行予約(※先着制)
2026年3月24日(火)17:00〜4月5日(日)23:59
 >>e+(イープラス)
■SMASH friends会員優先予約
2026年3月27日(金)10:00〜3月30日(月)18:00
 >>SMASH friends

【東京公演】
<日時>

2026年6月17日(水)Spotify O-EAST
Open 18:00 / Start 19:00

<チケット>
・スタンディング(前売り)……9,000円(+1drink)

■オフィシャル先行予約(※先着制)
2026年3月24日(火)17:00〜4月5日(日)23:59
 >>e+(イープラス)
■SMASH friends会員優先予約
2026年3月27日(金)10:00〜3月30日(月)18:00
 >>SMASH friends

【大阪公演】
<日時>

2026年6月18日(木)Yogibo META VALLEY
Open 18:00 / Start 19:00

<チケット>
・スタンディング(前売り)……9,000円(+1drink)

■オフィシャル先行予約(※先着制)
2026年3月24日(火)17:00〜4月5日(日)23:59
 >>e+(イープラス)
■SMASH friends会員優先予約
2026年3月27日(金)10:00〜3月30日(月)18:00
 >>SMASH friends

<お問い合わせ>
公演HP https://smash-jpn.com/live/?id=4677