マテウス・アサトが語る、デビュー・アルバム『ASATO』のレコーディングで使用したストラトキャスターとフェンダーの魅力 マテウス・アサトが語る、デビュー・アルバム『ASATO』のレコーディングで使用したストラトキャスターとフェンダーの魅力

マテウス・アサトが語る、デビュー・アルバム『ASATO』のレコーディングで使用したストラトキャスターとフェンダーの魅力

SNSでの演奏動画で頭角を現わし、今や世界に名を轟かせているブラジル出身のギタリスト、マテウス・アサト。2026年2月27日(金)Fender Flagship Tokyoにて、1stアルバム『ASATO』のリリースを記念した公開イベント『Fender Flagship Tokyo Special Event with Mateus Asato』が開催された。バンドを率いたライブ・パフォーマンスはもちろん、使用ギターにまつわるトークもあり、会場は大きな盛り上がりを見せた。本イベントの終了後にマテウスへインタビューを実施。フェンダーの魅力についてたっぷりと語ってもらった。

取材・文=森部真衣 通訳=トミー・モリー

マテウス・アサトとAmerican Ultra Luxe Vintage Stratocaster

ミスもするけど、素晴らしいことも生まれる。
それがライブの人間らしい魅力だと思う。

本日のイベントはいかがでしたか?

本当にグレイトな気分だったよ。自分のプロジェクトとしてライブをやったのは2020年が最後だったから、今日はほぼ6年ぶりのパフォーマンスだったんだ。改めて、ライブで演奏することがどれだけ素晴らしいことかを思い出させてくれた。サウンドや全体のセッティングもすごく気に入ったよ。ライブでは即興で演奏することになるから、ミスもするけど、素晴らしいことも生まれる。それがライブの人間らしい魅力だと思う。そしてライブのあとには全部を振り返って、どこを改善するべきかを考える。僕はこのプロセスがすごく好きなんだ。

今日のパフォーマンスでは、あなたのためにカスタマイズされたという“American Ultra Luxe Vintage Stratocaster”を使用していましたが、カスタマイズ箇所を教えてください。

実はカスタマイズしているのはカラーだけで、それ以外は特に変えてないんだ。今後、少しだけ改造するかもしれないけどね。例えばリア・ピックアップをハムバッカーに交換しようかなと考えているけど、今は様子見してる。このギターは本当に気に入っていて、テレキャスターみたいなサウンドになるS-1スイッチがとにかくクールなんだ。

このギターを使用することになったきっかけは?

フェンダーから“ぜひ弾いてみてほしい”と連絡をもらったんだ。僕も新しいギターをプレイできるのはすごく嬉しいよ。新しいギターはいつだってクールだからね。

ピックアップにはPure Vintage ’61 Stratが搭載されていますよね。サウンドの印象を教えてください。

僕はフロント・ピックアップのサウンドがすごく好きなんだ。あまりハイゲインではないけど、あの太い音がフェイバリットなんだよね。でも、コードを弾く時はフロント+センター、もしくはセンター+リアのハーフ・トーンをよく使う。このギターはルックスもサウンドもかなりクラシックで、全体的にビンテージっぽい雰囲気があるよね。

American Ultra Luxeシリーズにはテーパード・ネック・ヒールが採用されていますが、ハイ・フレットの弾き心地はいかがでしょう?

とても弾きやすいよ。このギターは僕がこれまで使ってきたフェンダー・ギターの中でも一番弾き心地が快適で、本当にプレイしやすいんだ。

このギターの最も気に入っている点は?

やっぱり一番気に入ってるのは、ハイ・ポジションへのアクセスのしやすさだね。テーバード・ネック・ヒールを採用したストラトキャスターを使うのは、僕にとってこのギターが初めてなんだ。あとはネックのモダン“D”シェイプもすごく良いし、カラーも気に入っている。サウンドもかなりグッドだよ。そもそもストラトキャスターって変な音にするほうが難しいよね(笑)。

Fender / American Ultra Luxe Vintage Stratocaster
マテウス・アサト

フェンダーカスタムショップ製の緑のストラトキャスターは「The Breakup Song」のMVでも手にしていましたよね。『ASATO』のレコーティングでは、どの楽曲で使用しましたか?

このギターはレギュラー・チューニング用で、「Cryin’」、「The Breakup Song」、「Kyoto’s Jam」、あとは「too nerdy for pop, too pop for nerds」でも使用したね。それから「North」はダビングしていて、この曲で聴こえるエレキ・ギターの音は全部このストラトだよ。『ASATO』の楽曲はストラトキャスターよりもテレキャスターのサウンドのほうが多いんだけど、ストラトキャスターのサウンドが必要な時はこのギターを使っている。

American Ultra Luxe Vintage Stratocasterと、カスタムショップ製の緑のストラトキャスターの2本をペダルボードやアンプと組み合わせる時、ギターに応じてセッティングを変えているのでしょうか?

Luxeのほうが少しハイエンドが強くてトレブル寄りの音なんだ。だからトーン・ノブをちょっとだけ絞って、カスタムショップ製のストラトに近いサウンドになるようにしている。やっていることは本当に最小限の調整だけだね。それと、リア・ピックアップをセレクトしている時はいつもS-1スイッチをプッシュした状態にしているんだ。テレキャスターっぽいサウンドをキープしたいからね。

この2本は今後どのように使い分けていきますか?

演奏する楽曲次第だね。この2本の最も大きな違いは、コンパウンド・ラジアスとハイ・ポジションへのアクセスのしやすさなんだ。だから例えば、「too nerdy for pop, too pop for nerds」みたいに高い音を使う曲とか、シュレッドなフレーズをプレイする曲ではLuxeを使うと思う。逆にもっとクラシックなブルースっぽいサウンドの楽曲の時はカスタムショップ製のストラトを使うだろうね。

マテウス・アサト

「HENDRIX」のMVではリバース・ヘッドのストラトを抱えていましたが、レコーディングではどのギターを使用しましたか?

「HENDRIX」のレコーディングで使用したギターは、今日プレイしたカスタムショップ製のサンバーストのストラトキャスターだけだね。ギター・ソロもこれで弾いているよ。

あなたが使用しているストラトキャスターは、どれもビンテージなサウンドが魅力のモデルですよね。やはり、ジミ・ヘンドリックスを始めとした60年代のサウンドが好きなのでしょうか?

僕はとにかく温かみのあるファットなサウンドが好きなんだ。だからやっぱり60年代の音が一番しっくりくる気がする。でも実際のところ、“これがジミ・ヘンドリックスのサウンドだよね”とか、そういう風に考えたことはあまりなくてね。どちらかというと、自分が心地よく感じられるサウンドかどうかが大事なんだ。

サンバーストのストラトキャスターはホセフィーナ(カンポス)が作ってくれたピックアップが載っているから、僕は“ホセフィーナ・ギター”と呼んでいる。このギターにすっかり惚れ込んでしまって、今では僕の基準みたいな音になっているよ。だからどんなギターをプレイする時でも、できるだけあのサウンドに近付けようとしているところがあるんだ。

「HENDRIX」ではクリーン・トーンだけでなく、歪ませたサウンドも使われています。どんなサウンドを求めてサンバーストのストラトキャスターを選んだのですか?

そう言われてみると、「HENDRIX」は少しジミのサウンドと関連付けようとしたところがあるかな。この曲のソロを弾く時は、“できるだけジミがやりそうなプレイに近づけたい”と思ったんだ。もちろんジミみたいなサウンドにしようとしていたわけじゃなくて、この曲を彼に捧げたくてね。そうしたらこのギターが目に入って、“よし、このギターでソロをプレイしなきゃ!”と思ったんだ。

楽曲やフレーズによるとは思いますが、サンバーストのストラトキャスターでよく使うピックアップ・ポジションは?

これも楽曲によるね。でもソロを弾く時は、いつもフロント・ポジションを使用している。コードやクリーン・トーンの時はハーフ・トーンを使い分けているよ。

また、「HENDRIX」のMVではTone Masterのスタック・アンプがレイアウトされていました。実際にこのアンプを使用したことはありますか?

『ASATO』のレコーディングでは使っていないんだけど、YouTubeの僕の動画ではけっこう使っているよ。フェンダーはもうTone Masterを作っていないし、僕がアメリカで初めて買ったアンプだから、“スタジオに置いてただ眺めるだけでもいいから大切にしておきたい”という気持ちがあって、あまり使わないようにしているんだよね。

Tone Masterのすごくクールなところは、クリーン・トーンが本当にアメイジングなのに加えて、チャンネル2でグレイトなディストーションも作れるところなんだ。フェンダーにはもう一度あのアンプを作ってほしいものだよ。

Fender Custom Shop/ Stratocaster
マテウス・アサト

フェンダーのプレイヤーはフェンダーに戻っていくし、
ずっとプレイし続けるんだ。

初めてフェンダーのギターを手にした時は、いつ、どのモデルでしたか?

昔、僕が通っていた教会に90年代のフェンダーのストラトキャスターが置いてあって、それがすごくかっこよかったんだ。音楽教室でエレキ・ギターを習い始めた最初の年、そのギターで年末の発表会に出た。当時10歳だったよ。それがたぶん僕が初めてフェンダーをプレイした時だと思う。見た目はちょっとイングヴェイ・マルムスティーンのストラトキャスターみたいな、オフ・ホワイトというかクリームっぽい色だったよ。もちろんスキャロップド・ネックではなかったけどね(笑)。

その頃はまだ小さかったから、特別に何かがわかるってほどのことはなかったんだけど、とにかくあのシェイプに一目惚れしたのは覚えているよ。ストラトキャスターはアイコン的なシェイプだから、すごくクールに思えたんだ。でも、自分で初めて所有したフェンダーは、実はジャズマスターだったんだよね。

あなたがジャズマスターをプレイしていたとは興味深いですね!

実はそのジャズマスターは買ったわけじゃなくて、フェンダーUSAとのコネクションがあって手に入れたんだ。特別なモデルじゃなくて、量産ラインのギターだったんだけどね。ロサンゼルスに“CenterStaging”というリハーサル・スタジオがあって、その近くにはグレッチやフェンダーみたいなギター・ブランドのオフィスがたくさんあるんだ。2015年頃、トリー・ケリーとよくリハーサルをしていたんだけど、休憩のたびにフェンダーのオフィスに行っていて、そこでジャズマスターを手にした。“うわ、すごく良い音だ!”と思ったし、持ってみた感じも最高だったよ。それでフェンダーUSAとつながりのあるマイケル・シューズが“持って行きなよ”と、持ち帰らせてくれたんだ。すごくクールで、テレキャスターともストラトキャスターとも違う独特なサウンドだよ。

ストラトキャスターというと、多くの人はジミ・ヘンドリックスやスティーヴィー・レイ・ヴォーンをアイコンとして思い浮かべますが、ジャズマスターの場合あなたは誰を思い浮かべますか?

カート・コバーンだね。それと2016年頃のアメリカでは、誰もがジャズマスターを使っていた。僕はインディー・シーンにあまりいたわけではないけど、ジャズマスターは僕にとって“流行のインディー系っぽいギター”だったのを覚えているよ。

カート・コバーンは同じオフセットでシェイプは似ていますが、ジャガーを使っていましたね(笑)。

あぁ、ジャガーだったか。でも同じオフセット・ボディの兄弟だし、許してね(笑)。ジャズマスターで有名なギタリストっていうと誰だろう?

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズやソニック・ユースのサーストン・ムーアですね。

そうか。それでも僕はやっぱりカート・コバーンだと思っていたかな……ひょっとしたらジャズマスターに関しては、特に憧れの人が僕にはいないのかもしれないね(笑)。

現在所有しているギター以外に、最近気になっているフェンダー・ギターはありますか?

実はムスタングをもっとプレイしてみたいと思っているんだ。ムスタング・ベースは持っているんだけどね。僕は小さいボディのギターが好きなんだよ。今はちょっと“小さいボディ期”みたいな感じで、ブームがきているんだ。

Charさんの影響もあるのでしょうか?

オー、イェー! そうだね。彼の場合、どのギターをプレイしていてもかっこよく見えるから、ギターそのもののかっこよさの判断が難しいけど(笑)。彼がコンサートでペイズリーのムスタングを使っていたのを覚えている。“うわ、あのギターめちゃくちゃかっこいいな!”って思ったよ。

最後に、フェンダーの魅力を教えてください。

フェンダーの一番魅力的な部分は、ヘッドストックとその歴史的な意味だと思う。フェンダーのヘッドストックはどのモデルもとても美しいんだ。本当にクラシックだし、ギターの歴史の中で最もポピュラーなシェイプでもある。それが何よりも重要なところだよね。それに、フェンダーのギターはいつでもフェンダーらしい音がする。だから、フェンダーのプレイヤーはフェンダーに戻っていくし、ずっとプレイし続けるんだ。

『Fender Flagship Tokyo Special Event with Mateus Asato』で使用されたギター

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