ギルド・ギターズの誕生から現在までをふり返る短期連載『今ふり返る、ギルド・ギターズの正しい歴史』。第9回は、相次ぐブランド・オーナーの変更や生産拠点の移転が行なわれた1990〜2000年代がメイン。これを負の歴史ではなく、今日までギルドというブランドをつないでくれた、各時代のブランド再建への挑戦の物語として読んでほしい。
文=長谷鉄弘 デザイン=三本昌樹 Photo by Robert Knight Archive/Redferns/Getty Images
ラインナップの整理による生産の合理化
1989年にギルドのブランド・ホルダーとなったFAAS社(1993年に“U.S. Music Corporation”と改名)は、製品ラインナップを整理~統合することで経営の合理化を試みる。具体的には1980年代前半からモデル・バリエーションを増してきたソリッド・ボディ・エレクトリックのほとんどを廃止し、フラットトップ・アコースティックとアーチトップ・アコースティック/エレクトリックの生産に専念したのだ(※)。
フラットトップ・アコースティックは、1987年頃にジェアー・ハスキュー&ジョージ・グルーン(第8回を参照)により確立されたシリーズ構成を踏襲する。これは伝統的な“F”シェイプのうちボディ幅=16インチを“GF/Traditional”、17インチを“JF/Jumbo”とそれぞれカテゴライズし、ドレッドノート=“D”と12弦を加えた計4シリーズの中で、素材や装飾が異なるグレード(25、30、40など)を展開するものだ。
この新たなシリーズ構成のもと、フォーク・ミュージシャンに愛されたボディ幅=15インチ以下のフラットトップ(F-20やF-30)は姿を消してしまったが、一方では17インチ・スーパー・ジャンボの豪快なサウンドを従来のF-50(FAAS期のJF-55)より低価格で味わえるJF-30のようなヒット作も生まれている。
※:ハスキュー&グルーン期に開発された“Nightbird”シリーズや1983年頃に登場した“Pilot”ベース、18インチの超ショート・スケール・ネックに張られたシリコン弦とピエゾ・ピックアップの組み合わせからユニークなサウンドを生み出す“Ashbory”ベース(1986年頃~)は例外的に生産が続いた。
フェンダー(FMIC)傘下の約20年

1995年11月にはアメリカにおける楽器メーカーの巨人であるフェンダー・グループ(1985年以降の社名は“Fender Musical Instruments Corporation”/以下“FMIC”)がギルド・ブランドを獲得し、経営に乗り出した。
FMICギルドは当初こそFAAS期のラインナップを踏襲したが、1997年頃には“Starfire”ギター&ベースやS-100ソリッド・ボディなどをリイシューし、次第に往年の賑わいを取り戻していく。しばらくカタログから姿を消していた小型のフラットトップ・アコースティックも1996年頃の“A”シリーズを皮切りに再生産が始まり、1998年までにはF-30が復活。2003年頃には、17インチ・スーパー・ジャンボのフラッグシップが再びF-50/50Rと呼ばれるようになった(JF-30を始めとする一部のモデルは引き続き“JF”と呼ばれた)。
また創業以来“メイド・インUSA”を貫いてきたギルドが、時代の要請を受けて生産拠点を海外へ広げていくのもこの時期だ。1998年頃、FMICは1940年代の米オハイオ州に起源を持つピックアップ~エフェクター・メーカー、“ディアルモンド(DeArmond)”の名をギルドのセカンド・ブランドとして復活させ、アジア製(韓国“Cort”グループ傘下の工場が主力だったと言われる)エレクトリック・ギター&ベースの販売を始める。
21世紀に入るとFMICの経営改革は国内の生産拠点にも及び、遅くとも2001年末までには過去30年以上にわたりギルドを支えてきたウェスタリー工場がついに閉鎖されてしまう。以後、米国製ギルドの産地はフェンダーのカリフォルニア州コロナ工場(~2005年頃)→04年よりFMIC傘下となったタコマ・ブランドのワシントン州タコマ工場(~09年頃)→07年よりFMIC傘下となったオベーション・ブランドのコネチカット州ニュー・ハートフォード工場(~14年頃)へと短いスパンで移転をくり返すことになった。
このように、FMICギルドの功績としては1960~70年代の多彩なラインナップを復活させた点や、2005年にスタートした“GAD=Guild Acoustic Design”シリーズ・フラットトップ(おもに中国の工場が生産を担った)で低価格帯を補強した点、さらにはアーチトップ製作家として有名なボブ(ロバート)ベネデットやギブソンのモンタナ・カスタム・ショップを率いたレン・ファーガソンをアドバイザーに迎えて品質の向上を図った点などが挙げられる。ウェスタリー工場の閉鎖は古くからのファンに惜しまれたが、世紀を超えて老舗ブランドを維持する上では避けられない判断だったのかもしれない。
FMICはアーティスト・リレーション活動にも力を入れており、この時期のおもなギルド・プレイヤーとしてはS-100“Polara”を愛用するサウンドガーデンのキム・セイル、“Starfire IV”やM-75を弾いたジョン・メイヤーを挙げられるほか、カタログにはSC3“Paloma”(エレクトリック・ナイロン弦ギター)をプレイするスティングや“Crossroad”ダブル・ネックを持つスラッシュ(ex.ガンズ・アンド・ローゼズ)、F-30を抱えるタジ・マハールらも顔を出している。

FMICギルドは約20年にわたって続いたが、2015年、同社は米カリフォルニア州に拠点を置くコルドバ(Cordoba)ミュージック・グループ社へギルドの経営権を移譲した。続く最終回では今日(2026年夏)まで続くこのコルドバ期(2023年以降はヤマハ/コルドバ期)のギルドにスポットを当て、連載を締めくくることにしよう。
ギルド名盤を聴く、リアル・イベントが9月26日に開催!

ギタマガWEBの連載『今ふり返る、ギルド・ギターズの正しい歴史』のスピンオフ・イベント“Guild × ギター・マガジン「名盤を聴く、語る、奏でる」”が、2026年9月26日(土)に東京はYamaha Sound Crossing Shibuyaにて開催!
ギター・マガジン編集部がセレクトした、ギルドに関連するレコードを聴きながら、名手が愛したギルドの話や当時の時代背景などを語ります! ゲストはYouTuber/音楽評論家の“みの”と、ギタリストの関口シンゴ。イベント後半には関口によるギルド製ギターを使ったミニ・ライブも開催予定だ。
さらに9月2日から28日までの期間、Yamaha Sound Crossing Shibuyaでは最新ギルド・モデルが試奏できる展示コーナーが公開中。また期間限定でギルドの“Gシールド”ロゴをラテアートであしらったカフェラテが販売されている!
詳細はギルドの公式SNSアカウントをチェック!
- 日時:2026年9月26日(土)17:00〜19:00
- 場所:Yamaha Sound Crossing Shibuya
https://www.yamaha.com/ja/about/experience/yamaha-sound-crossing-shibuya/ - 入場料:無料
著者プロフィール
長谷鉄弘(ながや・てつひろ)◎1970年生まれ。『ギター・マガジン』、『ギター・グラフィック』(いずれも小社刊)などの編集部員を経て1996年に独立。現在はライターとして、『ギター・マガジン』や『アコースティック・ギター・マガジン』、『The Effector Book』(シンコーミュージック)などに寄稿。