Interview|安藤正容とT-SQUARE 最新作『FLY! FLY! FLY!』に至るまで。 Interview|安藤正容とT-SQUARE 最新作『FLY! FLY! FLY!』に至るまで。

Interview|安藤正容とT-SQUARE
最新作『FLY! FLY! FLY!』に至るまで。

ここからは『FLY! FLY! FLY!』について語ったインタビュー記事をお届けする。これにて特集は一旦終了。本記事を読みながら、安藤正容がこれから歩む新たなギタリスト人生を考えてみたい。

取材・文=近藤正義 写真=小原啓樹

坂東君はスクエアっぽさを踏まえながらも常に新しいモノを求めている。

河野さんが退団して正式メンバーが3人になったアルバムですが、サポート・メンバーも含めてのコンビネーションはいかがでしたか?

 ベースが田中晋吾君のほかにも22歳の若き俊英・森光奏太君、米国在住のTaiki Tsuyama(津山泰基)君が参加してくれて、とても新鮮でした。キーボードの白井アキト君にも凄い才能が感じられて、毎回ハッとさせられることがあります。もちろん、9曲中6曲を書いた坂東君もよく頑張りましたよね。アレンジや各楽器の音色や細かなフレーズも彼のアイディアを中心に練られているし、坂東君はスクエアっぽさを踏まえながらも常に新しいモノを求めているんです。本当に頼もしいですよ。

アルバム全体のサウンドはもちろん、特にギターが素晴らしいサウンドに録れていますね。

 ビートルズも使っていたフェアチャイルドのコンプレッサーが信濃町のソニーにあって、僕も昔よく使っていたんですが、今はそれがプラグインであるんですよ。コンプレッションをかけなくても、通しただけで音が太くなるんです。そういうプラグインを入れたりしましたね。

アンプが目の前で鳴っているような、すごく生々しいサウンドに感じました。

 ありがとうございます。でも、全部ケンパーですけどね。あとは、エンジニアとの関係が良かったことも理由の1つだと思います。2000年のアルバム『T-SQUARE』も一緒にやってくれたエンジニアで、今回もよく相談に乗ってもらいました。レコーディング現場で、僕が考えたことを彼にはうまく伝えることができたし、彼もそれにバッチリ対応してくれましたね。

具体的にはどのようなことを相談したのですか?

 僕は自宅で録音したデータを修正する時に音が変わらないように、ギターの音は卓を通さずに直接Pro Toolsに録音しているんです。でも卓を通すと音が太くなるんですよね。そこで相談して、コンソールのプラグインを教えてもらったりしました。

今はライブもレコーディングもケンパーなんですか?

 そうですね。でも、やっぱり実機のアンプも良いなと思いますよ。ゲーム『グランツーリスモ』の主題曲を録り直す時に、ユニバーサル・オーディオのOXを使って、フリードマンのBE-50でレコーディングをしたんです。それがすごく良かったんですよね。あの“真空管の粘る感じ”は、やっぱりケンパーでは出ない。でもライブでそのセットを使うには、エフェクターも別に用意しなくちゃいけないですし、音もパッと切り替えることができない。だから、ケンパーだとすごく楽なんですよ。

我ながらよく出来たアルバムだと思いますよ。
ぜひ、聴いて下さい。

今作は2曲が安藤さんによる作曲で、残る7曲はほかのメンバーが作った楽曲です。自作の曲を弾くのと、ほかの人が作った曲に挑戦するのでは、違った楽しさがありますか?

 そうですね。でも、メロディや指定された部分がギターらしくないフレーズだったりすると、苦労することもありますね。この点に関しては、サックスでも同じだと思いますけど。

坂東さんと河野さんはギター・パートに関して、どの程度指定されるんですか?

 ギター・ソロやその他の部分に関しても、坂東君はこだわる所はこだわりますが、“好きなようにやってもいいですよ”という自由な面もありますね。でも、河野君は細かいんですよ(笑)。“伴奏は自由にやって下さい”と言いながら、デモ音源にはギターがきっちり入っている。“じゃあこの通り弾かなきゃマズイだろうな”と思って、それを完コピしたりして……大変です(笑)。ちなみに、ギター・ソロを河野君に聴いてもらって“こういう感じでどう?”と尋ねたら、“もっとカッコいいソロを弾いて下さい”って一刀両断にされたこともあります(笑)。

(笑)。でも、逆にそう言える距離感というのもすごく良いですよね。ただ、T-SQUAREの曲はメロディや構成などにいろいろなパターンが多くて、覚えるのも大変そうです……。

 同じテーマ部分でも最初はユニゾンで次はハモリとか、レコーディング前に覚えなくてはいけないことがたくさんありますからね。しかも、それをライブ用に1人で弾ける形にまとめるのがまた大変で……。コンサート前は1人で弾くためにギター・パートを整理整頓したうえで、足下でエフェクターの音色を切り替えるタイミングを練習するのに時間を取られたりしてます。

そういった作業によって、ご自分の中から新しい要素が引き出されることもあるんじゃないですか?

 でもね、もうこの歳になって、そういうことはやめてくれと言いたいですよ(笑)。あんまり煽ったり虐めたりしないで下さい(笑)。まぁ冗談はさておき、ともかくニュー・アルバムは楽曲アレンジ、演奏、録音と3拍子揃っています。我ながらよく出来たアルバムだと思いますよ。ぜひ、聴いて下さい。

作品データ

『FLY! FLY! FLY!』 T-SQUARE

T-SQUARE Music Entertainment Inc./OLCH10022-23/2021年4月21日リリース

―Track List―

01.閃光
02.FLY! FLY! FLY!
03.Only One Earth
04.Quiet Blue
05.Brand new way
06.Growing Up!
07.The Hotrodder
08.回帰星-kaikiboshi-
09.Joy Blossoms

―Guitarist―

安藤正容