ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40(4/4) ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40(4/4)

ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40(4/4)

『ギタリストなら絶対に聴くべきスウィング・ジャズの名盤40』の最終回のテーマは「そのほかのスウィング・スタイルの名手たち」。色々な意味で“必聴盤”と言える作品をセレクトしています。

文・選盤=久保木 靖

ナット・キング・コール・トリオ
『The Best Of The Nat King Cole Trio』

●リリース:1998年(1943〜50年録音)
●ギタリスト:オスカー・ムーア、アーヴィング・アシュビー

歌伴の雛形、ここにあり!

初代ギタリストのムーアのプレイが歌伴の雛形となった。そういう意味でこの3枚組はラングやジャンゴ、クリスチャンらの作品と比肩するマスターピースである。繊細でムードあるコード・ワークやオブリガートにはうっとりすること必至。インスト「Body And Soul」ではギターが主役級だ。「Bop Kick」などでは2代目ギタリストのアシュビーが登場。

オスカー・ムーア・カルテット
『The Oscar Moore Quartet』

●リリース:1992年(1954年録音)
●ギタリスト:オスカー・ムーア

粋な洗練されたブルース感覚!

カルテットとクインテット(ボンゴ入り)の2つのセッションをコンパイル。ムーアはやはり「Moonlight In Vermont」などバラードで本領を発揮するタイプだが、アクセント的なスパニッシュ音階やケニー・バレルに受け継がれる洗練されたブルース感覚も特筆だ。頻出するトレモロ・グリスはアコギ時代にロング・トーンを表現する手法として取り入れた。

ナット・キング・コール&ヒズ・トリオ
『After Midnight』 

●リリース:1956年
●ギタリスト:ジョン・コリンズ

裏方に徹しつつも輝くプレイ

ボーカル名盤のこちらに参加しているのは、3代目ギタリストのコリンズ。彼は1940年代からレスター・ヤング(ts)やタッド・ダメロン(p, arr)らとの共演を通して、同時代の黒人ギタリストの中ではかなり先進的なプレイをしていた。独特のタイム感と正確なピッキングを武器に、本作では淡々としながらも歌心あふれるソロを披露している。

スリム&スラム
『The Groove Juice Special』 

●リリース:1996年(1938〜42年録音)
●ギタリスト:スリム・ゲイラード

広義ではスウィング・ジャズ!

スラム・スチュワート(b)とのジャイヴ・コンビ音源を収めたベスト盤。出世作「The Flat Foot Floogie」などではアコギをかき鳴らしているものの、後半の「Palm Springs Jump」あたりになるとC・クリスチャンばりのソロを炸裂させる。なお、本作には入っていないが、スリムはパーカー(as)やガレスピー(tp)との共演も。

ペギー・リー&デイヴ・バーバー
『Musical Marriage』 

●リリース:1999年(1946〜49年録音)
●ギタリスト:デイヴ・バーバー

ラブ&ハッピーなラインで絡む

バーバーはベニー・グッドマン(cl)楽団在籍中に同僚だったリー(vo)と結婚して独立。2人の共同制作を収めたのがこのコンピだ。バーバーのプレイは、コード・ワークを活かしたオスカー・ムーアなどとは対照的にシングル・ノートでのオブリガートやカウンター・ライン中心。レス・ポール&メリー・フォードを大いにインスパイアしたのでは!?

メアリー・オズボーン
『A Girl & Her Guitar』

●リリース:2015年(1945〜59年録音)
●ギタリスト:メアリー・オズボーン

豪快な弾きっぷりに仰け反り必至

1959年録音の1st(同名タイトル)と1940年代録音をコンパイルしたお徳盤。C・クリスチャン直系ながら、カラッとした音色の溌剌プレイが眩しい。偽悪者っぽいイントロで始まる「I Love Paris」や、これでもかとグルーヴする「How High〜」にはノックアウトされること必至。ジャケで手にする愛器はグレッチのホワイト・ファルコンだ。

ビル・ジェニングス
『The Complete Early Recordings 1951-1957』

●リリース:2013年(1951〜57年録音)
●ギタリスト:ビル・ジェニングス

B.B.キングも惚れ込んだサウスポー

ルイ・ジョーダン(as)のところでジャイヴ魂を刷り込まれたジェニングスの初期リーダー音源をコンパイルした2枚組。ダイナミックなグルーヴを伴った太い音色のソロはアーシーで、ブルース・ファンをもきっと虜にする。ムード音楽っぽいノリの曲もダサかっこ良くて◎(笑)。なお、ジェニングスは左利きだが、右利き用のギターをそのまま逆にして弾く。

マーティ・グロス
『Hooray For Bix!』

●リリース:1958年
●ギタリスト:マーティ・グロス

トラッド・スタイルの継承!

伝説的コルネット奏者ビックス・バイダーベックに捧げられた1st。エディ・コンドン(g)らのシカゴ・ジャズを愛するグロスは、4弦ギター(もしくはバンジョー)のようなサウンドでリズムを刻む。エディ・ラングの名演でも知られる「Clementine」や、ファッツ・ウォーラー(p, vo)にインスパイアされたボーカルを披露する「Changes」には思わずニヤリ。

バッキー・ピザレリ
『Playing Bix Beiderbecke / Bill Challis / Carl Kress / Dick McDonough』

●リリース:1974年
●ギタリスト:バッキー・ピザレリ、アレン・ハンロン etc

7弦ギターで古典をリスペクト

ジョージ・ヴァン・エプスから7弦ギターの魅力を受け継いだバッキーが、豪華ギター陣を従えてジャズ黎明期の偉人をリスペクト。娘マリーとのツイン・ギターによる後半の「Stage Fright」〜「Love Song」は、本企画の序盤で取り上げたクレス&マクドノウの楽曲だ。縦に揺れるリズムは、ベース音も刻んでいく7弦ギタリストのプレイ特有のもの。

ハーブ・エリス&フレディ・グリーン
『Rhythm Willie』

●リリース:1975年
●ギタリスト:ハーブ・エリス、フレディ・グリーン

グルーヴの鬼+リズム職人

ビッグバンドでひたすらコード刻みに専念したグリーン。『Mr. Rhythm』(1956年)という名のリーダー作でもソロは一切弾かなかった。ということで、エリスのリード・プレイも楽しめる本作をピックアップ。サクサクとしたグリーンの刻みは常に聴こえる。しかし、誰もソロを弾かない部分のある「Conversations」なんて、粋な計らいじゃないか!

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*本記事はギター・マガジン2021年8月号にも掲載しています。

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