トップ・ギタリストとして、コリングスから2本のシグネチャー・モデルをリリースしたジュリアン・レイジ。ビンテージのフェンダー・テレキャスターやナチョ・ギターズのTLタイプなどの印象も強い、彼の使用ギターの変遷について、ここでしっかりと振り返っておこう。
文=石沢功治 写真=Alysse Gafkjen
初期の相棒、リンダ・マンザー/ブルーノート
幼少の頃に両親からSTタイプを買ってもらったジュリアンだが、その後のエレクトリックに関しては大きく分けて2つの時期に分類される。
まずは12~13歳の頃にカナダの名ルシアー、リンダ・マンザーから購入して以来、長らくメインで使用していくことになるアーチトップのブルーノート・モデル(16インチ幅)で、ゲイリー・バートンの『Generations』(2003年録音)や自身のファースト作『Sounding Point』(2008年録音)のジャケットに写っている。
価格は約5千ドルだったそうで、そのあたりの経緯は後日掲載予定の、2005年の初来日時のインタビューで語られるが、少年だったジュリアンは支払いが大変だったそうだ(笑)。
ボディのトップとバックはメイプルとマホガニーが交互に5枚貼り合わされた合板で、サイドはソリッド・カーリー・メイプル、ネックはメイプルで、指板やテールピース、ブリッジはエボニー、ピックアップはカスタム・メイドのPAF(アジャスタブル・ポールピース付き)が搭載されている。
ちなみに、2009年にピアノのテイラー・アイグスティとのデュオで2度目に来日した際は、ギターからシールドが2本出ていて、1本はコンデンサー・マイクで生音を拾い、ラインとミックスさせて出していた。
ほかに、ブルーグラス系をプレイする際に重用しているのがマーティンD-18 GEで、『Sounding Point』で聴かれるアコギもこれ。アンプはフェンダー系が多く、ファースト作ではツイン・リバーブを使用していた。
また、サドウスキーのセミ・ホロウ・モデル、ジャンゴ・ラインハルト系のセルマー・タイプなど、2009年に来日した時は9本ほど所有していると語っていた。マンザーのアーチトップは、続く2011年のセカンド作『Gladwell』でもジャケットに写っているギブソンの32年製L-5とともに使われ、2011年と2013年に2つのアルバムを残したゲイリー・バートン・ニュー・カルテットなど、2010年代半ばまで愛用。
ソリッド・ギターへの転換がターニング・ポイントに
そのジュリアンが2010年代後半になると、マンザーのアーチトップからフェンダーなどのソリッド・ギターに大転換が図られ、以降、それらが主軸になる。一説では、2013~14年頃に左手が局所性ジストニアという神経症状に見舞われたことが、ソリッドへ転換した理由の1つとされている。
それはともかく、メインであるフェンダーの54年製ブラックガード・テレキャスターのほか、ざっとアルバムごとに列挙すると、2016年の『Arclight』では、ナッシュヴィルのダン・ストレインが製作したレプリカのドナキャスター(ロン・エリス製ピックアップ搭載)などを、10インチのスピーカー2発入りの1953年製フェンダー・ツイード・スーパーで鳴らしている。
続く2018年の『Modern Lore』ではスペインのナチョ・バニョス(Nacho Baños)が製作したナチョキャスターなどを、フェンダーの1960年製ツイード・チャンプで録音し、そのあとミキシング時にフェンダーの1964年製プリンストンでリアンプを行なっている。
2019年の『Love Hurts』では50年代製グレッチ・デュオジェットなどで、アンプはギブソンの50年代製チューブ・アンプBR-6であった。ちなみに、今年リリースされた最新作『Squint』に関しては、先日掲載したインタビューで本人が語っているので、そちらを参照していただきたい。
また、アコースティックは前記したマーティンD-18 GEのほかに、39年製マーチン000-18なども所有しているが、近年は自身のシグネイチャーのコリングス製OM-1JLをプレイする機会が多いようだ。
作品データ
『Squint』
ジュリアン・レイジ
ユニバーサル/RCCQ-1142/2021年6月11日リリース
―Track List―
01. Etude
02. Boo’s Blues
03. Squint
04. Saint Rose
05. Emily
06. Familiar Flower
07. Day & Age
08. Quiet Like A Fuse
09. Short Form
10. Twilight Surfer
11. Call Of The Canyon
12. Granada(日本盤ボーナス・トラック)
―Guitarists―
Julian Lage