ギタリストなら絶対に聴くべき南米スラッシュ・メタルの名盤40(4/4) ギタリストなら絶対に聴くべき南米スラッシュ・メタルの名盤40(4/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき南米スラッシュ・メタルの名盤40(4/4)

南米スラッシュ・メタルの名盤を10枚ずつ紹介する連載の最終回。今回はブラジル以外の南米の国々と、南米ではないですがメキシコとコスタリカのバンドも紹介します。

文・選盤=川嶋未来

Farscape
『Killers on the Loose』

●リリース:2006年
●ギタリスト:Poisonhell、Witchcaptor

文脈不明のNWOBHM感がカッコいい!

98年から活動するリオデジャネイロのバンドによる2nd。演奏力も高く、手数の多いリフも見事に弾きこなすスタイルだが、面白いのは、スラッシュ以外に明らかにNWOBHMからの影響も感じさせるところ。激速スラッシュ・チューンとNWOBHM的スピード・メタル・ナンバーが交互に出てくるのはある意味わけわからないのだが、問答無用にカッコいいからまあいいか。

Transmetal
『Muerto en la Cruz』

●リリース:1988年
●ギタリスト:Juan Partida Bravo、Alberto Pimentel

メキシコのベテラン・スラッシャー1st作

80年代中盤から活動を続けるメキシコのベテラン・スラッシュ・バンドのデビュー作。妙にディストリビューションが良く、80年代当時から日本の輸入レコード店でもその作品をしばしば見かけたため、名前だけは知っているファンも少なくないはず。とにかくファストでラフ。スペイン語のボーカルが、荒々しさ、疾走感を煽る!

Toxodeth
『Mysteries about Life and Death』

●リリース:1990年
●ギタリスト:Raul Guzman

メキシコ産スラッシャーの怪盤

こちらも80年代中盤から活動するメキシコのベテラン。スラッシュというよりデス・メタルと言うべきかもしれないが、このデビュー作はまさにカルトの名がふさわしい怪盤。全体的にヘロヘロの演奏なのに、(無理して)速弾きしまくるミスマッチが堪らない。プリミティブ・テクニカル・メタルとでも言うべき謎さ加減。リリースもワイルド・ラグズからというカルトぶり。

Parabellum
『Sacrilegio』

●リリース:1987年
●ギタリスト:Jhon、Carlos

コロンビア初のエクストリーム・メタル

83年から88年にかけて活動していたコロンビア初のエクストリーム・メタル・バンド。音質、楽曲、チューニング、とにかくすべてがメチャクチャ。A面は8分もの間、ノイズの塊とブレイクがひたすらくり返され、一体どういう思考回路で作られたのか見当もつかない。もしかしたら即興なのか?これがきちんと作曲されたというなら、完全なる狂気だ。

Blasfemia
『Guerra Total』 

●リリース:2011年
●ギタリスト:Jhon Jairo Martínez

多少マトモになった気もするが……。

上述Parabellumの解散後、残ったメンバーが結成。88年のEPやデモなどの編集盤。多少マトモになっている気もするが、あくまでParabellumと比べての話。ベースはエフェクターの電池が切れかかっているのではないだろうか。ライブ・テイクではチューニングも合っておらず、演奏もバラバラ。これに比べたら初期ソドムですらテクニカル・デス・メタル。

Reencarnación
『Reencarnacion』

●リリース:1988年
●ギタリスト:Piolín

コロンビアの極悪バンド

こちらもコロンビアの極悪バンド。ギターのリフ(?)とは無関係に弾きまくるベースがわけわからなさすぎるが、上記2バンドに比べれば、一応楽曲が認識できるだけ遥かにマシ。このバンド、00年以降アヴァンギャルドな方面に進んでおり、こちらも大概な内容だ。ここに挙げたコロンビアの3組は、90年代以降のブラック・メタルに多大な影響を与えた。

Hermética
『Hermetica』 

●リリース:1989年
●ギタリスト:Antonio Romano

アルゼンチンで人気を誇る

87年から94年の間に活動していたアルゼンチン のバンド。この間に3枚のスタジオ・アルバムを残している。本作はデビュー作。スペイン語で歌い上げるダミ声のハイトーン・ボーカルが非常に個性的。曲展開も練られており、演奏もタイト。母国アルゼンチンでは大きな人気を誇っていたようだ。MalónとAlmafuerteという2つのバンドに分裂する形で解散。

Sepulcro
『1988-1990』

●リリース:2014年
●ギタリスト:Miguel Hernández、Miguel Huamán、Manuel Rodríguez

ちょっと珍しいペルーのスラッシュ・バンド

デスやブラックというと多くの名前が挙がるペルーだが、スラッシュとなるとなかなかパッとは思いつかない。ということで、80年代後半から活動を続けるSepulcroを。タイトル通り、過去のデモやリハを集めたもの。初期は普通のメタル+スペイン語でガナる歌という不思議なスタイルだったが、徐々にスラッシュ化。当時のブラジルやコロンビア勢に比べるとマトモな内容。

Pentagram
『Pentagram』

●リリース:2000年
●ギタリスト:Anton Reisenegger、Juan Pablo Uribe

チリと言えばこれ! イーヴル感満点の極上スラッシュ

チリと言えばPentagram。現在BrujeriaやLock Upで活躍するAnton Reiseneggerが85年に結成したバンドだ。80年代にデモがアンダーグラウンドで大きな話題となったが、残念ながら当時はアルバムをリリースすることがなかったため、こちらのデモ・コンピ盤を。Possessedあたりに影響を受けたスピード一辺倒ではないイーヴルな雰囲気満載の極上スラッシュだ。

Chemicide
『Inequality』

●リリース:2019年
●ギタリスト:Sebastian、Frankie

コスタリカ産のスラッシュ・メタル

08年から活動を続けるコスタリカのスラッシュ。3枚のアルバムを出しており、こちらは最新作。バンド名からしてベイエリア系の香りがプンプンするが、高めのダミ声ボーカル+タイトでファストな演奏と、中身も完全にソッチ系。知らなければUS西海岸のバンドだと思うことだろう。ネットによって情報格差が縮まった結果だろうが、少々寂しい気がしないでもない。

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*本記事はギター・マガジン2021年9月号にも掲載しています。

『ギター・マガジン2021年9月号』

【特集】追悼 寺内タケシ
エレキの神様よ、永遠なれ。

■”エレキの神様”の名言の数々
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■コラム:寺内タケシと『歌のないエレキ歌謡曲』
■インタビュー:水谷公生が語る寺内タケシ
■寺内タケシが愛したギターたち
■連載コラム「寺内タケシのテケテケとーく」名作選
■「だから私はギターを弾く」2003年6月号より
■寺内タケシ奏法分析
■GM SELECTION(※電子版には収録されておりません)
・「津軽じょんがら節」寺内タケシとブルージーンズ
・「夕日に赤い帆」寺内タケシとバニーズ
・「レッツ・ゴー運命」寺内タケシとバニーズ