自分に失望したくないし、
嘘をつきたくないんですよね。
今作はどういった機材で音作りをしていったのでしょうか?
メイン・ギターは以前取材していただいた時(本誌2020年3月号)と同じ、フェンダーカスタムショップのジャズマスター・ジャーニーマン・レリックですね。ただ、高音域が出過ぎないようにボリューム・ポッドをフルレンジではないものに変更しました。「ツモリツモルラバー」ではギブソンのSGも使いましたね。あとはRittenhouse GuitarsのTLタイプも使ったかな。
「noise」ではアコギも登場しますが、これは?
64年製のエピフォン、FT-45を使いました。20歳の時に買って、ずっと使い続けているものなんですが、これをマイクで直録りしましたね。あとは「utage」では借り物のクラシック・ギターも使いました。
アンプは何を使ったんですか?
最近ライブでも使い始めたんですけど、初年度にあたる93年製フェンダーのバイブロキングですね。知り合いにオススメのアンプを聞いたら、これを教えてくれて。試奏してそのまま購入しました。本当に音がデカくて、ロック・アンプという感じの音が良いんですよね。
ペダルはどういったものを?
「utage」という曲もそうなんですけど、俺はけっこうファズを使うんですよ。で、ファズはSpaceman EffectのGemini IVを使っているんですが、これがなかなか凄くて。シリコンとゲルマニウムのトランジスタが回路に組み込まれていて、それを真ん中のツマミでシームレスにブレンドできるんですよ。基本的にはファズ・フェイス系の音なんですけど、とても使いやすいので、ついつい踏んでしまうペダルですね。
ついつい踏んでしまうファズって良いですね。
あとは今作で欠かせないのはZ.VEX EFFECTSのLo-Fi Junky Clear。名前の通り、真ん中のツマミをあげるとレコードのようにローファイな音になるんですね。で、これを0にするとパッキパキの過剰なコンプになるんです。俺はこの音が凄く好きで、「色眼鏡」や「赤裸々」で使いましたね。「赤裸々」ではバイブロキングでクリーンを作って、Lo-Fi Junky Clearでバカコンプをかけて、さらにXoticのXW-1というワウを半分踏んだ状態で弾いているんですよ。
バカコンプ(笑)。それは想像がつきませんでした。
あと「色眼鏡」ではZ.VEX EFFECTSのFuzz Factory 7 Russianも使いましたね。
この曲は発振音が入っていますが、これはFuzz Factory 7 Russianですか?
いや、それもLo-Fi Junky Clearで。さっき言ったローファイ・モードにするとコーラスがかけられるようになるので、そのかかり方やスピードをマックスにすると“プルプルプル”という発振音が出るんですよね。それをソロの最後で使っています。
先ほど“自分のユーモアで創作をしていきたい”と言っていましたが、機材のチョイスにも独自の遊び心を感じます。色々と話を聞いていく中で、 サトウさんにとって“創作におけるユーモア”というのは“遊び心と真面目さ”のことなのかなと思いました。
真面目かどうかと問われたら、圧倒的に不真面目だと思いますね(笑)。でも、自分に失望したくないし、嘘をつきたくないんです。俺はそれを大事にしていて。ほかの部分が終わってる人間なんで、そこだけはせめて(笑)。
(笑)。でも、そういったサトウさんの人間性が誰もやったことのないようなプレイに挑戦するギタリスト像につながってくるような気がします。
そうかもしれないですね。そういうものって、今日まで培っていたものから取り出されてくると思うんですよ。ハードディスクみたいなものから出てくるというか。
無意識に貯蔵されている何かが出てくる。
そうですね。そういったものを貯めていきたいし、どんどん向き合っていきたいと思います。
なるほど。最後にギタリストとしての展望を教えて下さい。
前作『TITY』をリリースした時は人生を必死に生きていたというか、日々戦っていたんですよね。で、最近はコロナ禍を経て自分と向き合う時間ができて、ネクスト・ステージに行った感覚があって。今、思うのは“いかに自分が自分のギターにワクワクできるか、ワクワクし続けられるか”ということなんですよ。なので、展望としてはそれを更新し続けていくことですね。
ちなみに以前、取材した際に展望を教えてもらった時は“「あいつのギター、最高だったね」ってお客さんに言われるようなギタリストになりたい”と言っていました。
もちろんそう思ってもらいたいし、最高な気持ちにさせないとダメなんですけどね。でも、まずは自分が最高だと思えるギターを弾き続けたいです。そうすれば、お客さんにもそう言ってもらえると思うので。なので、自分が納得できるプレイをお客さんに届けたいです。
SATOH’S GEAR
FENDER CUSTOM SHOP
JAZZMASTER JOURNEYMAN RELIC
& FENDER VIBRO-KING
アルバム&ライブで活躍するサトウのメイン器&アンプ
サトウのメイン器は63年〜64年製をベースにしたフェンダーカスタムショップ製ジャズマスター。2018年に開催された“FENDER CUSTOM SHOP EXHIBITION ”用に制作された1本だ。改造箇所は弦落ち対策のためにマスタリー・ブリッジをマウントしたほか、コンデンサー、ボリューム・ポッド、ハンダなど内部パーツを交換。また、ライブ時の激しいパフォーマンスによってヘッドが割れたそう。メイン・アンプは初年度にあたる93年製フェンダー・バイブロキングを使用。知り合いに薦められたのち、試奏して即購入したそうだ。“とにかく音がデカく、ロック・アンプな音がする”点がお気に入りとのこと。
PEDALBOARD
PEDAL LIST
①CASTLEDINE ELECTRONICS/”Olympic” HOOCHIE’S FUZZ(ファズ)
②Shin’s Music/Baby Perfect Volume Standard(ボリューム・ペダル)
③Z.VEX EFFECTS/Lo-Fi Junky Clear(フラッター、ビブラート)
④XOTIC/XW-1(ワウ)
⑤J. Rockett Audio Designs/The Jeff Archer(オーバードライブ)
⑥FREE THE TONE/FIRE MIST FM-1V(オーバードライブ)
⑦Crews Maniac Sound/G.O.D Genius Over Drive(オーバードライブ)
⑧Spaceman Effect/Gemini IV(ファズ)
⑨XOTIC/RC BOOSTER(ブースター)
⑩Line 6/HX Effects UG088(マルチ・エフェクター)
⑪VITAL AUDIO/POWER CARRIER VA-08 MKII(パワー・サプライ)
歪みペダルがひしめくライブ用ボード
ここではサトウのボードを解説していこう。まず接続順は、①〜⑩まで番号どおり直列でつながれている。次に特筆すべきペダルの使用方法を説明していこう。①はファズ・ペダルだが、サトウはダーティなクランチを作るために使用している。③は今作で欠かせないペダルとして挙げてくれたフラッター&ビブラート・ペダルで、過剰なコンプとして起用。⑤はローゲインで設定し、踏みっぱなしにしているそう。⑧はライブ時、ゲルマニウムのコンデンサを選択して使用するほか、①のファズと組み合わせて“ファズの2乗”にすることもあると語ってくれた。本作では空間系はミックスの際にプラグインを用いたそうだが、ライブ時は⑩のマルチでまかなっている。ちなみにボードには組み込まれていないが、アルバム制作時にMXRのベース用エンベロープ・フィルター、M-82 BASS ENVELOPE FILTERも使用したことを付記しておこう。
作品データ
『Play time isn’t over』
BREIMEN
スペースシャワー/PECF-3257/2021年5月12日リリース
―Track List―
01.aaA
02.utage
03.ナイトクルージング
04.赤裸々
05.Play time isn’t over
06.色眼鏡
07.ツモリツモルラバー
08.noise
09.Zzz
―Guitarist―
サトウカツシロ