2011年3月11日14時46分に発生した東日本大震災。これを受け、被災地復興の足がかりとなる“人と人とのつながり”の場として、宮古COUNTER ACTION、大船渡FREAKS、石巻BLUE RESISTANCEという3つのライブハウスがオープンした。この試みが“東北ライブハウス大作戦”である。そして2020年現在、コロナ禍によりライブハウスは窮地に立たされている。人々に元気を与えるために発足したこのプロジェクトも、例外ではない。心が締め付けられるこの状況に、少しでも力になれればと、2018年にギター・マガジン本誌に掲載した短期集中連載『東北ライブハウス大作戦-Fromギタマガ情報局-』を再度お届けしたい。
文:山村孝雄(LIVE HOUSE BLUE RESISTANCE)
大量の木札に込められた音楽ファンの切なる願い
東北ライブハウス大作戦――BRAHMANやMONOEYES、locofrankなどの音響を担当するライブPAチーム“SPC peak performance”が、東日本大震災で被災した沿岸部にライブハウスという形で、“人と街と世代を橋渡しできる場所”を作ろうと立ち上がったプロジェクトです。
その石巻支部として、多くの方々のご支援とご協力により2012年10月30日にオープンしたのが、我々石巻BLUE RESISTANCE。キャパシティは250名。
そして、壁や天井にぎっしりと貼られた木札が、BLUE RESISTANCEを含む東北ライブハウス大作戦店舗の最大の特徴です。設立当初は建築費用として、現在は運営費用として活用されるひと口5,000円の木札作戦に賛同してくれた全国のアーティスト、音楽ファンの名前が筆で書かれた木札は石巻だけで2800枚を超えました(2018年1月現在)。
“もう貼るところがないのでは?”と最近よく心配されますが、すべて漏れずに貼らせていただいており、これからも貼り続けていきます。
さて、世間の注目を集めたBLUE RESISTANCEのライブのひとつとして、2015年11月28日のX JAPAN石巻公演があります。
2013年9月にYOSHIKIさんが石巻を表敬訪問された時、BLUE RESISTANCEにもお立ち寄りになり、木札作戦にご協力していただきました。その帰り際に“ここからワールド・ツアーを始められたらいいね”とおっしゃってくださり、それが実現したのがこの公演でした。
ツイン・ドラムを乗せるためにステージを1間(約1.8M)張り出したため、150人限定のチャリティー・ライブとなり、75人を石巻市、東松島市、牡鹿群女川町の在住者を対象とした無料招待で、残る75人の枠は“ヤフオク!”内のチャリティー・オークションで出品されました。
オークションでの総落札額2828万9358円は、中央共同募金会を通じて東北被災地支援のために全額寄付されました。また、ニコニコ生放送での生配信と石巻市総合体育館での入場無料のパブリック・ビューイングも行ない、同規模のライブハウスでは24年ぶりとなるX JAPAN石巻公演は、確実にBLUE RESISTANCE史上に残るライブとなりました。
震災当初から災害ボランティアで石巻に入られていたSUGIZOさんは、このライブ後“また石巻に帰ってきます”とお話され、2016年、2017年と2年連続でソロライブを開催していただいております(注:本記事掲載後の2018年にもソロライブを開催)。
ギタリストにおすすめの石巻グルメは要チェック!
2018年1月現在、BLUE RESISTANCEに一番出演しているツアー・バンドは東京スカパラダイスオーケストラです。
初めてライブをしていただいた2014年は、ホール・ツアーの空き日程で急遽お願いしたため、機材車はなんと11tトラック。メンバー9人全員と機材がステージに乗るかすら心配されましたが、そこは百戦錬磨のチーム・スカパラ。コンパクトかつ最大限にセットをまとめて、熱いライブをくり広げてくれました。
その後、2daysの通常のライブから始まり、アコースティックセットやトークライブ、DJライブなどさまざまな形で何度も石巻に帰ってきてくれています。スカパラのギタリスト加藤隆志さんに石巻の魅力を聞いてみたところ、“石巻には「はまぐり堂※1」という素敵なカフェや、東京でもなかなか食べられない料理を出してくれる「四季彩食いまむら※2」というおすすめしたいお店があります。が、なによりライブハウスBLUE RESISTANCEがつないでくれた石巻の仲間とその温かさがなによりの魅力です!”といううれしいコメントをいただきました。
※1 宮城県石巻市桃浦蛤浜18
※2 宮城県石巻市中央2丁目7-2
石巻のおすすめの店とメニューについてはバンドやソロで何度も出演いただいているストレイテナーのホリエアツシさんにもうかがいました。“「注受」の野菜と豚肉がたっぷり入った甘めの餡が細麺と絶妙に絡み合う五目ラーメン(写真①)。「もりや」とろみのある和風出汁のカレースープにさっくりカツがのったカツカレーそば(写真②)。このふたつを食べに石巻に帰ってきたくなる”、と2016年に石巻で開催されたReborn-Art Festival × ap bank fes 2016のMCでも言われていしました。
もちろん有名なバンドだけでなく石巻地元のバンドや唄い手の企画も開催しています。ただ、高校生は卒業すると仙台や東京に出てしまったり、20〜30代も環境が変わると活動を休止したりと、地元出演者は増えては減ってのくり返し、というのが石巻の現状です。
地方都市に起こる空洞化が震災により顕著になったと言われますが、これを肌身に感じます。
東日本大震災から6年(2018年時点)が経ちましたがまだ石巻の街は復興の最中。応急仮設住宅から復興公営住宅への移転、高台および堤防の造成は進んだものの未だに不安定な人々の生活。
私たちスタッフは石巻に住む音楽が好きな老若男女がライブハウスに集えるよう、またBLUE RESISTANCEを通じて石巻を好きになってくれた人々がまた石巻に帰ってきてくれるよう、BLUE RESISTANCEが石巻にあり続けるために、今までつながった方々に支えられながら、さらにつながりを広げながら日々精進して参ります。
ぜひ、ライブを観に、ライブを開催しに、石巻BLUE RESISTANCEへお越し下さい! お待ちしております。
ギタリストよ、東北へ行こう!
2011年3月11日に起こった東日本大震災から約7年、完全なる復興への道のりはまだまだ遠い。じゃあ具体的に何をすればいいのか? 我々ギタリストができることとして本誌がオススメしたいのが、この“東北ライブハウス大作戦”への参加である。人が行けば地元が潤い、音楽を通じて仲間が増える――音楽好きとしてこのような場があることはうれしいことではないだろうか。前出の“木札作戦”への参加もよし、ライブを観に行くもよし、自分でイベントやライブを企画するもよし。さまざまな形の復興への協力が、音楽を通じてできるはずだ。“東北ライブハウス大作戦“および各拠点の公式HPをチェックして、ぜひ実際に足を運んでみてほしい。
ライブハウス石巻BLUE RESISTANCE
〒986-0824 宮城県石巻市立町1-2-17 ☎0225-98-5876
アクセス:JR仙台線石巻駅から徒歩約10分
HP:http://blueresistance.com
*本記事はギター・マガジン2018年3月号にも掲載されています。
本号の特集は「埋もれた名盤を掘り起こせ!!!
ROCK DIGGERS 1968-1972」。ロック最強時代の12作品に絞り、1枚1枚を“見る・読む・聴く・弾く”の全方位から徹底的に深堀りしました。