2020年12月19日、20日にさいたまスーパーアリーナで行なわれたGLAYのライブ=GLAY DEMOCRACY 25TH “HOTEL GLAY GRAND FINALE” in SAITAMA SUPER ARENAの模様をレポート! 当日のセットリストを再現したApple Musicのプレイリストとともに、熱狂のライブを追体験してほしい。
文=舟見佳子
2019年にデビュー25周年を迎え、“GLAY DEMOCRACY”というテーマのもと、作品の発表やツアー決行など7つの公約を発表したGLAY。
7つ目の公約は「25周年を総括する海外ロングツアー&ドームツアー開催」というもので、本来ならば2020年5月にナゴヤドームと東京ドーム、そして12月に札幌ドームという全国ドームツアーが開催される予定だったが、折からのコロナ禍の影響で5月の東京、名古屋公演は中止。12月の札幌公演は、来場者やスタッフの健康と安全を考慮し、さいたまスーパーアリーナに会場が変更された。
2019年5月からスタートしたアリーナツアー“HOTEL GLAY”のファイナルであり、25周年アニバーサリーのグランドフィナーレ公演でもある「GLAY DEMOCRACY 25TH “HOTEL GLAY GRAND FINALE” in SAITAMA SUPER ARENA」、約11ヵ月ぶりの有観客ライブとなる本公演は、政府や自治体のガイドラインに則りマスクの着用が義務づけられ、声援や歓声・歌唱も禁止。12月19・20日の両日ともに観客動員数も1万人に制限されたが、来場できなかったファンのためにGLAY初となる有観客ライブのオンライン配信も実施された。
以下、曲ごとにレポートをしていこう。
「ROCK ACADEMIA」
客電が落ちるとスクリーンに「HOTEL GLAY 殺人事件」の文字とともにマシンガンで撃たれたメンバーがソファに倒れこむ映像が映し出され、その映像がまんま実体化したかの如くソファに眠る4人がステージに出現。HISASHI以外の3人が次々と生き返って楽器を手にすると、演奏がスタートした。会場が手拍子で盛り上がっても、死んだふりを続けていたHISASHIが最後のサビ部分でやっと生き返ったと思ったら、マイクを手にTERUとのツイン・ボーカルを披露。ふたりのデュエットというレアな場面に会場は大盛り上がり。
「ALL STANDARD IS YOU」
「MIRROR」
1曲目が終わると、今度はスクリーンにスペース・オペラ映画のオープニングを思わせる映像と音楽が流れた。現状を「コロナ軍との戦い」と表現して、コロナ禍におけるメンバーの活動を英文と日本語字幕でユーモアを交えつつ伝え、「GLAYと共にあらんことを」とファンへのメッセージを贈った。TAKUROによるアコギのリフが印象的な「ALL STANDARD IS YOU」では大空の映像が映し出される中、ファイアボールも次々と上がり、久しぶりに大型ライブの華やかさを実感。ダイナミックに広がりを見せるサビ部分ではHISASHIのタルボがアクセントを加える。また、TAKUROが弾くクリーン・トーンに導かれて始まった「MIRROR」でも、HISASHIのちょっと軋むような歪みサウンドは独特な存在感を放っている。
「HIGHCOMMUNICATIONS」
「天使のわけまえ」
この曲でもタルボのカリカリでケミカルな音は大活躍。メインのリフだけではなく、ギター・ソロでのトリッキーなプレイが近未来っぽさを増幅している。ギター・ソロ後半はストラトからレス・ポールに持ち替えたTAKUROが引き継いだが、HISASHIのキッチュな音とTAKUROの王道感あふれるサウンドとの対比がGLAYらしくておもしろい。「天使のわけまえ」は歌謡曲のようなウェットさをもった楽曲で、歌の合間に入るツイン・ギターのメロなどもまさに泣きのフレーズだったりするのだが、HISASHIのセンスがこの曲を一味非凡なものにしているように思う。
「流星のHowl」
スペイシーなシンセとエレピから始まったこの曲では、TERUがヤイリのエンジェル・シリーズを手にエネルギッシュなボーカルを披露。TAKUROはギブソンの赤いセミアコ、HISASHIはメタルトップのゼマイティスに持ち替え、タイプの違う3本のギターによる変化に富んだアンサンブルを聴かせた。
「May Fair」
「春を愛する人」
「カーテンコール」
GLAYの魅力のひとつである優しくメロディアスなミドルを3曲続けて。TAKUROはギブソンES-335に持ち替え、温かみのあるサウンドを聴かせる。「春を愛する人」ではHISASHIがいわゆる付点8分ディレイのリリカルなリフでサビを支える。透明感のある繊細な音が実に心地よい。「カーテンコール」の冒頭ではTAKUROのアコギとエレピがTERUの歌を支える。そこへHISASHIのゼマイティス、ベース、ドラム、TAKUROのストラトが重なり、曲の世界観を広げていく。
「Into the Wild」
「月に祈る」
雰囲気が一変したのが「Into the Wild」。黙々と刻むベースに、HISASHIが奏でるスタインバーガーの鳥笛のような音が響き渡る。TAKUROの弾くテレキャスも、ところどころ指弾きを取り入れるなど生々しいテクスチャーが印象的だ。また、「月に祈る」もTAKUROがレス・ポール・カスタムを指弾きするフレーズからスタート。HISASHIと向かい合って演奏されたソロは圧巻のツイン・リードであった。
「SHINING MAN」(新曲)
「everKrack」
「VIVA VIVA VIVA」
TERUのリードで会場が手拍子で包まれた「SHINING MAN」は、初めて聴いた人でも思わず体が動いてしまうようなノリの良いナンバー。TAKUROはボルサリーノをかぶって黒いレス・ポールを下げ、ロックスターのオーラをまき散らす。続く「everKrack」では、TAKUROはゴールドのレス・ポールに持ち替え、2mほどの高さの台上から観客にアピール。そして、メンバー4人に模した巨大バルーンが登場した「VIVA VIVA VIVA」では、間奏部分でメンバー紹介も。TAKUROはブルージィなロックを体現するソロをくり広げ、逆にHISASHIはサウンドも音階も良い意味でロック・ギターらしからぬソロをぶっ込んでくる。ふたりのコントラストといい役割分担といい、安定のキャラ立ちである。
「Friend of mine」
「lifetime」
跳ね系ビートのミディアム「Friend of mine」ではTAKUROはストラトで、歌に絡んでいくような裏メロを聴かせる。途中ボトルネックも使用するなどエモーショナルなアプローチが印象的。「lifetime」ではゴールドのレス・ポールに持ち替え、歯切れの良いカッティングを。一方、HISASHIは単音のメロディをおもに弾いているのだが、クリーンなのに粘っこい音が個性的。本当に彼のゼマイティスはサステインがきれいに伸びるなと感心する。
「SOUL LOVE」
「ピーク果てしなく ソウル限りなく」
「DOPE」
「XYZ」
ラストはアップテンポ系の人気曲を4曲続けて。TAKUROはサンバーストのレス・ポール、HISASHIはゼマイティスという態勢。「SOUL LOVE」では過去のライブ映像を流し、これまでのGLAYとGLAYERとの絆を再確認。「ピーク果てしなく ソウル限りなく」の間奏ではTAKUROとHISASHIがセンターステージの最前に立ち、向かい合ってのツイン・リードをきれいにキメる。いつものライブでは間奏後に観客が合唱するパートがあるが、その部分では過去ライブからの映像とファンの歌声をフィーチャーし、観客の心の声を重ね合わせた。「DOPE」ではさらにスピード感がアップ。「Friend of mine」では比較的控えめに使われていたボトルネック奏法も、この曲のソロでは激しくかき鳴らす場面で煽るようなフレーズがくり出される。本編ラスト「XYZ」では、TAKUROはストラトにチェンジ。この曲ではモニターに映し出された会場の客席を飛行機や図形が飛び回るというGLAY初のAR(拡張現実)演出も取り入れた。この曲のもつドライブ感とスケール感を視覚化するような斬新な演出に、オンライン配信を視聴していたファンも大いに驚いたのではないだろうか。
「彼女の“Modern・・・”」
「Bible」
「HEROES」
アンコールでTAKUROは黒レス・ポール、HISASHIは相棒ゼマイティスを手に登場。いつもは観客が激しくジャンプする「彼女の“Modern・・・”」だが、この日はルールを遵守してちょっと控えめな感じ。「Bible」もパンキッシュな縦ノリ曲でメンバーもとても楽しそう。オーラス「HEROES」ではTAKUROが再びサンバーストのレス・ポールを手に、メンバー全員で明るく力強いロックを奏でた。
最後のMCでTERUは「まだまだ大変な時期は続くと思いますが、こうして音楽があって、僕らがいる。皆のそばには僕らがずっとついてます」とメッセージを届けてくれた。GLAYのライブを再び楽しめる日が一日も早く来るように、明日からまた頑張ろうとファンの誰もが気持ちを新たにしたことだろう。音楽の役割というのはまさにこういうことなのかもしれないなと感じたライブだった。