ウェス・モンゴメリーが1965年に敢行したヨーロッパ・ツアーの全貌 ウェス・モンゴメリーが1965年に敢行したヨーロッパ・ツアーの全貌

ウェス・モンゴメリーが1965年に敢行した
ヨーロッパ・ツアーの全貌

ウェス・モンゴメリーが1965年にたった一度だけ行なったヨーロッパ・ツアー。大の飛行機嫌いで海を渡るのを避け続けた彼が渡欧するということで、貴重な機会を逃すまいと各国からオファーの声がかかる。その結果、3月にツアーをスタートさせたウェスは5月までヨーロッパに在留することとなった。各国での演奏を観る前に、このツアーの概要をおさらいしておこう。

文=久保木靖 Photos by NDR Hamburg

大の飛行機嫌いがついにヨーロッパの地を踏んだ

2021年3月、ウェス・モンゴメリーの『The NDR Hamburg Studio Recordings』(CD+Blu-ray)がリリースされた。これはウェスが1965年に行なったヨーロッパ・ツアー終盤にドイツ(当時の西ドイツ)のNDRスタジオで収録されたもの。これまでも一部音源・映像は出回っていたものの、当日のウェス参加曲がまとまった形で、かつオフィシャル盤としてリリースされるのはこれが初! 同ツアーからの新たな名盤の誕生を祝して、ウェスのヨーロッパ・ツアーをほかの代表作とともに振り返ってみたい。

『The NDR Hamburg Studio Recordings』

キングレコード/KKJ-1049(CD+Blu-ray)、D-78078(LP+Blu-ray)/2021年3月20日リリース

1965年3月、大の飛行機嫌いで知られたウェスのヨーロッパ・ツアーが始まった。ヨーロッパ内での移動に際しては“決して飛行機を使わず、列車とすること”が事前に確約されていたというが、ドーバー海峡トンネル開通前だったこともあり、結局は一部に飛行機を使ったのかどうか……。ともかく、ウェスはイタリア、スイス、スペイン、イギリス、フランス、オランダ、ベルギー、西ドイツと8ヵ国を周り、各国のジャズ・クラブやテレビ/ラジオ番組に引っ張りだことなった。

以下に、現在、視聴可能な代表的な公演を記す。ヨーロッパ・ツアーに関しては公式盤/非公式盤が乱れてリリースされているが、ここに紹介する6枚をそろえれば、重複なしで、その全貌をあらかたとらえることが可能だ。本特集はこれらをベースに進めていく。さぁ、ウェスとともにヨーロッパ各国を巡ってみよう!

3月25日[イギリス]

『Jazz 625』(DVD)

ロンドンにて、BBCのテレビ番組『Jazz 625』の収録。アメリカから帯同してきたハロルド・メイバーン(p)、アーサー・ハーパー(b)、ジミー・ラヴレイス(d)というレギュラー・メンバーがバックを務めた。

3月27日[フランス]

『In Paris : The Definitive ORTF Recording』(CD)

パリにあるシャンゼリゼ劇場でのコンサート。前記同様のレギュラー・メンバーに加えて、ジョニー・グリフィン(ts)がゲスト参加している。

4月2日[オランダ]

『Live In ’65』(DVD/※)

ヒルフェルスムにて、テレビ番組の収録。地元のピム・ヤコブス(p)のトリオがバックを務めた。

4月2日(上記と同日)[オランダ]

『Straight, No Chaser』(CD)

ヒルフェルスムにて、ラジオ番組の収録。クラーク・テリー(tp)と双頭ユニットで、バックは上記同様にピム・ヤコブス(p)のトリオが務めた。

4月4日[ベルギー]

『Live In ’65』(DVD/※)

ブリュッセルにて、テレビ番組『Jazz Prisma』の収録。バックはハロルド・メイバーンらレギュラー・メンバーが務めた。

4月5日〜24日、5月1日〜7日[イギリス]

『Body And Soul』(CD)

ロンドンのジャズ・クラブ、ロニー・スコットに出演。地元のスタン・トレイシー(p)のトリオがバックを務めた。

4月30日[ドイツ(西ドイツ)]

『The NDR Hamburg Studio Recordings』(CD+Blu-ray)

ハンブルクのNDRスタジオで行なわれたワーク・ショップに参加。マーシャル・ソラール(p)やハンス・コラー(ts)といったヨーロッパを代表する気鋭のミュージシャンとの共演は、ウェスにとってこのツアーの集大成に。

5月7日(昼)[イギリス]

『Live In ’65』(DVD/※)

ロンドンにて、ABCのテレビ番組『Tempo』の収録。スタン・トレイシー(p)のトリオがバックを務めた。

※DVD『Live In ’65』には、4月2日(オランダ)、4月4日(ベルギー)、5月7日(イギリス)の3セッションが収録されている。