イカサマイマサ『電撃デケデケ』 イカサマイマサ『電撃デケデケ』

イカサマイマサ
『電撃デケデケ』

“本物のチューブ・アンプのフィールを再現!”といった紹介のされ方をする、歪ませペダルやアンプ・シミュレーターがたくさんリリースされている。自分もそんな煽りを読むたび試奏に出向いたり、実際に購入したりをくり返している。

レコーディング以外ではトランジスタ・アンプをわりと多用してきたので、最初からリッチなトーンが得られるチューブ・アンプより、澄んだ音をペダルで汚していく(自分の弾きやすいフィールに持っていく)過程そのものが好きになってしまったらしい、みちくさ&寄り道好きないまみちです。

エレキ・ギターはギター・アンプに挿して鳴らすのが大前提だとローティーンの頃から信じていたけれど、中学生で初めてエレクトリック・ギター(Grecoのストラト・タイプ入門機)を手に入れた時、ギター・アンプは買えなかった。いつも脳内で“ギャリンギャ~ン”とか“キュイーン”とかトーンを想像再生しながら、ペナペナとナマ音でピッキングしていた。

ある時、ギターに直接挿して音を出すヘッドホン型のアンプを年長の友人に譲ってもらった。“これでエレキの音が出せる!”と勇んでつないでみると、“鳴った!”。けど、それまで脳内妄想していたトーンとは似ても似つかぬ“割れた”耳障りな音。曇りガラスを爪で引っ掻いたみたいな気持ち悪さ。

“ぎゃっ、鼓膜が痛い!”。慌ててヘッドホンをはずしてぶん投げた。はずみでケーブルが触れた弦の音が、床に転がったヘッドホンからまだ聴こえている。

「あれ! 気持ちいい?」

ヘッドホンについているボリュームつまみを最大にして、ジャラ~ン。もちろんまだ“割れた音”ではあるんだけれど、床の上の小さなヘッドホン・スピーカーから聴こえるソレは割れ方がきめ細かく、ガラスの破片ぽいカリ~ンよりジョワ~ンという石鹸の泡に近い。しかも、やかましくない音量なのにうるさい音がしてる!  “割れた音”から“歪んだ音”に、少年いまみちが目覚めた瞬間。

なんかこの時の体験が、自分のトーン作りの基礎になっている気がする。自分が弾きやすければ、自分に聴こえれば、“それでいい”という一見ワガママで自分勝手な考えかもだけど、アンサンブルの中でのバランスにさえ気をつければ、ちょいと変な音でも、アンプと耳(マイク)との距離の調整次第では、意外にイケたりしてしまうかもよ、という話。

▲画像は、“令和の”ワイアレス・ヘッドホン・アンプ、WAZA-AIR。進化してるなぁ、なんとジャイロ機能付き!  床に投げ出さなくても気持ち良いトーンで鳴ってくれるので、深夜の自室で愛用中。

ではまた!

いまみちともたか

Profile

いまみちともたか

いまみちともたか◎1959年生まれ。BARBEE BOYSのギタリストとして1984年にデビュー後、佐野元春や井上陽水のレコーディングに参加するなど、多方面で活躍。ほかにも、椎名純平らとのヒトサライ、自身がホストとなってゲストを迎えるスタジオ・ライブ・シリーズ=“カメを止めるな”を主催するなど、精力的に活動中。

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