Introduction|T-SQUAREと安藤正容。日本の音楽シーンへ与えた影響 Introduction|T-SQUAREと安藤正容。日本の音楽シーンへ与えた影響

Introduction|T-SQUAREと安藤正容。
日本の音楽シーンへ与えた影響

まず特集の冒頭は、安藤正容の簡単なバイオグラフィをお届けする。ギタリストとしてのキャリアを俯瞰しつつ、彼が日本の音楽シーンへ与えた影響について考察していこう。

文=近藤正義

1954年9月16日生まれ。愛知県出身。日本が世界に誇るポップ・インストゥルメンタル・バンド、T-SQUAREのギタリストでありコンポーザーである。

大学在学時に THE SQUARE(現 T-SQUARE)を結成し、1978年にプロ・デビュー。以来、リーダーとして現在までバンドを牽引してきた。安藤の魅力は卓越したメロディー・センスとギター・テクニックにあり、その作品はロック・スピリット溢れるナンバーから美しいバラードまで実に多彩である。

1987年には彼の作曲による「TRUTH」がフジテレビ系『F-1グランプリ』中継のテーマ曲として起用され、大ヒットを記録。また、プロデューサーとしてゲーム音楽のジャンルでもメガ・ヒットを飛ばしている。

バンド以外の活動にはソロ・アルバムはもちろん、是方博邦、野呂一生と3ギター編成にリズム・セクションを加えた “OTTOTTRIO” や、みくりや裕二とのアコースティック・ギター・デュオ “あんみつ” などがある。

日本のギター・シーンにおける“安藤正容”とは?

それでは、安藤正容とはいかなるギタリストなのか? アマチュア時代のバックボーンやプロになってからのプレイの傾向などを通して考察してみよう。そうすることによって、T-SQUAREを退団してからの今後の彼が目指す方向を推測できるかもしれない。

安藤正容はビートルズから音楽に興味を持ち始めて、次なる興味の対象はディープ・パープルやグランド・ファンク・レイルロードなどのハード・ロックに移行する。しかし周りにボーカルをできる人材がいない。そんな時に高校1年で聴いたのがマイルス・デイヴィスの『ジャック・ジョンソン』。このアルバムで、自分はこういった8ビートや16ビートでアドリブを弾くインストゥルメンタル音楽をやりたいんだということに気づく。

大学ではジャズ研に入り、当時のクロスオーバーと呼ばれた音楽を片っ端からコピーしていく。一番影響を受けたのはリー・リトナーやジョージ・ベンソンによるクロスオーバー・スタイルのアルバムだった。もちろん、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、ギターならケニー・バレル、ジョー・パス、ウェス・モンゴメリーなどもひととおり聴いていた。中でも一番好きなのはジム・ホール。これは後年の彼の端正な演奏を暗示しているようで興味深いエピソードである。

時代に合わせたアプローチの変化

THE SQUAREというバンドの音楽がサックス入りのインストゥルメンタルであることも関係し、デビューから3枚のアルバムにはリー・リトナー&ジェントル・ソウツからの影響が強く感じられた。もちろん安藤のギター・プレイにもジャズ的なテイストがかなり織り込まれていた。特にデビューした頃は後年より自由に弾いていたという印象が強い。使用ギターがギブソンES-335だったことにも、サウンドの方向性が表われていた。

ところが、80年代に入ると次第にキッチリしたアレンジを施すようになり、ギターも決められたスペース内で弾くようになっていく。これは和泉宏隆(k)、田中豊雪(b)、長谷部徹(d)という固定したメンバーに落ち着き、バンドの方向性が定まってきたからである。

ギター・プレイで安藤が影響を受けていたのは、当時の洋楽で一世を風靡したジェイ・グレイドンとデヴィッド・フォスターによるユニット、エアプレイ。ジェイ・グレイドンとスティーヴ・ルカサーのギター・プレイはもちろん、デヴィッド・フォスターがアレンジを担当したアーティストの曲を好んで聴いていた。その影響で8ビートが主体となり、ボーカル曲にもチャレンジした。

このような紆余曲折を経て、メロディアスなインストゥルメンタルという方向性が生まれたのだ。そういったサウンド・プロダクションの中で、念入りに構築されたかのごとき流れるような起承転結を持った鉄壁のソロと的確なバッキングのアレンジという、彼らしいプレイ・スタイルが完成している。この時代の使用ギターが大まかに分けて80年代がムーンのストラト・タイプ、90年代がエアクラフトというのも、音色やフレージングからくる必然性と考えられる。

1980年代のライブ写真。手にしているのはムーンのSTタイプ。うしろにはジャクソンのランディ・ローズ・モデルが!?

そして21世紀に入り、また少しずつ彼の演奏スタイルは変化し始める。緊張感あふれるプレイの中にもゆとりができて、きっちりと弾く中にも自分らしさが表現できるようになった。これは2006年にリリースされたマイケル・ランドゥの『LIVE』(MICHAEL LANDAU GROUP)を聴いたことが引き金となったのかもしれない。ランドゥからは、同じエフェクターやアンプをそろえるほど影響を受け、ランドゥ自身の音楽的ルーツであるブルースを基調に自由奔放に弾きまくる凄まじいプレイに手応えを感じたそうだ。そして、安藤自身も海外でのレコーディングをとおして、欧米の音楽シーンでギター・ソロに求められるモノが違うことに気がつく。きれいに弾くことよりも歌心を持つことのほうが大事なのである。同様にラリー・カールトンもブルースに回帰していく、そんな時期でもあった。

そういった影響を反映してのことなのか、使用ギターはギブソンES-335、レスポール・モデル、フェンダー・ストラトキャスターなど、ビンテージ・ギターやリイシュー・モデルが主流となる。今後、T-SQUAREを退団してからの彼は、もっとラフでワイルドなギター・プレイを聴かせてくれるかもしれない。

長い活動期間の中でこのように変化していったスクエアのサウンドと安藤のギター・プレイであるが、変わらない点もある。それは、ほかのフュージョン・バンドに比べるとテンション感の少ないわかりやすいハーモニーを使っていたこと。これがフュージョンという枠を飛び出したスクエアならではの特徴と強みだ。インストでありながら歌モノ的な感覚を持っていたということである。これによって日本におけるインストゥルメンタル・ミュージックの可能性を広げた功績は大きい。

作品データ

『FLY! FLY! FLY!』 T-SQUARE

T-SQUARE Music Entertainment Inc./OLCH10022-23/2021年4月21日リリース

―Track List―

01.閃光
02.FLY! FLY! FLY!
03.Only One Earth
04.Quiet Blue
05.Brand new way
06.Growing Up!
07.The Hotrodder
08.回帰星-kaikiboshi-
09.Joy Blossoms

―Guitarists―

安藤正容